最新ハイレゾ音源からアナログディスクまでを聴き比べ
フィリップスのセミオープン型ヘッドホン“Fidelio”「L2」を中林直樹がレビュー
■ドリーミーなサウンドをきめ細かく自然な音場で描き出す
では、まずハイレゾから。96kHz/24ビットのFLACをHD TRACKSで購入した。頻繁に再生するのは3曲目の「Heart Is A Drum」。BECKのボーカルとアコースティック楽器で織り上げられたこのアルバムを象徴するかのような音づくりである。落ち着きを醸し出した、いわば大人のBECK。
冒頭、まずアコースティックギターが鳴り、その周囲を漂うようにSEが配置されているのがわかる。ギターの低域の深み、中高域の輪郭の明瞭さなどが伝わってくる。SEはギターにまとわりつかず、そのおかげで見晴らしが良くなっている。ここだけでもセミオープン型のアドバンテージをひしひしと感じた。浮遊感たっぷりのサウンドだが、音場が拡散しすぎたり、曖昧になったりすることもなかった。
BECKの歌声は爽やかで、きめも細かい。かつてのような弾けたボーカルワークやサウンドはここにはない。しかし、音楽を丁寧に紡ぎ出すという点においては不変だ。それどころか、その丁寧さはますます進化している。それが浮き彫りになってくるのである。L2は、長年のファンにもそんなことを気づかせてくれるヘッドホンだ。そのドリーミーなサウンドと、きめ細かく自然な音場で描くヘッドホンの相性は良い。
曲の中盤ではドラムスが登場。スネアドラムは淀むことなく、機敏に鳴っているのがわかる。耳の奥にすっと入ってくるようなイメージだ。これはドライバーにアングルが付けられていることに起因しているのだろう。テンポよく、そして心地よく鼓膜を揺さぶるかのようだ。後半ではボーカル、ギター、リズムセクション、SEにピアノがフィーチャーされ、大きなうねりを作り出す。以前のBECKであれば、大胆な仕掛けを施してエンディングに向かったかも知れない。しかし、曲はふわりと立ちこめた煙が消えるように、あっけなく終了してしまう。だが、そこには楽曲が残した薫りがある。そんな音楽の世界にゆったりと浸れるのだ。
■アナログディスクは解像感や分解能では語れない音楽性を発揮する
さて、入手したばかりのアナログ盤も聴いてみよう。針を降ろすと聴こえてきたのは、極めてマイルドな世界だ。音と音が離れすぎることなく、かといって密着することなく、連なっている。ハイレゾ版ではボーカルや楽器単体にややもすると耳が傾いてしまったが、アナログ盤では、全体でひとつの音楽だという想いを強くした。解像度や分解能だけでは語れない領域だ。左右のドライバーから、角の取れた音が広がり、頭の中をしっとりと満たしてゆく。この音楽が持つ明暗を、コントラストを付けるのではなく、いわば、なだらかに表現する。そんな雰囲気はめったに味わえるものではない。
L2の長所は、まだある。それは軽量であることだ。また、イヤーパッドに低反発クッションを用い、それをベロアで包むことによって耳あたりは抜群。さらに側圧も程よいから長時間のリスニングにも最適だ。
さて、今日も予約しておいたアナログ盤が届くはずだ。バネッサ・パラディや北欧のアーティストの作品が3枚ほど。もちろん新譜新品である。回転するブラックディスクを眺めながら、アーティストが奏でる音楽とじっくり向き合う。L2でそんな気の置けない時間を過ごしてみたいと思った。
では、まずハイレゾから。96kHz/24ビットのFLACをHD TRACKSで購入した。頻繁に再生するのは3曲目の「Heart Is A Drum」。BECKのボーカルとアコースティック楽器で織り上げられたこのアルバムを象徴するかのような音づくりである。落ち着きを醸し出した、いわば大人のBECK。
冒頭、まずアコースティックギターが鳴り、その周囲を漂うようにSEが配置されているのがわかる。ギターの低域の深み、中高域の輪郭の明瞭さなどが伝わってくる。SEはギターにまとわりつかず、そのおかげで見晴らしが良くなっている。ここだけでもセミオープン型のアドバンテージをひしひしと感じた。浮遊感たっぷりのサウンドだが、音場が拡散しすぎたり、曖昧になったりすることもなかった。
BECKの歌声は爽やかで、きめも細かい。かつてのような弾けたボーカルワークやサウンドはここにはない。しかし、音楽を丁寧に紡ぎ出すという点においては不変だ。それどころか、その丁寧さはますます進化している。それが浮き彫りになってくるのである。L2は、長年のファンにもそんなことを気づかせてくれるヘッドホンだ。そのドリーミーなサウンドと、きめ細かく自然な音場で描くヘッドホンの相性は良い。
曲の中盤ではドラムスが登場。スネアドラムは淀むことなく、機敏に鳴っているのがわかる。耳の奥にすっと入ってくるようなイメージだ。これはドライバーにアングルが付けられていることに起因しているのだろう。テンポよく、そして心地よく鼓膜を揺さぶるかのようだ。後半ではボーカル、ギター、リズムセクション、SEにピアノがフィーチャーされ、大きなうねりを作り出す。以前のBECKであれば、大胆な仕掛けを施してエンディングに向かったかも知れない。しかし、曲はふわりと立ちこめた煙が消えるように、あっけなく終了してしまう。だが、そこには楽曲が残した薫りがある。そんな音楽の世界にゆったりと浸れるのだ。
■アナログディスクは解像感や分解能では語れない音楽性を発揮する
さて、入手したばかりのアナログ盤も聴いてみよう。針を降ろすと聴こえてきたのは、極めてマイルドな世界だ。音と音が離れすぎることなく、かといって密着することなく、連なっている。ハイレゾ版ではボーカルや楽器単体にややもすると耳が傾いてしまったが、アナログ盤では、全体でひとつの音楽だという想いを強くした。解像度や分解能だけでは語れない領域だ。左右のドライバーから、角の取れた音が広がり、頭の中をしっとりと満たしてゆく。この音楽が持つ明暗を、コントラストを付けるのではなく、いわば、なだらかに表現する。そんな雰囲気はめったに味わえるものではない。
L2の長所は、まだある。それは軽量であることだ。また、イヤーパッドに低反発クッションを用い、それをベロアで包むことによって耳あたりは抜群。さらに側圧も程よいから長時間のリスニングにも最適だ。
さて、今日も予約しておいたアナログ盤が届くはずだ。バネッサ・パラディや北欧のアーティストの作品が3枚ほど。もちろん新譜新品である。回転するブラックディスクを眺めながら、アーティストが奏でる音楽とじっくり向き合う。L2でそんな気の置けない時間を過ごしてみたいと思った。