アニソンオーディオポータル:レビュー第3回
アニメ「艦隊これくしょん -艦これ-」楽曲を超豪華“艤装”(スピーカー)で聴く!
④「Bright Shower Days」
こちらは1ページ目で紹介したように、吹雪の着任後、初めての友人となる3人による楽曲。作・編曲は伊賀拓郎、作詞はminatoku/松井俊介。歌は吹雪(CV:上坂すみれ)、睦月(日高里菜)、夕立(タニベユミ)だ。この3人は最初のルームシェア・メイトでもあり、そんな日々の生活や会話を綴った内容となっている。明るく語り合うように、歌声が重なっていくミドル・チューン。吹雪は迷ったりしながらも前向きな、睦月は励まし合うような、夕立はムードメーカーとしての元気な、それぞれのキャラクターに合わせた歌詞とパートで構成されていて、その掛け合いが楽しい。楽器として引き立てられているのはギターとピアノ、ブラス系のサウンドだ。
とにかく気になるっぽい、夕立のパートを無理やり意識の外に追い出す。また、吹雪の声に引き込まれるのも耐え切る。その上で、睦月のスウィート・ボイスに耳を傾けてみる。まぁ、とても素晴らしいわけなのだが、もっと良くする方法はないだろうか。温かみのある真空管アンプにしてみる、残響成分を楽しむためセッティングを工夫する、などが考えられる。これは好みの追求となるため、吹雪や夕立の個性を活かした調整なども各々で試して欲しい。
⑤「二羽鶴」
所謂、五航戦をモチーフとしたキャラクターである翔鶴型航空母艦の1番艦「翔鶴」、2番艦「瑞鶴」のために作られた楽曲。作・編曲は中西航介、作詞はminatoku/松井俊介。歌は翔鶴、瑞鶴(CV:野水伊織)となる。和テイストとバンド・サウンドが融合した、和風・ロック・ミドル・チューンとでも言うべき曲調。美しい旋律とリズムには琴や篠笛、小鼓のような音色が使われており、バンド・サウンドと合わさって独特な世界を作り上げている。そこに重なる歌声もどこか和の風を漂わせており、和楽器の音がないパートでも雰囲気が崩れない。また、別の複数名による曲は交互にパート分けされているのに対し、この曲では1番目を翔鶴、2番目を瑞鶴、Cメロを交互に、ラスサビを2人で歌うという構成を採っている。
淑やかな翔鶴、元気で活発な瑞鶴、そのニュアンスの違いは声の勢いによく表れている。瑞鶴の方が勢いの良い発声で、翔鶴は幾分大人しい印象だ。そんな強弱の差をしっかりと歌い分けているのがすごいが、それを聴く側も漫然とせずにその恩恵を受け取るようにしたい。ある程度の音量が確保できるのならサイズの大きなスピーカー、そうでなければ小型スピーカーでのニアフィールドリスニングが良いだろう。
⑥「Let’s not say “good-bye”」
アニメ第3話の特別エンディングとして使用された、非常に印象深い楽曲。作・編曲は宝野聡史、作詞はminatoku/松井俊介。歌は「赤城」(CV:藤田 咲)、「加賀」(CV:井口裕香)、「瑞鶴」(CV:野水伊織)、「金剛」(CV:東山奈央)、「島風」(CV:佐倉綾音)、「吹雪」(CV:上坂すみれ)による艦娘特別艦隊だ。悲しみをたたえるようなピアノの音と共に始まるこの楽曲は、全てを認めて受け止める勇気、そして踏み出される一歩、また未来へと顔を向けていく、そんな展開をオーケストレーションにより描き出した、壮大かつ感動的なバラード。これまでで最多人数が参加しているが、パートとしては金剛・島風・吹雪の3人ずつ、もしくは赤城・加賀・瑞鶴の3人ずつで分けられている。そのため、歌としては合唱曲として見ることもできる。
聴こえてくる音はさまざまで、そのどれもが常に優しい。もちろん強弱や音量の差もあるが、どんな強く大きな音であっても、そこに穏やかな感情を内包している。決して激しい楽曲ではないが、静けさから湧き上がるように響く低音、歌い上げるようなストリングスの高音、これらを再生しきるならパワー、包容力のあるスピーカーがふさわしいだろう。それなりの音量の確保が難しい場合は、耳を包み込むくらい大きめの開放型ヘッドフォンを、アンプを介して鳴らすとこのスケールが楽しめると思う。
「艦これ」の音楽に共通しているのは、シリアスな世界のなかでキュートな艦娘たちが活躍する、そんな表現の難しいであろう世界観に見事にマッチしているということだ。何の違和感もなく、「ああ、これが『艦これ』だな」と認識していた。それほどまでに、作品を前提として作られている楽曲が揃っている。かと言って作品がなければ成り立たない、とならないのが素晴らしいところ。単純に楽曲そのものの音楽性が高いので、いつまでも聴いていられる。実際、最近は寝る時以外ずっとループさせているが、停止させようという気にならない。
アニメは続編の制作が決定しており、それに伴い音楽も数を増やしていくだろう。自分の秘書艦がアニメに登場し、さらにはキャラクターソングが用意されるのを楽しみにしている提督も大勢いるはずだ。ともあれ、まだまだ先の展開に期待ができるので、これからも一提督として、皆さんと共に応援していきたい。
©2014 「艦これ」連合艦隊司令部
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赤江ユウ Yu Akae 主にアニメ・ゲームとオーディオの分野で活動中。気持ちの良い音・映像を求めて、2次元と3次元の狭間を漂う。都内の片隅にある6畳間から、庶民的な感性を発揮した文章を発信している。 |