米Knowles社製ドライバーを搭載
エレコム初のBAイヤホン “AQUA” レビュー。シングルBA機の新たな基準になり得る完成度
■ハイレゾ音源で試聴
今回はリモコンなしの「EHP-BA100」シリーズの音質インプレッションを報告しよう。最初はハイレゾポータブルプレーヤー「PonoPlayer」を使っていくつかのハイレゾ音源を試聴した。
ジェーン・モンハイトのボーカル曲「Depende De Nos」では、ボーカルを中心にミッドレンジの情報量が実に充実している。声に滲みがなく、強弱を的確に再生。緻密な線の輪郭からは様々な表情が読み取れる。ボーカリストに一歩も二歩も近づいたような、鮮度の高さとバイタリティが味わえるのも本機ならでは。
S/Nがよく解像感も高いので、例えばドラムスのブラシによるストロークからはザラッとした質感が見えてくる。アコースティックギターやアコーディオンなど、生楽器のサウンドは弾き手の手グセまでも再現してしまうほどリアルで生っぽい。
マイケル・ジャクソンの「Love Never Felt So Good」ではバンドの一体感に注目した。ボーカルを中心に置いて、各楽器の定位も鮮明。立体的に空間を描く。何より音のつながりがスムーズで、曲全体が力強くグルーブする。
シングルBAタイプの中には、確かに低域の力不足が気になるイヤホンもあるが、本機の低域は空気の押し出し感までも伝わってくるほどどっしりと安定していて、芯が強い。タイトで無駄のないバネの力強さがある。この曲を聴いていると、ベースラインの安定感がクリアな中高域が描く繊細な情景を足下で支えながら、全体に緊張感あふれるエネルギッシュなサウンドに昇華させていることがよくわかる。エレキギターのカッティングは踊るように軽快で、ふくよかなストリングスとのマッチングも絶妙。編曲者が描きたかった情景が目の前に浮かんできた。
オーケストラを聴いてもやはり低域の底力と、中高域へと滑らかに続く一体感の気持ち良さが光る。弦楽器のハーモニーは肉厚で、ふくよかな響き成分が情緒的に広がる。フォルテッシモからピアニッシモまで、強弱のイメージもダイナミックに描き分ける。
小沼ようすけのギターは弦の弾けるような瑞々しさと、指板の上を滑る指先の細かいニュアンスまでもが忠実に蘇る。ギターの音像は前面に押し出してくるように存在感が強いが、音の立ち下がりが鋭く、すうっと爽やかな余韻を残しながら空気の中に消えていく。
バンドの距離感はコンパクトにまとまっているものの、楽器どうしのセパレーションが高く、自然な一体感から生まれるグルーブに包まれる。バスドラムのキックは空気を塊にして押し出してくるような迫力に満ちている。パーカッションは音の粒立ちがよく、それぞれ楽器の音が正確に描き分けられ、聴いていて本当に楽しい。
■スマホやiPhoneで試聴
単体ハイレゾオーディオプレーヤーのパワーがあれば本機の実力は十分に引き出せると思うが、インピーダンスが48Ωと若干高めに設計されているため、スマートフォンで再生する場合はアンプの力を借りてみるのもいいと思う。今回はXperia Z2にオーディオテクニカのヘッドホンアンプ「AT-PHA100」を接続して、ハイレゾ音源を聴いてみた。
オリジナル・ラヴのアルバム『ラヴァーマン』からタイトル曲の「ラヴァーマン」では、ボーカルの声から生命力が沸き立ってくるようだ。タイトなリズムを刻むベースラインは厚みがしっかりと乗っていながら、足回りは非常に俊敏。エレクトリックピアノやギターの音色には不要な歪みがなく、輪郭がクリアに澄み渡っているので、それぞれの音が重なり合うアンサンブルの中でも埋もれて見えなくなることがない。色んな音がまっすぐに伝わってくる。ドラムスの演奏にも非常にアグレッシブな力強さを感じる。
最後にiPhone 5sとオーディオテクニカのアンプをつないでApple Musicの音源も試聴してみた。余談だが7月1日よりApple Musicを使いはじめてから、「For You」には嗜好に合うアーティストや作品がちゃんと並ぶようになってきた。リストの中に今まで聴いたことがなかったアーティストを見つけて再生してみると、期待を超えるほど自分好みな作品に出会うこともある。
今回はApple Musicを始めてから出会った、中田ヤスタカがプロデュースするMEGのアルバム『MAVERICK』から「SECRET ADVENTURE」を試聴。打ち込みによるボールドなベースラインを起点に、立体的な空間の広がりをナチュラルに再現。潤いをたっぷりと含んだボーカルが、小気味良く刻まれるリズムの旋律に乗って軽やかに疾走する。
◇
初のBA型でありながら、そのうえシングル構成という条件での音づくりは決して容易なものではなかっただろう。満を持して誕生したエレコムの“AQUA”シリーズは、充実した中高域から力強さも備える低域まで、音楽のエッセンスをバランス良く引き出す完成度の高いイヤホンだ。同タイプのイヤホンの中で、新しいリファレンスとして長く名を残すモデルになるかもしれない。
(山本 敦)
今回はリモコンなしの「EHP-BA100」シリーズの音質インプレッションを報告しよう。最初はハイレゾポータブルプレーヤー「PonoPlayer」を使っていくつかのハイレゾ音源を試聴した。
ジェーン・モンハイトのボーカル曲「Depende De Nos」では、ボーカルを中心にミッドレンジの情報量が実に充実している。声に滲みがなく、強弱を的確に再生。緻密な線の輪郭からは様々な表情が読み取れる。ボーカリストに一歩も二歩も近づいたような、鮮度の高さとバイタリティが味わえるのも本機ならでは。
S/Nがよく解像感も高いので、例えばドラムスのブラシによるストロークからはザラッとした質感が見えてくる。アコースティックギターやアコーディオンなど、生楽器のサウンドは弾き手の手グセまでも再現してしまうほどリアルで生っぽい。
マイケル・ジャクソンの「Love Never Felt So Good」ではバンドの一体感に注目した。ボーカルを中心に置いて、各楽器の定位も鮮明。立体的に空間を描く。何より音のつながりがスムーズで、曲全体が力強くグルーブする。
シングルBAタイプの中には、確かに低域の力不足が気になるイヤホンもあるが、本機の低域は空気の押し出し感までも伝わってくるほどどっしりと安定していて、芯が強い。タイトで無駄のないバネの力強さがある。この曲を聴いていると、ベースラインの安定感がクリアな中高域が描く繊細な情景を足下で支えながら、全体に緊張感あふれるエネルギッシュなサウンドに昇華させていることがよくわかる。エレキギターのカッティングは踊るように軽快で、ふくよかなストリングスとのマッチングも絶妙。編曲者が描きたかった情景が目の前に浮かんできた。
オーケストラを聴いてもやはり低域の底力と、中高域へと滑らかに続く一体感の気持ち良さが光る。弦楽器のハーモニーは肉厚で、ふくよかな響き成分が情緒的に広がる。フォルテッシモからピアニッシモまで、強弱のイメージもダイナミックに描き分ける。
小沼ようすけのギターは弦の弾けるような瑞々しさと、指板の上を滑る指先の細かいニュアンスまでもが忠実に蘇る。ギターの音像は前面に押し出してくるように存在感が強いが、音の立ち下がりが鋭く、すうっと爽やかな余韻を残しながら空気の中に消えていく。
バンドの距離感はコンパクトにまとまっているものの、楽器どうしのセパレーションが高く、自然な一体感から生まれるグルーブに包まれる。バスドラムのキックは空気を塊にして押し出してくるような迫力に満ちている。パーカッションは音の粒立ちがよく、それぞれ楽器の音が正確に描き分けられ、聴いていて本当に楽しい。
■スマホやiPhoneで試聴
単体ハイレゾオーディオプレーヤーのパワーがあれば本機の実力は十分に引き出せると思うが、インピーダンスが48Ωと若干高めに設計されているため、スマートフォンで再生する場合はアンプの力を借りてみるのもいいと思う。今回はXperia Z2にオーディオテクニカのヘッドホンアンプ「AT-PHA100」を接続して、ハイレゾ音源を聴いてみた。
オリジナル・ラヴのアルバム『ラヴァーマン』からタイトル曲の「ラヴァーマン」では、ボーカルの声から生命力が沸き立ってくるようだ。タイトなリズムを刻むベースラインは厚みがしっかりと乗っていながら、足回りは非常に俊敏。エレクトリックピアノやギターの音色には不要な歪みがなく、輪郭がクリアに澄み渡っているので、それぞれの音が重なり合うアンサンブルの中でも埋もれて見えなくなることがない。色んな音がまっすぐに伝わってくる。ドラムスの演奏にも非常にアグレッシブな力強さを感じる。
最後にiPhone 5sとオーディオテクニカのアンプをつないでApple Musicの音源も試聴してみた。余談だが7月1日よりApple Musicを使いはじめてから、「For You」には嗜好に合うアーティストや作品がちゃんと並ぶようになってきた。リストの中に今まで聴いたことがなかったアーティストを見つけて再生してみると、期待を超えるほど自分好みな作品に出会うこともある。
今回はApple Musicを始めてから出会った、中田ヤスタカがプロデュースするMEGのアルバム『MAVERICK』から「SECRET ADVENTURE」を試聴。打ち込みによるボールドなベースラインを起点に、立体的な空間の広がりをナチュラルに再現。潤いをたっぷりと含んだボーカルが、小気味良く刻まれるリズムの旋律に乗って軽やかに疾走する。
初のBA型でありながら、そのうえシングル構成という条件での音づくりは決して容易なものではなかっただろう。満を持して誕生したエレコムの“AQUA”シリーズは、充実した中高域から力強さも備える低域まで、音楽のエッセンスをバランス良く引き出す完成度の高いイヤホンだ。同タイプのイヤホンの中で、新しいリファレンスとして長く名を残すモデルになるかもしれない。
(山本 敦)