Thunderbolt対応のオーディオインターフェース
ZOOM「TAC-2」に秘められたオーディオ的可能性を探る<仕様編>
音楽のメインソースがデータへと急速に移行した昨今。再生機器もUSB-DACや双方向の信号伝送を行なうオーディオインターフェースまでユーザーの選択肢はこれまでからは考えられないほど広がっている。ズームのオーディオインターフェースTAC‐2は、そんな多岐にわたるネットオーディオ機器のなかでも特に注目したいモデルだ。注目はなんといっても、高速インターフェース規格Thunderboltの採用。日本ブランドとしては初となるThunderbolt伝送対応インターフェースTAC-2はオーディオ的にみてどのようなポテンシャルを秘めているのだろうか。本記事では、藤本健氏がTAC-2の仕様面を分析していく。
■国内ブランド初となるThunderbolt伝送採用機
ハンディレコーダーやギター用のエフェクトなどで定評ある、国産メーカーのズーム。そのズームからThunderbolt対応のオーディオインターフェース「TAC-2」が発売された。ズームはこれまでもハンディレコーダーやエフェクトの1機能として、パソコンと接続した際にオーディオインターフェースとして動作する機能を持たせていたが、単体のオーディオインターフェースとしては、同社として初となる製品。ミュージシャン向けに数多くの製品を出してきたメーカーだけに、DTMユーザーを大きなターゲットとした製品ではあるが、ハイレゾを楽しみたいオーディオファンにも向けた高音質追及製品となっているのもユニークなところだ。
でも、Thunderbolt対応オーディオインターフェースとは、まだ馴染みのない人も少なくないだろう。実際、海外メーカーを含めて製品化しているのは数社で、国産メーカーとしては現時点でズームのみ。そもそもThunderboltとは何なのだろうか?
これはインテルとアップルが2011年に共同で規格化したインターフェースの仕様で、ある意味USB3・0の対抗馬的なもの。現在のMac製品には全てThunderbolt端子が搭載されているほか、最近ではWindows PCでもThunderbot端子を装備したものが増えてきている。USBと比較しても小さな端子だが、接続はFireWireなどと同様デイジーチェーンで数珠つなぎしていく形となっている。その後、2013年にThunderbolt2と改訂したのが、現在の最新の仕様。速度的には20Gbpsで双方向の通信ができるという超高速な伝送システムとなっているのだ。現在のオーディオ機器で一般的なUSB2・0が480Mbpsなので、単純計算で40倍以上の速度ということになる。ちなみに、USB3.0は5Gbpsなので、それすら上回るものとなっているのだ。
■Thunderboltだからこそ可能となった充実の内部構造
ThunderboltとUSBの違いは、単にスピードだけに留まらない。パソコンと通信する規格がPCI Express 2.0に準拠したものとなっているので、パソコンの内部バスに接続するのと事実上同義となっているのだ。そのため、パソコンからは外部の周辺機器として見えるのではなく、内蔵のデバイスとして認識されて見えるので、システム上はパソコンの中枢部に装着されたオーディオインターフェースとして機能するのが大きな違いとなっている。
また、もうひとつ大きな違いとして挙げられるのがバス電源供給能力だ。一般的に使われているUSB2.0の場合、2.5Wの電源供給が最大とされているのに対し、Thunderboltでは10Wの電力を供給できるので、オーディオデバイスを駆動するという面では大きな意味を持つのだ。実際、TAC-2においても10Wだからこそ駆動できるチップを搭載したことで、他製品と音質面における差別化を図っている。ちなみに、USB3.0もUSB2.0と比較すると電源供給能力が向上しているが、それでも4.5WとThunderboltと比較すると見劣りするものとなっている。
さて、TAC-2はThunderbolt接続で2入力/2出力という仕様。スペック的には192k㎐/24bitまで扱うことができ、Macのみの対応。現時点においてWindowsはサポートしていない。DTM的に見ると、リヴァーブなどのエフェクトが搭載されていたり、ループバック機能が用意されているなど、なかなか便利であるほか、レイテンシーを極めて小さくできるのも、Thunderboltならではのポイント。内蔵デバイスと同等に扱えるからこそ、バッファサイズを縮めることができるのだ。では、オーディオ機器として見たときは、どんなメリットがあるのだろうか?
USB-DACの場合、パソコンからのクロックで動作しているが、パソコンのクロックを利用すると、どうしてもジッターが発生しやすく、結果として音質の劣化にもつながる。これを解決するためにアシンクロナス伝送を採用したりするわけだが、そもそもThunderboltはそんなことしなくても直接CPUにアクセスすることができる。TAC-2の場合は、本体内に高性能なクリスタルを搭載しており、その正確なクロックを用いて音を鳴らすので、非常にクリアな音になるのだ。仮にパソコンからの信号がジッターで揺れていたとしても、TAC-2でそのジッターは全てキャンセルされるため、音質も大きく向上するのだ。
もちろん、10Wという供給電力を利用し、USB機器では搭載しにくい高音質部品をふんだんに使用しているというのも、TAC-2の強みだろう。なお、数社ある海外メーカーのThunderboltオーディオインターフェースの価格が10万円超なのに対し、TAC-2は定価で3万8000円という安さも大きな魅力となっている。
>>>岩井喬氏による音質チェック編はこちら
■国内ブランド初となるThunderbolt伝送採用機
ハンディレコーダーやギター用のエフェクトなどで定評ある、国産メーカーのズーム。そのズームからThunderbolt対応のオーディオインターフェース「TAC-2」が発売された。ズームはこれまでもハンディレコーダーやエフェクトの1機能として、パソコンと接続した際にオーディオインターフェースとして動作する機能を持たせていたが、単体のオーディオインターフェースとしては、同社として初となる製品。ミュージシャン向けに数多くの製品を出してきたメーカーだけに、DTMユーザーを大きなターゲットとした製品ではあるが、ハイレゾを楽しみたいオーディオファンにも向けた高音質追及製品となっているのもユニークなところだ。
でも、Thunderbolt対応オーディオインターフェースとは、まだ馴染みのない人も少なくないだろう。実際、海外メーカーを含めて製品化しているのは数社で、国産メーカーとしては現時点でズームのみ。そもそもThunderboltとは何なのだろうか?
これはインテルとアップルが2011年に共同で規格化したインターフェースの仕様で、ある意味USB3・0の対抗馬的なもの。現在のMac製品には全てThunderbolt端子が搭載されているほか、最近ではWindows PCでもThunderbot端子を装備したものが増えてきている。USBと比較しても小さな端子だが、接続はFireWireなどと同様デイジーチェーンで数珠つなぎしていく形となっている。その後、2013年にThunderbolt2と改訂したのが、現在の最新の仕様。速度的には20Gbpsで双方向の通信ができるという超高速な伝送システムとなっているのだ。現在のオーディオ機器で一般的なUSB2・0が480Mbpsなので、単純計算で40倍以上の速度ということになる。ちなみに、USB3.0は5Gbpsなので、それすら上回るものとなっているのだ。
■Thunderboltだからこそ可能となった充実の内部構造
ThunderboltとUSBの違いは、単にスピードだけに留まらない。パソコンと通信する規格がPCI Express 2.0に準拠したものとなっているので、パソコンの内部バスに接続するのと事実上同義となっているのだ。そのため、パソコンからは外部の周辺機器として見えるのではなく、内蔵のデバイスとして認識されて見えるので、システム上はパソコンの中枢部に装着されたオーディオインターフェースとして機能するのが大きな違いとなっている。
また、もうひとつ大きな違いとして挙げられるのがバス電源供給能力だ。一般的に使われているUSB2.0の場合、2.5Wの電源供給が最大とされているのに対し、Thunderboltでは10Wの電力を供給できるので、オーディオデバイスを駆動するという面では大きな意味を持つのだ。実際、TAC-2においても10Wだからこそ駆動できるチップを搭載したことで、他製品と音質面における差別化を図っている。ちなみに、USB3.0もUSB2.0と比較すると電源供給能力が向上しているが、それでも4.5WとThunderboltと比較すると見劣りするものとなっている。
さて、TAC-2はThunderbolt接続で2入力/2出力という仕様。スペック的には192k㎐/24bitまで扱うことができ、Macのみの対応。現時点においてWindowsはサポートしていない。DTM的に見ると、リヴァーブなどのエフェクトが搭載されていたり、ループバック機能が用意されているなど、なかなか便利であるほか、レイテンシーを極めて小さくできるのも、Thunderboltならではのポイント。内蔵デバイスと同等に扱えるからこそ、バッファサイズを縮めることができるのだ。では、オーディオ機器として見たときは、どんなメリットがあるのだろうか?
USB-DACの場合、パソコンからのクロックで動作しているが、パソコンのクロックを利用すると、どうしてもジッターが発生しやすく、結果として音質の劣化にもつながる。これを解決するためにアシンクロナス伝送を採用したりするわけだが、そもそもThunderboltはそんなことしなくても直接CPUにアクセスすることができる。TAC-2の場合は、本体内に高性能なクリスタルを搭載しており、その正確なクロックを用いて音を鳴らすので、非常にクリアな音になるのだ。仮にパソコンからの信号がジッターで揺れていたとしても、TAC-2でそのジッターは全てキャンセルされるため、音質も大きく向上するのだ。
もちろん、10Wという供給電力を利用し、USB機器では搭載しにくい高音質部品をふんだんに使用しているというのも、TAC-2の強みだろう。なお、数社ある海外メーカーのThunderboltオーディオインターフェースの価格が10万円超なのに対し、TAC-2は定価で3万8000円という安さも大きな魅力となっている。
>>>岩井喬氏による音質チェック編はこちら