[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第121回】「JH Audio三姉妹」どれと付き合う? 新キャラ “Layla&Angie” を聴く
三女「Angie」は「Layla」よりもスカッとしてスピード感が高まる印象だ。中低域の充実感というところはやはり及ばないが、その代わりに速さやキレといった要素での魅力は増している。例えばドラムスの太鼓などは自然に弾む太さでは負けるが、ややタイトに締め込んでのスタンッ!という抜けっぷり。すっきりすっぱりしてくれている。こちらの方が好みだという方も少なからずだろう。
この点はやはり、中低域のドライバー搭載基数が「Layla」は各4基で「Angie」は各2基というところからと思われる。両モデル共に多ドライバーでの位相等のズレには「FreqPhase」技術で対処しているわけだが、位相制御ということで言えばそもそもドライバー数が少ない方が有利であることもまた必然だからだ。
しかしそのあたりの他はさすが姉妹(同シリーズ)。豊かな空間性やその中での配置や音像の明瞭さ、ざっくり感も暖かみも幅広く表現する音色再現性など、おおよその印象は共通だ。僕の周りの、つまりオーディオ業界の方々でも、「Angieの方が好きかも」という声は少なくない。もちろん「やっぱりLaylaだな」という方もいる。36万円と16万円ということで価格帯には大きな開きはあるのだが、やはり姉妹はいちばん身近なライバルなのかもしれない。
ケーブルも付属していることだし「AK120II」と組み合わせてのバランス駆動も試してみた。変化の傾向は「Layla」でも「Angie」も共通。中低域をより堅実に制御しつつ力を込めて、何というか「音の力の密度」のような感触を高める。この姉妹はそもそもから「ドカンッ!」と派手な低音を響かせるタイプではないが、さらに踏み込んで「ぐいっ!」っと静かに力を込める感じに進化する印象だ。
なのでバランス駆動で制動を効かせつつ「Variable bass output」で低音の量感も稼ぐというコンビネーションも実に有効。そのやり方は「Layla」では特にハマる。
■まとめ
今回のチェック、そして以前にチェックした「Roxanne」の印象もちょっとデフォルメしてまとめてみると、
●Layla:落ち着きと強さを兼ね備える万能美人長女
●Roxanne:長女と似てるけどちょっとやんちゃな次女
●Angie:運動神経抜群の快活美少女三女
といった感じだろうか。もちろんこの個性は「この三姉妹の中で言うと」だ。そもそもこの三姉妹は超ハイスペック三姉妹であり、例えば「Roxanne」の運動神経だって比べる相手が「Angie」でなければ十分に際立つレベル。なお「Angie」と「Roxanne」は歳(価格)は近いが音の個性としては明確に棲み分けできている。
…というわけで今回は、JH Audio三姉妹を完成させた新登場2モデル、「Layla」と「Angie」をチェックしてみた。「スタジオ・マスタリングのリファレンス用として設計した」とのことでよりフラット&ナチュラル志向になってはいるのだが、ロックを聴けばその勢いや厚みはさすがだったりと、これまでのJHらしさも生かしつつの新機軸といった印象。豪放にして緻密なJHサウンドはここでさらに進化したと言えるだろう。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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