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【特別企画】

ジャパンプレミアム4K・CX800が4K映像の新しい世界を創る

公開日 2015/11/17 12:00 山之内 正
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緻密な映像と鮮やかな色彩、そして強化されたサウンドシステムを搭載するパナソニック・ビエラCX800シリーズ。同社BDレコーダーであるDMR-UBZ1の登場でCX800のHDR対応がいよいよ真価を発揮する時が来た。ジャパンプレミアム4Kの魅力を山之内 正がレポートする。

UBZ1との組み合わせで最先端の視聴環境が完成する

CX800シリーズはビエラの主力モデルというポジションに加え、もう一つの重要な役割を担っている。Ultra HD Blu-ray(以下UHD BD)の再生に対応したDIGA最新モデル「DMR-UBZ1」と組み合わせることで、最先端の高画質映像を楽しむ環境が完成するのだ。UHD BDの真価をフルに引き出すためには、4Kの高精細描写に加えて、HDRへの対応がカギになるわけだが、ビエラのなかでHDRに対応するのはいまのところCX800シリーズのみ。いち早くUHD BDの導入を狙うAVファンなら、同シリーズの存在が大いに気になるはずだ。実際にはHDRのアドバンテージが具体的に見え始めるまで、もう少しだけ時間がかかりそうだが、限られた映像素材を見ただけでも、ダイナミックレンジの余裕が生む映像表現は実に雄弁で、次元が異なるリアリティを味わうことができる。


CX800シリーズがHDR対応を実現できた背景には、高輝度&広色域パネルやダイナミックレンジリマスターなど、いくつかの重要な要素がある。エリア制御を導入したIPS型パネルは、視野角によるコントラストの低下が少なく、輝度の高さを画質に活かしやすい。絶対的な黒表現では直下型バックライトを採用するAX900シリーズが優位に立つが、HDRではそれに加えて階調表現のなめらかさと広い色域が要求されるため、同等の輝度と色域性能を有するCX800シリーズは次世代規格を担うのにふさわしい製品と言っていいだろう。ヘキサクロマドライブを投入したCX800の色域は、AX900同様、BT.2020規格に対応する。


ダイナミックレンジリマスターは、撮影時に圧縮された高輝度領域の階調情報を復元する技術で、高輝度パネルとの組み合わせで真価を発揮する。いずれもHDRの長所を引き出す上で大きな役割を演じる技術だ。なお、CX800シリーズは最新ファームウェアにバージョンアップすることによってHDRへの対応を果たし、更新を終えるとメニューにHDR関連項目が追加される。


CX800のシネマプロは作品の階調を巧みに引き出す

DMR-UBZ1と組み合わせてHDR映像を見る前に、TH -60CX800の基本性能をBDで確認しておこう。再生機はBZT9600、映像モードは「シネマプロ」を選択した。

『ゴーン・ガール』の映像表現は、まさに4Kテレビで見るべき密度の高さをたたえている。考え抜かれた構図と緻密なカメラワークはどこにも隙や弛緩がなく、何気ない日常を映しているように見える場面ですら、濃密な緊張に満ちている。すべての場面で映像のテンションを支えているのが柔らかさと深さが両立した階調の豊かさで、特に屋内とナイトシーンの立体的な描写は見事と言うしかない。その立体感を引き出す重要な要素の一つが、誇張や強調を配した自然な光のコントロールだ。柔らかく回り込む自然光の美しさはもちろんのこと、フラットな照明は意識して避け、立体感を引き出すことに成功している。

CX800のシネマプロは、この作品から本来の階調の柔らかさを引き出し、明暗の対比が極端に偏ることがない。ダイナミックレンジリマスターをオンにすれば、窓越しの風景や照明器具のハイライトが目に見えて明るくなるが、その設定をあえて選ぶ必要はないと感じた。色の階調の豊かさで描いた自然な立体感を引き出すのは、むしろ同機能をオフにしたシネマプロのデフォルト設定の方で、SDRの枠のなかでバランスの良い映像を堪能することができる。4Kテレビといえども、ソースの中心を占めるフルHD&SDRの映像バランスを追い込むことは不可欠だが、その点でCX800は安心して映像に集中できる良さがあると感じた。


色彩のリアルで正確な再現。微妙な色合いを描き分ける

次に、本機のコントラスト性能を見極めるために『ゼロ・グラビティ』の冒頭部分を見る。この作品では、前述のダイナミックレンジリマスターをオンにし、輝度の高い部分の質感描写の改善にも挑戦した。スペースシャトルの船体や宇宙服は、日差しが当たった部分と影の部分の対比を際立たせるだけではなく、金属や樹脂の質感を正確に再現することによって、本来の立体感が浮かび上がる。

暗部の階調情報も豊かだ。宇宙空間のなかに遠ざかるライアンの身体がシルエットとして背景の闇に埋もれず、宇宙服に包まれたまま回転していく様子を最後まで目で追うことができる。最暗部の微妙な明暗の差を忠実に描き出さなければたんなるシルエットになってしまうのだが、CX800で見ると宇宙服の僅かな反射がギリギリ見えている。

ダイナミックレンジリマスターの効果は全編を通して明らかだが、この機能をオンにしても背景の宇宙空間は深みのある黒をたたえたままなので、無限大の遠近感が失われることはない。また、画面の正面から外れた位置から見ても黒浮きは最小限で、コントラストの低下はほとんど気にならない。IPS型パネルの長所は画面が大きいほど実感しやすく、60型の本機ではその効果が確実に伝わる。

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』では、カメラの移動ごとにめまぐるしく変化する照明の色調を忠実に描き分けられるかどうかが見どころだ。

CX800は細部の再現性だけでなく、色彩の正確な再現でもリアリティを引き出すことに成功している。特に、舞台裏や通路など暗い場面でも色が抜けず、色調が変化しにくいことにあらためて感心させられた。衣装の赤や黄色は鮮やかに再現しても、淡色の壁や調度類の色が正確に出にくい製品が少なくないのだが、CX800はそうした微妙な色合いをていねいに描き分ける力がある。

CX800の音響面での工夫として、アンプの強化とパッシブラジエーターの搭載が目を引く。従来機に比べて中低域の厚みが増したことで、『バードマン あるいは(無知がもらたす予期せぬ奇跡)』の台詞に本来の厚みが蘇り、ドラムソロのタイトな低音が緊張を高めて劇の進行を引き締めている。



CX800は4KとHDRの魅力を伝える重要な使者だ

最後にUBZ1と組み合わせてHDRの映像を確認した。UBZ1から4K信号を12bitでCX800に送り出す。パナソニックがHDRで製作したデモンストレーション用映像『岐阜の匠』は、和傘や提灯など、日本の伝統技法に焦点を合わせた映像で、柔らかい素材感と微妙な光が織りなす繊細な質感が見どころである。特に、灯の入った提灯など、微妙な明暗差で立体感を引き出す映像が美しく、ピークを潰さずなめらかにテクスチャーを描写する点にHDRの長所を実感することができる。刀の焼き入れを撮影した映像では、赤熱した鋼が暗い背景のなかに立体的に浮かび上がるが、これは肉眼での見え方にかなり近いと感じた。SDRでは明るい部分の明暗差をここまで自然に再現することは難しく、暗い背景のなかの階調も潰れてしまうはずだ。

UBZ1の購入特典として提供される予定の邦画作品は、くせのない自然なトーンの再現と柔らかい階調の描写に注目したい。輪郭を強めて立体感を演出するのではなく、階調を細部までなめらかに再現することで現実に近い3次元の立体感を引き出すというアプローチが読み取れる。精細感と階調表現が高い次元に上がると、輪郭で描く手法はもはやメインストリームになりえないのだ。ディテールの情報量は4Kにふさわしく余裕が感じられるが、暗い場面でもノイズが目立ちにくく、すっきりとした見通しの良さを確保する。

UHD BDによって4Kの精細感とHDRの豊かな階調表現を家庭で楽しめる日が間近に迫った。精細度の伸長で進化を進めてきたディスプレイは、これからはコントラストの拡大という、もう一つの本質的な画質改善で新たな進化のステップを刻む。解像度とは別のポイントから映像表現の可能性を高めることが期待され、映画の楽しみ方にも影響を与える可能性が高い。CX800とUBZ1は次世代への進化を見据え、4KとHDRのポテンシャルの高さをAVファンに伝える重要な役割を担っているのだ。ビエラの進化の新しい担い手として、CX800への期待は大きい。




取材協力 清水 浩文氏/パナソニック株式会社 テレビ事業部 電気設計部
ビエラ技術者に聞いた
ジャパンプレミアム4K・CX800シリーズの魅力

聞き手:AVレビュー編集部

−−ビエラならではのアドバンテージを教えて下さい。
清水 我々が目指すゴールは、原画に忠実であること。幸いパナソニックは、入り口であるカメラから出口であるテレビまでをフルカバーしており、またパナソニックハリウッド研究所においては映画制作の本場から直に制作に携わる方々の知見を得ています。制作者の意図をありのまま再現できることが、ビエラの強みだと思います。


−−“色”の再現には一際注力してきた印象があります。
清水 忠実な色の再現は、プラズマ方式の時代から大切にしてきたポイントです。液晶方式の場合、光漏れの影響で、低輝度時の色再現が難しくなるのですが、ビエラは高精度な色補正を行うことで、豊かな色彩を維持することができます。


−−CX800はHDRに対応したモデルですね。
清水 HDRは、Ultra HD Blu-rayの大きな特徴であり、また視聴者が疑似リアル体験できるパワーを持っています。明部の煌めきや豊富な色はもちろん、時代劇などの着物の質感など、暗部階調の見え方も大きく異なります。HDRになることで、制作者の意図や表現力が更に広がると思いますし、HDR対応テレビはそれをリアルに体験するためには欠かせないアイテムとなるはずです。

−−AVマニアにお薦めの機能はありますか?
清水 「TV Remote 2」というアプリを使うことで、グラフで視覚的にIREのガンマやRGB明暗部の色などを調整することができます。また別途機材を使えば、自動でキャリブレーションなどもできます。是非マニアの方には使いこなして頂きたいです。

−−最後に一言お願いします。
清水 日本人の感性にこだわり、忠実で繊細な色を再現できるプレミアム4Kビエラが、HDRに対応することで、高輝度の色まで再現できるようになりました。DMR-UBZ1という世界初※のUltra HD Blu-ray機と組み合わせて、新次元の映像を楽しんで下さい。

※市販のブルーレイディスクレコーダーとして。2015年11月13日発売、パナソニック調べ。



TH-60CX800N ¥OPEN
●画面サイズ:60型(1317W×741Hmm/対角1511mm) ●画素数:3840×2160 ●パネル:IPS方式 ●バックライト:LED ●パネル駆動:倍速 ●デジタルチューナー:地上・BS・110度CS×3 ●スピーカー:ウーファー×2、スコーカー×2 ●音声実用最大出力:40W ●主な入出力端子:HDMI入力×3、D4入力×1、コンポジット映像入力×1、アナログ音声LR入力×1、光デジタル音声出力×1、USB×3、LAN×1、SDカード×1 ●消費電力(待機時):302W(約0.3W) ●年間消費電力量:198kWh/年 ●外形寸法:1347W×827H×318Dmm ●質量:約26.0kg 

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