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ハイトスピーカー利用からミニマムな構成まで徹底検証

デノンの旗艦AVアンプ「AVR-X7200WA」で理想のドルビーアトモス配置を探る

公開日 2015/05/28 14:44 山之内 正
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【検証5】7・1・4(フロントハイト+トップミドル)

ハイトスピーカーとトップスピーカーを組み合わせてのDolby Atmos再生。AVR-X7200Wのフレキシブルなアトモス対応力が活きる

フロントハイトスピーカーを利用してトップミドルと組み合わせた配置。天井への設置が1ペアで済むので、フロントハイトスピーカーを活用しつつ、アトモスの効果をさらに追求したい場合を想定した配置だ。フロントハイトだけを割り当てた場合に比べてジョニー・デップの声に厚みと広がりが加わり、威圧感や声の支配力が強まる。この場面の狙いがいっそう際立つ効果があり、上下方向にもエフェクト音の厚みが増し、密度が上がる。映像との一体感を引き出す効果が強い組み合わせだ。

【検証6】7・1・2(リアハイト)

ベーシックな7.1chにリアハイトスピーカーのみを加えた構成だ

リアハイトスピーカーをトップスピーカーに割り当てる配置。聴き手を上下左右から包み込むように演出されたウィルの声がやや遠い位置から聴こえてくる印象があるが、環境音は予想以上に大きく広がり、遠近感の描写にもリアリティがある。チャプター冒頭のチラシが舞い上がる音は7.1ch再生よりも高さを正確に再現し、紙の質感や動きまで伝える現実感の高さがある。ドルビーアトモスは日常的な環境音を驚くほどリアルに再現するので、演出意図が伝わりやすい。

【検証7】7・1・4(トップミドル+リアハイト)

【検証5】で試した構成から、ハイトスピーカーのみをリアへ移したかたちだ

リアリティと臨場感が非常に高く、4本のトップスピーカーを設置した組み合わせに近い効果が得られる。一音一音に説得力があるという点で組み合わせ1に準じる効果が期待でき、環境音が広がる空間もとても大きい。サラウンドチャンネルを含めてウィルの声が分厚い音色で展開するため、劇場で見ているような迫力が伝わってきた。今回は試聴していないが、『トランスフォーマー/ロストエイジ』など迫力を狙った作品でも大きな効果を発揮しそうな組み合わせだ。

【検証8】5・1・2( トップミドル、サラウンドバックなし)

5.1chシステムにトップスピーカー1組を加えた、ある意味でミニマムなアトモスシステムである

この配置はサラウンドスピーカーの配置によっては音の重心が若干前方に動く可能性があり、今回の試聴でもその傾向があった。ウィルの台詞はすっきりとした感触になって本来の意図とは少し違う方向。声の音色と定位をきめ細かく変える演出意図をいまひとつ引き出しにくい印象を受ける。環境音の広がりはひとまわり小さくなるが、一つひとつの音の質感はていねいに再現する。

【検証9】5・1・2(リアハイト・サラウンドバックなし)

5.1ch+リアハイトという構成。「7.1ch構成だがサラウンドバックは高めの位置に設置している」とう方も、このシステムに該当するだろう

サラウンドバックスピーカーをリアハイトとして利用する組み合わせ。サラウンドバックスピーカーを高めの位置に設置している場合を想定しており、今回も壁面上方のスピーカーを利用した。声の広がりやエフェクトの音源がやや遠い感触になるものの、環境音本来の効果はしっかり引き出すことができる。空間の密度は少し薄く感じるが、12畳以下の空間なら十分な密度感が得られるかもしれない。7.1chシステムと併用しつつドルビーアトモスを手軽に楽しみたい人にお薦めの配置だ。

■これまで活用してきた環境を活かすアトモス再生

ドルビーアトモスは音色、位置に関する緻密で繊細な情報を含んでいるため、トップスピーカーの数や位置を変えると、音場の広がり具合、効果音の移動や包囲感が微妙に変化する。今回は再生機器を固定してトップスピーカーの数や配置を変える実験を行ったが、さらにAVアンプやスピーカーの組み合わせを変えるとバリエーションは無限に広がっていく。その膨大な組み合わせのなかから自分の環境に最適なシステムを見つけるのは大変な作業になりそうだが、少なくともスピーカーのアサイン機能は選択肢が広い方が良いと思う。

デノン試聴室に設置されたAVR-X7200WA

AVR-X7200WAはトップスピーカーの割り当て機能が充実していることに加え、コンテンツごとに既存のサラウンドとアトモスを切り替える動作が自動化されているため、これまで活用してきた環境を活かしつつアトモス再生を追加したい場合に威力を発揮する。特にハイトやサラウンドバック用にスピーカーを設置済みのリスナーは、AVR-X7200WAを導入することで既存の環境を生かし、ドルビーアトモスの3D音響を手軽に体験できる。音にこだわる映画ファンならぜひ試してみたいアプローチだ。

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