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連載:藤岡誠のオーディオワンショット

【第6回】MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧方式への誘い<3> 対応フォノケーブルを試聴

公開日 2015/01/30 11:57 藤岡 誠
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■私のお薦め製品

さて、内外のバランス伝送対応フォノケーブルを実際に調べてみると、5PIN-DIN→XLRタイプもRCA→XLRタイプもそれなりに発売され、MCカートリッジ出力のバランス伝送方式を実行するに当たって障害はない。ただし、価格レンジについては考慮の余地がある。中には「何故これほど高額な価格設定が為されるのか?」と理解に苦しむ製品も散見される。ここでは国産で6万円以下、輸入品で9万円以下という条件でのお薦めだ。勿論、「金に糸目をつけない!」という方はお好みで自由な選択をすればいい。

また、それなりのオーディオ知識と半田づけの心得などがあれば部品を調達しての自作も難しくはないし、特別な導体・線材、部材を使わなければぐんと安上がりで造ることができる。ただし、ここでは自作のお薦めはしない。組み合わせる昇圧トランスやフォノEQアンプ、あるいはバランス伝送・昇圧(増幅)方式対応のプリアンプとの組合せで好ましくないケーブルを自作してしまう恐れが“無きにしも非ず”だからだ。私自身も遠い昔のことだが、知識の未熟さゆえに失敗したことがある。発電コイルを焼き切ってしまった友人もいた。とにかく、自作を否定はしないが、組合せ機器との電気的整合性を十二分に考慮することが大切だ。それでは以下、バランス伝送対応フォノケーブルのお薦め製品である。

なお、試聴に使用したバランス伝送対応機器については、文末にて紹介している。

・お薦め<1>Phasemation「CC-1000D/R」

最初のお薦めは2014年の6月から発売されたフェーズメーションの製品である。具体的には、5PIN-DIN→XLRタイプの「CC-1000D」(¥50,000・税別)とRCA→XLRタイプの「CC-1000R」(¥60,000・税別)の2品種がそれだ(関連ニュース)。いずれもオリジナルの2芯シールドケーブルでそれぞれの導体は0.32φOFC線材の7本撚りとのことで、両タイプ共に1.2m長のみの発売である。ケーブル自体が柔らかく配線がスムーズだ。

Phasemation「CC-1000D」¥50,000(税抜)

CC-1000Dで“アイデア”だと思うのは、5PIN-DINコネクターに取り付けられたループ状のワイヤーである。5PIN-DINの着脱機構はデリケートで乱暴な操作をすると接点不良などの不具合を生じることがある。その点、取り外す場合にこのループを使う機構部に無理がかからずスムーズ。頻繁にケーブルの着脱をするかも知れないマニアにはとても有効だと思う。アース線は1本で、5PIN-DINコネクターのセンターピン(アームアース)と左右のXLRコネクターの1番端子に接続されている。一方、RCA→XLRタイプのCC-1000Rのアース線は、RCAプラグの入力側と出力側のXLRコネクターの双方から引き出されているが、CC-1000Dと同様にXLRコネクターの1番端子に接続されている。なお、RCAプラグの外枠側(グランド/アース側)は、このアース線とは完全にフローティングされている。

Phasemation「CC-1000R」¥60,000(税抜)

試聴して感じるのは、適度な帯域感があって、空間再現性を含めてウェルバランスなことである。突出してどこが優れているということではなく、様々な楽曲をまったく無難に聴かせるという点で優れた能力を発揮する。この自然な再現能力を高く評価したい。もちろん、SN比も十分に納得できる水準にある。

・お薦め<2>SAEC「SCX-5000」

次に、本原稿を進めている最中にサエク「SCX-5000」のプロトタイプを聴くことができた。発売は2月20日が予定されている。これは5PIN-DIN→XLRタイプで、私の知る限り他に類を見ない凝りに凝った構造が採用されている。具体的には、左右chツイストペアのホット側の芯線とコールド側(編組シールド)の双方に最新導体としてのPC-triple C導体を採用。介在は贅沢にも絹糸だ。その上でツイストペア全体を銅箔シールド+編組シールドで覆っている。つまり、トータルで3重のシールディングであり、高周波のデジタルノイズの領域に至るまでノイズ排除能力を持たせている。

SAEC「SCX-5000」(画像はプロトタイプ、2月下旬発売予定)

アナログ機器とデジタル機器が混在する現在のオーディオ装置では貴重な能力が訴求されているといっていいだろう。ケーブルの両端には燐青銅製5PIN-DINコネクターとノイトリック社製XLRコネクターが装着されている。アース線は、5PIN-DINコネクターのセンターピンと3重シールド部に接続され共通アースとして1本引き出されている。XLRコネクターのピンとは接続されてはいない。つまり、XLRの3番ピンはオープンである。ケーブル長は0.7m/1.2m/1.5mの3種類。なお、それほど遠くない時期にショートタイプのL字型5PIN-DINコネクターを採用したタイプ、さらにRCA→XLRタイプの発売も予定されている。なお、一貫してPC-Triple C導線で信号伝送することを意図して、「SR-500」というシェルリード線も発売される。これも試聴したが、やはりPC-Triple Cならではの高品位だから注目されたい。

SCX-5000の音質・音調は、私が今回チェックしたバランス伝送対応フォノケーブルの中で、分解能、透明度、音場空間の自然さなどで最高水準だと思った。オーディオ情報量に加えて音楽情報量の多さがその所以だろうが、やはり新素材のPC-triple Cの採用効果もあろう。加えてコストパフォーマンスの高さも魅力だ。

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