【特別企画】
オーディオテクニカの渾身作。革新のアートモニター「ATH-A2000Z」
【SPEC】● 型式:密閉ダイナミック型 ●ドライバー口径:53mm ● 再生周波数特性:5〜45,000Hz ● インピーダンス:44Ω ● ケーブルの長さ:3.0m(OFC-6N+OFC) ●質量:約294g(ケーブル含まず)
VGPライフスタイル分科会で、評論家からオール5の圧倒的評価を受けたヘッドホンがある。それがオーディオテクニカが誇る「アートモニター」の最新作「ATH-A2000Z」だ。見た目こそ従来モデルと変わらないように思えるかもしれないが、その中身は革新に満ちている。実際にそのサウンドを体験した評論家各氏が受賞理由を語る。
羊の皮を被ったオオカミ!
ヘッドホン史に残る傑作
VGPライフスタイル分科会 座長
鴻池賢三
詳しい説明を受ける前に試聴を行ったが、研ぎ澄まされた空間に音の粒が踊るような衝撃を受けた。過去のオーディオテクニカ製品、そして「アートモニター」シリーズと比較しても、また一段ステージを登った印象だ。従来同様のデザインテイストと密閉構造が故に、音質面でも順当進化を予想していたこともあり、良い意味で期待を裏切られた格好だ。理由を聞けばそれもそのはず、内部構造はもちろん、ドライバーの刷新も行ったとのことで合点がいった。羊の皮を被ったオオカミ的な傑作で、ヘッドホンの歴史に残る銘機となりそうだ。
ハイレゾ音源と親和性の高い
自然な空間表現に注目
VGPライフスタイル分科会 審査員
岩井 喬
前モデル「ATH-A2000X」はモニター由来の非常に切れ味のよいサウンドを聴かせてくれたが、本機では磁気回路のパーメンジュールをドイツ製のものに変え、ダイアフラムにも超硬質特殊コーティングを施し、朗らかで音離れの良いサウンドに進化させた。密閉型であることを感じさせない自然な空間表現はハイレゾ音源と親和性が高く、全帯域で制動の良いスムーズな音質を楽しめる。前モデル譲りの解像度の高さに加え、ナチュラルかつ有機的な艶やかさも併せ持つ、絶妙なバランスのサウンドである。まさに高級密閉型の新定番といえる完成度を持つといえよう。
繊細かつ緻密な高域と
豊かな音場に息を呑む
VGPライフスタイル分科会 審査員
海上 忍
ドライバーユニットを含むすべてを新設計した「アートモニター」シリーズの旗艦機は、繊細かつ緻密な高域と豊かな音場が鮮烈な印象を残す。日本の職人が手作りしたφ53mmのドライバーユニットは磁気回路に使うドイツ製パーメンジュールの効果か、音の粒立ちよく反応も俊敏でワンランク上の描写力を実感させる。チタニウム製ハウジングもダテではなく、特許技術D.A.D.S.構造を用いた二重構造ハウジングにより締まった低域を聴かせてくれる。各帯域のつながりも自然で、作り手のこだわりと熱意が感じられる逸品だ。
全帯域にわたり高音質
新世代フラグシップ
VGPライフスタイル分科会 審査員
折原一也
オーディオテクニカ伝統のハイエンドに君臨する53mmドライバーユニットモデルだが、そのサウンドは伝統の音質と共に"ハイレゾ"対応の革新を融合させた新次元を伝えるものだ。ドイツ製のパーメンジュールや純鉄ヨークの採用がもたらしたのは大口径ユニットであると同時に高域までレスポンスのいいワイドレンジ再生。余裕ある音場再生という伝統と共に、現代的な音へと変貌させたチューニングは匠の技と呼ぶほかない。新生オーディオテクニカのフラッグシップの到達点を、是非自分の耳で確かめてみてほしい。
サウンド面で大きな進化
音源本来の響きを引き出す
VGPライフスタイル分科会 専任審査員
高橋 敦
このシリーズはコンセプトもフォーマットも変えることなく、サウンドやルックスを一変させることなく進化を続けてきた。まずそのことを大きく評価したい。その姿勢がシリーズ愛好者との信頼関係を生んできたのだと思う。その上でだが、ドライバーを初めて刷新した今回、サウンド面での進化は大きい。デッドであるからこそライブ、とでも言えばよいか。無駄な響きを出さないデッドな再生だからこそ、音像のフォーカスのすばらしさに加え、音源本来のライブな響きや空間性も引き出してくれる。見事だ。でも「Z」の次の型番、どうするの?
心地よくも饒舌なサウンド
絶妙なグルーヴ感も再現
VGPライフスタイル分科会 専任審査員
野村ケンジ
数多あるオーディオテクニカ製ヘッドホンのなかでも、センターポジションに位置する「アートモニター」シリーズの新フラグシップだけに、そのサウンドは気になるところ。期待を大にして聴いてみたのだが、それに応えてくれる素晴らしい出来映え。音色がピュアで、同時に1音1音がしっかりと存在感を主張する、心地よくも饒舌なサウンドが堪能できる。高域は自然な伸びやかさを持ち、ピアノの音がとても美しく感じられる。低域はフォーカスがよく、超絶技巧のプレーヤーが刻む絶妙なグルーヴ感をしっかりと拾い上げてくれる。素晴らしい。
この記事は「月刊 AV REVIEW 12月号」から転載しています。詳しくはこちら