【特別企画】連続レビュー第1弾
ソニーの万能コンポ「MAP-S1」レビュー(前編)ハイレゾウォークマン買ったら次はコレ!
■ハイレゾの長所を引き出すMAP-S1の描写力
Daft Punk「Get Lucky」は88.2kHz/24bit音源。薄刃に描き出される高音と適切に制御された低音、それらによって際立つ空間の余白と広がりが印象的だ。
薄刃の高音というのは特にシンバルに顕著。リズムを刻むその切り口がシュパッと鋭く、細かなグルーヴが立っている。またギターのカッティングも、パキッと適度に硬質で艶やかな音色でこれまたリズムが立っていて、実に気持ちよいグルーヴ感だ。
低音では特にベースの制動の確かさが光る。この曲は多弦ベースで演奏されており、一般的なベースよりもより低い音域が多用されている。そのため低音が出ないシステムだと重量感を再現できず、低音が出過ぎるシステムだとベースが暴れて邪魔になるしグルーブも崩れる。だが、MAP-S1とSS-HW1の組み合わせは、低音を出しつつもしっかり制御できている。それによってグルーヴがしっかり再現できているのだ。
その鋭さや制動の良さによってさらに際立つのが、ハイレゾの特長でもある空間性だ。音像がビシッとしていることで、それらの空間への配置も明確さを増す。また余計な膨らみがないことで余白が確保され、空間の見通しもよい。そしてその余白に、まさにハイレゾでこそ生きる、音の響きの細かな成分が広がる。その響きの良さと、これもハイレゾの特長である音の立体感が合わさることで、各楽器は奥行き方向にも深みを持って配置される。これぞ「ハイレゾのスピーカー再生」ならではの表現力だ。
宇多田ヒカル「First Love」は先日配信開始されて話題になった96kHz/24bit音源。これを聴いて確認、納得したのは、彼女の声がまとう切なさというかささめき、その再現性だ。主には息づかいのシャープな成分の描き出し方がそういった印象を生み出している。高域の再現性の向上というハイレゾの強み、それを引き出してくれるMAP-S1+SS-HW1のクオリティをストレートに感じられた。
■ワイヤレス再生もハイレゾ的に楽しめるDSEE HX
さて、非ハイレゾ音源を再生してDSEE HXのオンオフを切り替え、その効果の確認も行ってみた。これはなかなかの威力だ。個々の音にせよ全体の空間性にせよ、DSEE HXをオンにするとその響きがパッと開かれる印象。何というか、狭い空間(非ハイレゾのフォーマット)に押し込められていた感じが薄れて、より開放的な響きになる。
BluetoothやAirPlay、CD再生などのそもそもハイレゾを扱えないソースにも、それぞれに気軽さや便利さがある。それをハイレゾ的な感触で楽しめるDSEE HXは、MAP-S1の大きな強みのひとつと言えるだろう。
なお試聴の際にはスマートフォンアプリ「SongPal」も活躍してくれた。様々なソニー製品と連携するこのアプリは、もちろんMAP-S1との組み合わせでも活躍する。ハイレゾウォークマンもスマートフォンではないけれどAndroidだからSongPalを使えるよ!
「SongPal」では、再生の基本操作はもちろん、DSEE HXを含めて音質調整機能の設定、あとUSBメモリー再生やネットワーク再生の選曲操作では特に活躍してくれる。これは使わない理由がない。
というわけでMAP-S1は、ハイレゾのスピーカー再生を満喫するには実に適当、しかも非ハイレゾ音源もDSEE HXでまた新鮮に楽しめるという、いろんな意味でオールインワン盛りだくさんなアイテムだ。「とりあえずこれ買っとけ!」という安直な台詞が本気で通用してしまう、ハイレゾ時代の超万能機。ハイレゾウォークマンの次に注目すべきはコレだ!
(高橋敦)