様々な記録から予測
ビートルズのハイレゾ配信はいつ実現する? 元洋楽ディレクターが徹底分析
■どの媒体よりもハイレゾに近い“Mastered for iTunes”
実はアップルはiTunesで256kbpsながら、これまでのどの媒体よりもハイレゾに近い形で音源を配信している。iTunesは、一般家庭のステレオでも高音質で優れたサウンドが楽しめるよう最適なチューニング(iTunes専用リマスタリング)を行った「Mastered for iTunes」に力を入れている。そして現在、ビートルズのほぼ全てのカタログは、このフォーマットで配信されている。
Mastered for iTunesは、マスター音源から最適なマスタリングを行うことで、AACながら音質をより良く提供しようという試み。アップルと米国のトップ・マスタリングエンジニア、テッド・ジャンセン(スターリング・サウンド)やボブ・ラディック(ゲートウエイ・マスタリング)などとの共同研究のたまもの。2012年2月に配信開始された。
Mastered for iTunesのためにアップルが推奨する音源マスターの条件は以下のようになる。
1)マスタリング済みCD音源(44.1kHz/16bit)ではなく、オリジナルクオリティ(48kHz/24bit)または(96kHz/24bit)の音源。
2)アップサンプリングしたマスターは不可。
3)過度にコンプレッサーをかけたマスターを提供しない。
4)クリッピングレベル超過(限度:1dBFS)を極少にとどめる。
さらに、Mastered for iTunesとして認定を受けるためには下記の条件をクリアする必要があり、併売されているiTunes Plusとの差別化をはかっている。
・オリジナルのアナログ音源からの高解像度デジタライズが必須
・既存のリリースからの音質の向上が明確でなくてはならない
・「リマスター版」として登録される曲およびアルバムは、明確な音質の改善がなされたかどうかの審査が必要
2010年11月のビートルズ配信開始時点では、96kHz/24bitでデジタライズされた「2009年リマスター」をマスターとした音源が提供されていた(マスターテープからのデジタル化、および編集作業は192kHz/24bitで行われている)。2012年2月にMastered for iTunesが開始されると同時に、ビートルズ全曲がこの新フォーマットでの配信となった。ソロメンバーの音源も、リマスターが完成すると直ちにMastered for iTunesでの配信に入れ替えられた。
試しに筆者も『ザ・ビートルズ 1』の「Come Together」をiTunes Storeで購入して、同じ2009年リマスターを使ったCD版『1』からリッピングしたAIFF(44.1kHz/16bit)と聴き比べてみた。MacBook ProのiTunesで再生する限りでは違いは分からない。Audirvana Plusを使って聴くと、CDリッピングの方がわずかに楽器や声の輪郭がクッキリする。注意しなければ気付かない微妙な違いと感じた(USB-DACには「Fireface UCX」を使用)。
なお最近、大手レーベルは過去の名盤を高精度のデジタライズでリマスターして付加価値を高め、Mastered for iTunesとして発売すると同時に、HDtracksなどでハイレゾ・ファイルをダウンロード販売するケースが増えている。
■ハイレゾ化への鍵となる「2009年リマスター」
ここで、現時点で最新のビートルズ・リマスター音源である「2009年リマスター」について説明しておきたい。アップル・コアでニール・アスピノールが手掛けた最後の仕事の1つが「ビートルズ・デジタル・リマスター」で、2005年〜2009年の4年にわたる大プロジェクトだった。ビートルズの全楽曲のデジタル・リマスターは1987年に行われて以来のことだった。
リマスター作業は途中で後任のジェフ・ジョーンズに引き継がれ、2009年に完成した。作業を手がけたのは、プロジェクト・コーディネーターのアラン・ローズに率いられたアビイ・ロードの6人の技術者チーム。ノイズ除去をはじめ、最新テクノロジーを使ったデジタルリマスターが施された。原則的に1987年版のデジタル・マスターは使用せず、アナログのマスター・テープに立ち返り、最新機材を使って192kHz/24bitで作業が進められた。エンジニアのガイ・マッシーは「将来的にBlu-rayやDVD-Audioといった高音質フォーマットが必要になった時には、ProToolsによるマスター(192kHz/24bit)もある」と述べている。
そして2009年9月、新リマスターによるビートルズのオリジナルアルバムのCDは世界で一斉発売された。
・ステレオ盤ボックスセット『The Stereo Albums』(分売あり)
・モノラル盤ボックスセット『The Beatles In Mono』(分売なし・限定生産)
2011年9月には、ベスト盤『ザ・ビートルズ 1』が「2009年リマスター」を使って再発売された。ビートルズの正式音源として「2009年リマスター」が様々な企画で使われる具体例だ。
実はアップルはiTunesで256kbpsながら、これまでのどの媒体よりもハイレゾに近い形で音源を配信している。iTunesは、一般家庭のステレオでも高音質で優れたサウンドが楽しめるよう最適なチューニング(iTunes専用リマスタリング)を行った「Mastered for iTunes」に力を入れている。そして現在、ビートルズのほぼ全てのカタログは、このフォーマットで配信されている。
Mastered for iTunesは、マスター音源から最適なマスタリングを行うことで、AACながら音質をより良く提供しようという試み。アップルと米国のトップ・マスタリングエンジニア、テッド・ジャンセン(スターリング・サウンド)やボブ・ラディック(ゲートウエイ・マスタリング)などとの共同研究のたまもの。2012年2月に配信開始された。
Mastered for iTunesのためにアップルが推奨する音源マスターの条件は以下のようになる。
1)マスタリング済みCD音源(44.1kHz/16bit)ではなく、オリジナルクオリティ(48kHz/24bit)または(96kHz/24bit)の音源。
2)アップサンプリングしたマスターは不可。
3)過度にコンプレッサーをかけたマスターを提供しない。
4)クリッピングレベル超過(限度:1dBFS)を極少にとどめる。
さらに、Mastered for iTunesとして認定を受けるためには下記の条件をクリアする必要があり、併売されているiTunes Plusとの差別化をはかっている。
・オリジナルのアナログ音源からの高解像度デジタライズが必須
・既存のリリースからの音質の向上が明確でなくてはならない
・「リマスター版」として登録される曲およびアルバムは、明確な音質の改善がなされたかどうかの審査が必要
2010年11月のビートルズ配信開始時点では、96kHz/24bitでデジタライズされた「2009年リマスター」をマスターとした音源が提供されていた(マスターテープからのデジタル化、および編集作業は192kHz/24bitで行われている)。2012年2月にMastered for iTunesが開始されると同時に、ビートルズ全曲がこの新フォーマットでの配信となった。ソロメンバーの音源も、リマスターが完成すると直ちにMastered for iTunesでの配信に入れ替えられた。
試しに筆者も『ザ・ビートルズ 1』の「Come Together」をiTunes Storeで購入して、同じ2009年リマスターを使ったCD版『1』からリッピングしたAIFF(44.1kHz/16bit)と聴き比べてみた。MacBook ProのiTunesで再生する限りでは違いは分からない。Audirvana Plusを使って聴くと、CDリッピングの方がわずかに楽器や声の輪郭がクッキリする。注意しなければ気付かない微妙な違いと感じた(USB-DACには「Fireface UCX」を使用)。
なお最近、大手レーベルは過去の名盤を高精度のデジタライズでリマスターして付加価値を高め、Mastered for iTunesとして発売すると同時に、HDtracksなどでハイレゾ・ファイルをダウンロード販売するケースが増えている。
■ハイレゾ化への鍵となる「2009年リマスター」
ここで、現時点で最新のビートルズ・リマスター音源である「2009年リマスター」について説明しておきたい。アップル・コアでニール・アスピノールが手掛けた最後の仕事の1つが「ビートルズ・デジタル・リマスター」で、2005年〜2009年の4年にわたる大プロジェクトだった。ビートルズの全楽曲のデジタル・リマスターは1987年に行われて以来のことだった。
リマスター作業は途中で後任のジェフ・ジョーンズに引き継がれ、2009年に完成した。作業を手がけたのは、プロジェクト・コーディネーターのアラン・ローズに率いられたアビイ・ロードの6人の技術者チーム。ノイズ除去をはじめ、最新テクノロジーを使ったデジタルリマスターが施された。原則的に1987年版のデジタル・マスターは使用せず、アナログのマスター・テープに立ち返り、最新機材を使って192kHz/24bitで作業が進められた。エンジニアのガイ・マッシーは「将来的にBlu-rayやDVD-Audioといった高音質フォーマットが必要になった時には、ProToolsによるマスター(192kHz/24bit)もある」と述べている。
そして2009年9月、新リマスターによるビートルズのオリジナルアルバムのCDは世界で一斉発売された。
・ステレオ盤ボックスセット『The Stereo Albums』(分売あり)
・モノラル盤ボックスセット『The Beatles In Mono』(分売なし・限定生産)
2011年9月には、ベスト盤『ザ・ビートルズ 1』が「2009年リマスター」を使って再発売された。ビートルズの正式音源として「2009年リマスター」が様々な企画で使われる具体例だ。