"ハイレゾ対応"新SOLID BASSを聴く(1)
オーディオテクニカ「ATH-WS1100」レビュー:量感だけではない「情報量志向」の低音再生力を獲得
■質感重視になった圧倒的な重低音と“ハイレゾ対応”の中高域を両立
早速「ATH-WS1100」のサウンドを体験してみると、一聴して「音の良いヘッドホンだな」と素直に感じる。
Daft Punkの『Random Access Memories』でエレクトロミュージックを聴き込むと、非常に質感に優れた重低音再生を味わうことができる。これまでの”SOLID BASS”シリーズのエネルギッシュな低音とはまた違った、非常に締まりがあると同時に低音域まで見通しのいい低音なのだ。これは単なる量感重視の低音ではなく「情報量志向の低音再生」とでも表現したいサウンド。打ち込み系やクラブミュージックを聴き込むには最適だと言えるだろう。
もちろん、そのサウンドの優れた点は低域だけではない。従来シリーズから中高域の微細音の再現力が増し、オーディオテクニカらしい、空間の見通しの良さを発揮している。電子音楽ではシンバルの繊細な立ち上がりの表現に驚かされた。
本機の力を余すところなく実感できたのが、宇多田ヒカルの『Automatic』だ。勢いと情報量を備えたビートが打ち込まれる鋭さを出すと同時に、ボーカルの鮮明さ、空間めいっぱいに広がるコーラスの音場感といったハイレゾならではの情報量を味わうことができる。低域から高域まで気持ちよく描き出してくれるチューニングだ。
中高域の解像感も相当あるので、ポップスとの相性もいい。カーペンターズの『トップ・オブ・ザ・ワールド』のハイレゾ版を聴いても、歌声のセパレーションの明瞭さと声のニュアンスの機微、楽曲全体を見通せる表現力は、いわゆる“重低音志向ヘッドホン”ときいて想像する音とは天と地ほど違う素晴らしさだ。もちろんベースラインはタイトで、ポップス再生としてはベストと言えるだろう。
“重低音志向”と“ハイレゾ対応”は別ベクトルの音づくりが必要かと思いきや、「ATH-WS1100」は低音のみならず中高域の再現力も従来以上に引き上げた、会心作とも言える出来映え。従来からの”SOLID BASS”ファンにとどまらず、ハイレゾファンにもぜひ試してもらいたい逸品だ。