アニソンオーディオポータル:レビュー第3回
アニメ「艦隊これくしょん -艦これ-」楽曲を超豪華“艤装”(スピーカー)で聴く!
今回は音元出版の試聴室にて、楽曲の試聴を行った。よりどりみどりの感があるオーディオ機器からどれを用いるか選択する必要があったので、「一番いいのを頼む」と言ってみたかったセリフを口にすると、目の前にすごいものが並んだ。
筆者のセリフに誰が突っ込むわけでもなく、編集部の皆さんが額に汗しながら頑張って用意されているのを見て、いまさら「あの、そこまでしてもらわなくとも」なんて言えない。内心の動揺を表に出すことなく、意味ありげに一度頷いてみせた。震えていたように見えたかもしれないが、それは武者震いというものだ。最終的に、今回の構成は下のリストのようなものとなった。
パソコン | Macbook Pro |
再生ソフト | Audirvana Plus2.0 |
DAコンバーター | ラックスマン DA-06 |
プリアンプ | アキュフェーズ C-3800 |
パワーアンプ | アキュフェーズ P-4200 |
スピーカー | KEF LS50 Standard |
スピーカー | モニターオーディオ Gold 300 |
スピーカー | TAD Evolution One |
簡単に機材を紹介したい。国内オーディオブランドの雄として認知されるアキュフェーズのプリ/パワーアンプは試聴室のリファレンス機器。性能や音質の面では疑う余地がなく、接続するスピーカーを十全に駆動し切るモデルとなる。カラーはシャンパンゴールドということで、今回の内容にうってつけだ。DAコンバーターはラックスマンのDSD対応機。デジタル部だけでなく、電源や筐体などアナログ部の作り込みでオーディオ機器としてのグレードが高いモデルだ。
そしてスピーカーは艦娘が改、改二となるように、装備できる兵装もパワーアップしていくように、三段階の価格帯/サイズ感で揃えられている。小さなサイズのスピーカーはKEFの人気モデルで、ユニットはひとつに見えるが同軸に高音担当と低音担当の2つを配置したUniQドライバーを採用した2ウェイ機。筆者の部屋(6畳間)だと、これがサイズ的には丁度よい。
続いて、モニターオーディオのトールボーイ型スピーカーは、新Goldシリーズの最上位モデル。高域×1、中域×1、低域×2の3ウェイ・4ユニット構成で、その分だけ余裕を持った再現性を持つ。お察しのとおり、ゴールドな点が大変よろしい。なお、縦の空間を確保できるのなら、先のブックシェルフ型と設置スペースにはさほど違いはないので導入に問題はないだろう。
そして、音元出版内にあった最大火力、TADのスピーカーだ。高域/中域×1、低域×2の3ウェイ機で、1台あたり53kg。46cm三連装砲を思わせるそのサイズ、もちろんそれにふさわしい表現が魅力だ。現状では難しいが、いつかこんなスピーカーを自室で使いこなす人間になりたい。
……「まだ始まらねーのかよ!」とページを閉じてしまった方もいるかもしれない。すいません、ここから本編が始まります。
●『海色/Just Moving On Now』
「海色(みいろ)」はTVアニメ「艦これ」のオープニングテーマ。歌はAKINO from bless4、作曲・編曲はWEST GROUND、作詞はminatoku。作品内で初めて流れたのは第1話のエンディングで、2話目以降から映像と共に正式にオープニングで使用されるようになった。AKINOと言えばそのパワフルな歌声で知られる女性シンガーで、4人兄妹ユニットbless4のメンバーだ。今回は“with”ではなく“from”なので、AKINOのソロヴォーカル作品となっている。ダイナミックなヴォーカルもさることながら、ギター、ベース、ドラムスをメインに、ストリングスとピアノが強力にサポートする、グイグイと突き進んで行くような勢いのある楽曲だ。バンド・サウンドが渾然一体となり迫ってくるのに圧倒されるが、それに埋もれず、むしろ上をいくAKINOの声が浴びせかけるように全身にぶつかってくる。
音は決して団子になっているというわけではなく、波状攻撃のように耳まで届くために重なって聴こえるのだ。それが何より感じられたのはGold 300との組み合わせ。ギターのカッティングやイントロなどでメインを担当するストリングスが、確かに個々の音として存在し、音楽を形成していることが分かる。逆にそれぞれの音の分離が良すぎても、楽曲の魅力は損なわれるだろう。そのバランスを取るのがポイントとなるはずだ。
カップリング曲の「Just Moving On Now」は、ヴォーカルは同じくAKINO from bless4、作曲は斎藤悠弥、編曲は斎藤悠弥/伊藤ミツヤ、作詞はSugarLover。「海色」と同じくパワフルな曲調だが、歌声はさらに力を感じさせるものとなっている。動き出す今、そして明日、そこに向かう気高き精神を歌い上げている。また、構成としてもヴォーカルが6対4で主張しているようなバランスであり、だからこそ、このパワーが得られているとも言える。
当然ヴォーカルのパワーをどこまで出してくれるかが気になるところだが、逆にどういった聴き方であれ感じられるほど声が良い。だからこそポイントとしたいのは、ベースの動き。楽曲を支えるベースが、時にグンと来る瞬間がある。そのラインを捉えると、上半身が引っ張られるような感覚がある。そんな低音の厚みや動きを感じるならサイズがモノを言う。Evolution Oneが最もそれが分かるし、小さいサイズや小音量ではトーンコントロールなどで調整して楽しんでみるのも良さそうだ。
●『吹雪/Meaning』
一方、TVアニメのエンディングテーマとなるのが「吹雪」だ。こちらは第2話のエンディングで初めて流れた曲となる。歌は西沢幸奏(にしざわしえな)、作曲はHige Driver、編曲はWEST GROUND/斎藤悠弥、作詞はminatoku。西沢幸奏は2014年実施の第一回フライングドッグ・オーディションでグランプリを獲得。本タイトルがデビュー曲となる期待の新星だ。その歌声は凛々しく清純、それでいてキュートな響きを含んだもので、作品の主人公の名を冠したこの楽曲とこれ以上ないマッチングとなっている。尾を引くような大太鼓の響きに、キラキラと散りばめられたウィンドチャイムのような音、そして何よりも印象に残るストリングスが楽曲をリードする。オーケストラ調の壮大な展開で、Aメロ、Bメロで盛り上がりを見せながら、サビでそれを昇華している。歌パートも緩急のある構成で、それがうまく絡んで楽曲を作り上げている。
とてもスケールの大きな楽曲なので、上と下のどちらに焦点を合わせるかがポイントとなるだろう。筆者は上への広がりを重視しているので、ヴォーカルとのハーモニーを形成するストリングスのメロディが聴こえると気持ち良い。とは言え、誰しもが「うおっ」と耳を澄ませるであろうラスサビの入りは、聴きどころに挙げざるをえない。
カップリングとなるのは「Meaning」。ヴォーカルは西沢幸奏、作曲は田中潤也、編曲はN@oki、作詞はMicro。ギター、ベース、ドラムスによるバンド・サウンドを中心としたロック・チューン。ギターの音作りが面白く、カッティングもソロも目立ち過ぎない範囲で良いアクセントになっている。曲調としてもストレートな展開で、その分だけヴォーカルの存在が強く感じられる。サビ前にミュートして一気に畳み掛ける構成やバックなしでヴォーカルのみにするパートなど、演奏のストップ&スタートが効果的に用いられている。
楽器の構成としてはシンプルなものになっているので、それに乗って声が飛び込んでくる感じを大切にしたい。同軸による点音源再生のおかげか、LS50 Standardがよく聴かせてくれる。生演奏のように…とはまた違うが、個別録音ではなく楽器隊の演奏と同時に西沢が歌っている、というリアル感が得られる。