カジュアルながら本格派
ゼンハイザーから新ヘッドホン「URBANITE」登場 − そのサウンドと使い勝手に迫る
■URBANITEはどっしり豊かな低域が音楽を強固に下支え
まず、オンイヤータイプのURBANITEから。ブライアン・フェリーの新作『アヴォンモア』がハイレゾ(44.1kHz/24ビット)で登場したので早速購入してみた(プレーヤーはアステル&ケルンのAK120IIを使用)。音楽的には1980年代中盤から、びっくりするほど変わっていない。『ボーイズ・アンド・ガールズ』(1985年)『ベイト・ノワール』(1987年)に大いに親しんだ者にとっては、その頑固なまでの姿勢に敬意さえ表したくなるほどだ。
それはともかく、ヘッドホンから溢れて来たのは、どっしりとした低域だ。勢いがあって、ベースやドラムスが音楽を下支えしているような印象だ。また、フェリーのボーカルの、ややかすれた部分までを描き出す。エレキギターを中心としたバンドサウンドも密度感が高く、音像がぶれない。
■オンイヤータイプながら装着時の快適性は高い
オンイヤータイプで重要なのは側圧のかかり具合とヘッドバンドの支持方法、さらにイヤパッドのフィット感である。ボディを小型、軽量にできる反面、耳の上に乗せる方式であるがゆえ、頭との設置面積が狭くなる。その点、本機は側圧も程よく、ヘッドバンドも太めで重量バランスも取れている。
それにイヤーパッドは低反撥ウレタンフォームとベロア調の素材で耳の凹凸に沿い、肌あたりも格別だ。
このところのレファレンスファイル、伊藤ゴロー&ジャキス・モレレンバウムの『ランデヴー・イン・トーキョー』(192kHz/24ビット)を再生すると、やはり低域に特徴がある。とはいってもクセがあるわけではない。ウッドベースやチェロの深みや厚みがこってりと響く。落ち着きのある、大人のサウンドだ。
ボーカルやピアノもマイルドになる傾向。そこにアコースティックギターやパーカッションが加わって、ゆったりと豊かな音場を織り上げている。
■URBANITE XLのサウンドの「まとまりの良さ」は特筆もの
続いて、アラウンドイヤータイプのURBANITE XLにチェンジして、まずブライアン・フェリーを聴く。
深みと勢いのある低域はURBANITEと共通している。ウォームなトーンである。ただ、本機の方が、若干スピード感が高まっているように思えた。音の立ち上がりが速いともいえるだろう。
全体としては耳に優しい音で、屋外はもちろん、室内で使う場合でもリラックスして音楽に浸れる。イヤパッドは優しく耳を覆い、フィット感も申し分ない。
伊藤&ジャキスで印象的だったのは、サウンドのまとまりの良さである。いずれかのパートが突出することなく、ボーカルだけが浮いてしまうようなことはなかった。また、ピアノやパーカッションの弱音も丁寧に拾い上げ、プレーヤーたちの腕の確かさが伝わって来た。
産声を上げたばかりのURBANITEシリーズ。MOMENTUMシリーズと同様、ラインアップの拡充が図られるのではないだろうか。楽しみにしたい。そして、コストパフォーマンスの高さもあいまって、多くのユーザーを獲得するに違いない。
(中林直樹)