強烈なラインナップが登場
新星イヤホンブランド「Aurisonics」日本上陸! 3モデルを高橋敦が一斉試聴
■ダイナミックとBAの「足し算」が成功した最上位機のサウンド
「ASG2.5-RED」の音を聴く。すると、その中低域の厚みはイヤーモニターでは他にちょっと記憶がないほどの充実っぷりだ。こういう音が欲しいから大口径ダイナミック型なんだなと納得。説得力のある音だ。
低域調整の効き方は大胆ではなく、詰めの調整という感じだ。僕は一番絞った状態を中心に聴いたが、それでもイヤモニ一般とは比べ物にならない厚みや押し出しを楽しめる。
そのせいで聴き始めは正直、低域が強すぎると感じた。しかし聴き続けているとあっさり慣れた。たしかに中低域楽器が際立つ傾向だが、中高域が弱いわけでもない。
例えばいかにもプレジションベース(エレクトリックベースの機種名)らしいちょっと飽和した音色でドライブ感をより引き出してくれるのは、これぞダイナミックドライバーと言えるサウンドだ。
一方、ダイナミックドライバーはエレクトリックギターやボーカルにも厚みを与えており、その存在感はベースなどにも負けない。そしてこちらはBAドライバーの活躍か、音色の艶やほぐれ、刺さり成分の心地よさ、響きの空間性なども、不足していないどころか豊かだ。ただしその力の発揮には中低域をぐっと制動できるアンプが必要。それなりのプレイヤーやポタアンとの組み合わせが望ましい。
レコーディングでもオーディオでも「音作りは引き算が基本」と言われるし、ポップスのアレンジの基本も「ボーカルを際立たせるために他の楽器は引き算で整える」だ。
しかし本機は「足し算」あるいは「掛け算」の成功例と思える。ダイナミック型らしさを遠慮なしに発揮させながら、それに負けないようにBA型にもしっかりと音を出させる。冒頭に述べた「個性」の必要性。本機のサウンドはその要請に強烈に応えている。
■よりバランス感を高めた「ASG1PLUS-BLACK」
この「ASG1PLUS-BLACK」は予想実売価格49,800円前後。BA型ドライバーが1基で低音調整機能が非搭載である他は、ASG2.5とだいたい共通の仕様だ。
しかし音作りの傾向は異なり、低域の強調は控えめでより一般的なバランスに近いまとめ方。こちらの方が好みだという方も少なくないかもしれない。
中低音域をうまく抜いてスカッとした空間性を確保してあり、細部にしても全体にしても、見通しの良さはこちらが大きく上回る。例えばベースや太鼓の大きなリズムに対しての、ハイハットの細かなリズムの見え方やそのニュアンス、音色の響きの美しさといったところにより耳が惹きつけられる印象だ。
といってもダイナミック型らしくいい感じに少し暴れる感じなどは生かされており、イヤーモニター全般の中ではやはり迫力系と言える。
「らしさ」を最大限に出すASG2.5と、それも生かしつつバランス感を高めたASG1。巧いラインナップだ。
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