HOME > レビュー > パナソニックのハイレゾ対応ヘッドホン「RP-HD10」。そのサウンドは正統派ハイファイ志向

【特別企画】パナソニックの先進技術を搭載

パナソニックのハイレゾ対応ヘッドホン「RP-HD10」。そのサウンドは正統派ハイファイ志向

公開日 2015/09/01 12:00 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

空間表現や高域の再生力に優れる。
正統派ハイファイサウンドで音楽の楽しみを再発見


USB-DAC内蔵ヘッドホンアンプ、iPhoneダイレクト接続など、複数のデバイスとつなぎ、HD10の再生音を確認した。広帯域設計という予備知識がなくても、高域の充実したエネルギー感と伸びやかさは再生音の隅々から伝わってくる。特に、女声と男声が複雑なポリフォニーを構成する混声合唱、複雑な倍音を含む打楽器アンサンブルなど、高域成分を豊富に含む音源を聴くと、空間いっぱいに広がる余韻の浮遊感がとても心地よい。


可聴帯域を超える超高域成分が豊富なオーケストラ録音では、振動板の位置の近さを意識させない奥行き感があり、ステージ上の楽器の位置関係や立体的な余韻の広がりを実感させる。もちろんスピーカー再生とは音場の広がり具合が異なるが、密閉型のヘッドホンとしては音場の広がりはかなり大きく感じる。微小なレベルの空間情報や複雑な超高域成分を忠実に再現することが、音場の立体的な再現に貢献しているのだろう。

ベースやバスドラムなど低音楽器は、ボリューム感よりも立ち上がりの速さと音の勢いで実在感を引き出す傾向が強い。低音の迫力を優先するリスナーは、もう少し量感を加えたくなるかも知れないが、抜けが良く、空気を一気に押し出す低音が好みの音楽ファンなら、本機が鳴らす低音の質感の高さを歓迎するに違いない。

中高音から高音にかけての重要な帯域は、低音の速さと勢いに見合うエネルギーが乗り、密度の高い音で張り出し感も強い。だが、トランペットや打楽器の音色はシャープさだけでなく、柔らかさや潤いの表現も得意としている。広帯域ではあるが、高域寄りのバランスというわけではなく、突き刺さるような尖った高音に傾くこともない。


SACD化された『サムシン・エルス』を聴くと、マイルスのミュート付きトランペットの音色がニュアンスたっぷりによく歌い、キャノンボール・アダレイのサックスとの音色の対比が実に鮮やかだ。ミュートを外したトランペットもきつい音ではなく、むしろ本来の柔らかさをたたえていることに感心した。

ノラ・ジョーンズの『フィールズ・ライク・ホーム』をハイレゾ仕様で聴くと、ヴォーカルの柔らかい質感とギターなどリズムセクションの自然なアコースティック感が絶妙にバランスし、CDや圧縮音源との質感の違いを鮮明に聴き取ることができた。何気なく聴いていると普通の音に聞こえる曲でも、良質なマスタリングのハイレゾ音源であらためて聴き直すと、マスターに本来入っている音色や質感が蘇り、実は思いがけず良い音で録音されていた事実に気付くことがあるが、このアルバムもまさにそんな例のひとつだ。

RP-HD10はパナソニックから久々に登場した高級ヘッドホンとして、ハイレゾオーディオへの感度が高い音楽ファンを中心に静かな注目を集めている。「ハイレゾ対応」というフレーズで誤解されがちだが、そのサウンドは正統なハイファイ志向で、過剰な演出とは縁がない。デザインも音調も適度な落ち着きがあるが、端正なだけではなく、じっくり聴き込むと音楽の美味しいところをしっかり味わうことができる。そんな絶妙なバランスと音作りのさじ加減を味わうことが、本機を使いこなす楽しみになるはずだ。



PANASONIC RP-HD10 ¥OPEN

・型式:密閉型ダイナミックステレオヘッドホン
・ドライバーユニット:直径50mm
・インピーダンス:18Ω
・音圧感度:92dB/mW
・最大入力:1,500mW(*IEC 国際電気標準会議 規格による測定値)
・再生周波数帯域:4Hz〜50kHz
・コード長さ:約1.2m/約3.0m(着脱コード)
・プラグ:[1.2m着脱コード]L型ステレオミニプラグ(直径3.5mm、24K金メッキ)
     [3m着脱コード]ストレート型ステレオミニプラグ(直径3.5mm、24K金メッキ)
・質量:約340g(1.2m着脱コード含む)/約320g(コード除く)



(山之内 正)

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE