<山本敦のAV進化論>第22回
見えてきた「リモート視聴」の課題 ー 他社製機器とアプリで接続できない理由とは?
「ホームネットワークであれば、DLNAガイドラインとDTCP-IPの暗号化技術で大方カバーできます。録画番組の外部機器への持ち出しに関してはトランスコード技術が関わってきますが、DLNAガイドラインと日本市場のニーズが乖離していることから、いわゆる720Pのメディアフォーマットにぴたりとはまるプロファイルが、当初の時点ではDLNAによって定義されていませんでした。つまり、持ち出し用の録画コンテンツを720P/H.264形式のファイルにトランスコードを行ってからムーブするのですが、そのファイルにはDLNAのプロファイルネームがないため、レコーダーメーカー各社が独自にプロファイルを付けざるを得ませんでした。リモート視聴にとっても720P/H.264形式のファイルは使い勝手が良かったため、そのまま各社独自のプロファイルネームを付けて扱われることになってしまいました」(三阪氏)。
デジオンの「DiXiM Digital TV for iOS」アプリが8月上旬のアップデート以降、ようやくソニー製BDレコーダーの「おでかけ転送」機能に対応できたのも、MP4コンテナの対応やソニーのプロファイルネームとメタデータのタグを正しく認識できるよう、変更が加えられたからなのだという。
「実際にはメーカーの仕様に合わせたつもりでも接続がうまくいかなかったりと、他社製品との連携は簡単には行かないもの。先方のメーカーに開示していただき、タグ付きのメディアフォーマットに関する情報をもらった上で対応するべきことなので、今回のアップデートについてはプロセスをきちんと経て実現しました。録画番組の持ち出しの場合はDTCP-IPが基本なので、技術的な敷居はそれほど高くありませんが、リモート視聴はNAT越えの技術仕様等が全く違います。通信プロトコルをやり取りする際のAPI仕様を開示してもらったとしても、それを正しく実装できるかということがその次の課題。そこでは開発パワーも必要になってきます」(三阪氏)。
■差別化競争がリモート視聴の普及を拒んでいる側面も
録画機メーカーとしては、リモート視聴まわりの機能にオリジナリティを打ち出すことで製品の差別化を図るため、技術まわりの仕様を独自に固めているという側面も当然あるだろう。
レコーダーやテレビなど録画機器にとって、リモート視聴機能がこれからの重要な競争材料の一つになるはずだ。だからこそコストがかかったとしても、あえて自社で開発した技術を蓄積していくことが戦略的に重みを増してくる。
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