Thunderbolt対応のオーディオインターフェース
ZOOM「TAC-2」に秘められたオーディオ的可能性を探る<音質編>
ズームのThunderboltオーディオインターフェース「TAC‐2」は、オーディオ的にみてどのようなポテンシャルを秘めているのだろうか。藤本健氏によるスペック編に続き、本記事では、岩井喬氏がTAC-2のサウンド面を分析していく。
■著名な録音エンジニアも係わったサウンドチューニング
ズームは楽器用エフェクターやハンディレコーダーなどの楽器業界商品分野で国内のみならず北米市場でも評価されているブランドだ。X-Y方式をはじめとするマイクカプセルユニットを交換式とした96k㎐/24bit・6ch同時録音対応ハンディレコーダー「H6」をはじめ、ユニークかつ高機能でありながら価格を抑えた商品展開を行っており、ユーザー目線に立った魅力溢れる製品群を発表し続けている。
そうしたなか、Thunderbolt対応オーディオインターフェースTAC-2が登場したわけであるが、ズームでは以前からコンシューマーオーディオ分野に対してもアピールのタイミングをうかがっていたそうで、そのきっかけとしてThunderboltという新たなテクノロジーが先行他社とも差別化できる、抜群のフィーチャーだったのだ。さらにTAC-2はズームとして初のオーディオインターフェース専用機ということもあり、著名な録音エンジニアも参加し開発段階で音作りに参加するなど、その完成度には万全を期したという。
■コストの極限まで音質に配慮。クロックはTAC-2側に同期
192k㎐/24bit対応2chイン&アウトのオーディオインターフェースとしてコンパクトにまとめた本機の音質に関わる部分を見ていこう。DACチップにはAK4396を搭載。内部で4倍アップサンプリング処理を行い、クリアなサウンド再生を可能としている。トップパネルにはアルミを用い、操作系を集約した大型ボリュームノブを採用し、精悍さを打ち出した。さらに樹脂製シャーシボトムにはウェイトを仕込み、低重心となるよう工夫も凝らされている。コンデンサーなどの内部部品もオーディオグレードを採用するなど、コスト的に許される限り良いものにこだわったとのこと。電源はバスパワー供給となるが、USB3・0の倍以上となる10Wまでの大容量給電を可能とするThunderbolt伝送のメリットを最大限生かした作りとなっており、特にヘッドフォン駆動時にはそのパワーを存分に味わうことができる。
さらにThunderboltを採用したことで、高速シリアルバスであるPCI Expressのプロトコルを利用できた点も音質的なメリットだ。パソコンのCPUやメモリと同列に存在するインターフェースとして、ホストであるパソコンとメモリ空間を共有でき、デバイス側であるTAC-2がマスタークロックとして動作する。そのため、より安定した動作を行い、ジッターからの影響も最小限に抑えることができる。低レイテンシーかつ高速伝送、さらに非同期伝送によって精度の高いサウンド再生を実現しているのだ。サウンドチューニングには主だったモニタースピーカーやヘッドフォンを用いて検討を重ねたとのこと。ライン出力はバランス対応TRS標準ジャックとなるが、一般的なRCA変換アダプターを用いれば接続に困ることはないだろう。
また、専用のコントロールソフトウェア「TAC-2 MixEfx」も用意されていることもトピックだ。こちらは入力から出力までの信号の流れがビジュアル的に理解しやすいGUIを採用し、各種パラメーターやリヴァーブなどのエフェクト、ローカットフィルター、位相反転の機能性を盛り込んでいる。
■伸び伸びとした自然なサウンドで広がりの良い音場を再現
TAC-2の基本的なサウンド傾向としては価格を感じさせない伸び伸びとした自然なもので、音像は肉づき良く、低域の弾力感も耳馴染み良い。192k㎐/24bitのイ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』を聴いてみると、ストリングスの艶やかなハーモニーが粒立ち良く浮かび、広がり良い音場の再現性も高い。S/Nも良好で、低域の密度感もバランスが取れている。旋律のしなやかな響きは倍音の豊かさからくるものだろう、甘く滑らかなハーモニーは耳当たりが良い。
続いて、96k㎐/24bitの『飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013』から「プロコフィエフ:古典交響曲」を聴く。ハーモニーはよくほぐれた素直なタッチで、管弦楽器のキレも際立つ。余韻も清々しさを感じさせ、厚く伸びやかなホールトーンの豊かさも味わえた。ローエンドは弾力良い表現で、音場の奥行きもほんのりと感じさせる。96k㎐/24bitのビリー・ジョエル『ニューヨーク物語』では、有機的で肉づき良いヴォーカルを聴くことができた。口元にはほんのりと艶も乗り、適度に分離良い音場が浮かぶ。リズム隊の厚みと澄んだピアノの音色がバランス良く融合。いずれの音源でも無理なくナチュラルな音伸びを感じさせ、4万円を切る製品であることを一瞬忘れるかのような、よくほぐれた音像のリアルさも持ち合わせた絶妙なサウンドであった。
■レコードのアーカイブも簡単に行える使い勝手の良さ
TAC-2オーディオインターフェースは、入力に対しての機能性も豊富に持っている点も特徴だ。ADコンバーターのチップにはPCM4202を搭載し、DAC部と同様、4倍アップサンプリングによりエイリアシング(折り返し)ノイズの影響も抑えるという。このアナログ入力とフォノイコライザーと組み合わせ、レコードをハイレゾでアーカイヴすることも簡単にできる。その際には「TAC-2 MixEfx」が操作の手助けとなるであろう。
TAC-2はThunderbolt伝送の可能性をおおいに感じさせてくれる、コンパクトながらも本格派の実力を備えるハイCPインターフェースだ。なお、この年末にはラックタイプとなるTAC-2Rの登場もアナウンスされている。いよいよオーディオ市場へ向け本格化したズームの展開に、大いに期待したい。
>>>藤本健氏によるスペック分析編はこちら
■著名な録音エンジニアも係わったサウンドチューニング
ズームは楽器用エフェクターやハンディレコーダーなどの楽器業界商品分野で国内のみならず北米市場でも評価されているブランドだ。X-Y方式をはじめとするマイクカプセルユニットを交換式とした96k㎐/24bit・6ch同時録音対応ハンディレコーダー「H6」をはじめ、ユニークかつ高機能でありながら価格を抑えた商品展開を行っており、ユーザー目線に立った魅力溢れる製品群を発表し続けている。
そうしたなか、Thunderbolt対応オーディオインターフェースTAC-2が登場したわけであるが、ズームでは以前からコンシューマーオーディオ分野に対してもアピールのタイミングをうかがっていたそうで、そのきっかけとしてThunderboltという新たなテクノロジーが先行他社とも差別化できる、抜群のフィーチャーだったのだ。さらにTAC-2はズームとして初のオーディオインターフェース専用機ということもあり、著名な録音エンジニアも参加し開発段階で音作りに参加するなど、その完成度には万全を期したという。
■コストの極限まで音質に配慮。クロックはTAC-2側に同期
192k㎐/24bit対応2chイン&アウトのオーディオインターフェースとしてコンパクトにまとめた本機の音質に関わる部分を見ていこう。DACチップにはAK4396を搭載。内部で4倍アップサンプリング処理を行い、クリアなサウンド再生を可能としている。トップパネルにはアルミを用い、操作系を集約した大型ボリュームノブを採用し、精悍さを打ち出した。さらに樹脂製シャーシボトムにはウェイトを仕込み、低重心となるよう工夫も凝らされている。コンデンサーなどの内部部品もオーディオグレードを採用するなど、コスト的に許される限り良いものにこだわったとのこと。電源はバスパワー供給となるが、USB3・0の倍以上となる10Wまでの大容量給電を可能とするThunderbolt伝送のメリットを最大限生かした作りとなっており、特にヘッドフォン駆動時にはそのパワーを存分に味わうことができる。
さらにThunderboltを採用したことで、高速シリアルバスであるPCI Expressのプロトコルを利用できた点も音質的なメリットだ。パソコンのCPUやメモリと同列に存在するインターフェースとして、ホストであるパソコンとメモリ空間を共有でき、デバイス側であるTAC-2がマスタークロックとして動作する。そのため、より安定した動作を行い、ジッターからの影響も最小限に抑えることができる。低レイテンシーかつ高速伝送、さらに非同期伝送によって精度の高いサウンド再生を実現しているのだ。サウンドチューニングには主だったモニタースピーカーやヘッドフォンを用いて検討を重ねたとのこと。ライン出力はバランス対応TRS標準ジャックとなるが、一般的なRCA変換アダプターを用いれば接続に困ることはないだろう。
また、専用のコントロールソフトウェア「TAC-2 MixEfx」も用意されていることもトピックだ。こちらは入力から出力までの信号の流れがビジュアル的に理解しやすいGUIを採用し、各種パラメーターやリヴァーブなどのエフェクト、ローカットフィルター、位相反転の機能性を盛り込んでいる。
■伸び伸びとした自然なサウンドで広がりの良い音場を再現
TAC-2の基本的なサウンド傾向としては価格を感じさせない伸び伸びとした自然なもので、音像は肉づき良く、低域の弾力感も耳馴染み良い。192k㎐/24bitのイ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』を聴いてみると、ストリングスの艶やかなハーモニーが粒立ち良く浮かび、広がり良い音場の再現性も高い。S/Nも良好で、低域の密度感もバランスが取れている。旋律のしなやかな響きは倍音の豊かさからくるものだろう、甘く滑らかなハーモニーは耳当たりが良い。
続いて、96k㎐/24bitの『飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013』から「プロコフィエフ:古典交響曲」を聴く。ハーモニーはよくほぐれた素直なタッチで、管弦楽器のキレも際立つ。余韻も清々しさを感じさせ、厚く伸びやかなホールトーンの豊かさも味わえた。ローエンドは弾力良い表現で、音場の奥行きもほんのりと感じさせる。96k㎐/24bitのビリー・ジョエル『ニューヨーク物語』では、有機的で肉づき良いヴォーカルを聴くことができた。口元にはほんのりと艶も乗り、適度に分離良い音場が浮かぶ。リズム隊の厚みと澄んだピアノの音色がバランス良く融合。いずれの音源でも無理なくナチュラルな音伸びを感じさせ、4万円を切る製品であることを一瞬忘れるかのような、よくほぐれた音像のリアルさも持ち合わせた絶妙なサウンドであった。
■レコードのアーカイブも簡単に行える使い勝手の良さ
TAC-2オーディオインターフェースは、入力に対しての機能性も豊富に持っている点も特徴だ。ADコンバーターのチップにはPCM4202を搭載し、DAC部と同様、4倍アップサンプリングによりエイリアシング(折り返し)ノイズの影響も抑えるという。このアナログ入力とフォノイコライザーと組み合わせ、レコードをハイレゾでアーカイヴすることも簡単にできる。その際には「TAC-2 MixEfx」が操作の手助けとなるであろう。
TAC-2はThunderbolt伝送の可能性をおおいに感じさせてくれる、コンパクトながらも本格派の実力を備えるハイCPインターフェースだ。なお、この年末にはラックタイプとなるTAC-2Rの登場もアナウンスされている。いよいよオーディオ市場へ向け本格化したズームの展開に、大いに期待したい。
>>>藤本健氏によるスペック分析編はこちら