あの人気モデルが再登場?! AKGの密閉型新ヘッドホン「K550MKII」をレビュー
全帯域を堅実に制御し綺麗に整えた、ベーシックなバランスのよさが持ち味
さてサウンドについてだが、最初に述べたようにこちらも元モデルの印象を変えてしまうものではない。大口径密閉型!という言葉のインパクトに反してバランスとしては低域を特に目立たせることもなく、全帯域を堅実に制御し綺麗に整えた、ベーシックなバランスのよさが持ち味だ。またそのおかげか空間にもすっきりとした余裕が確保されており、旧来の密閉型らしからぬ、あるいは近年のハイエンド密閉型らしい、豊かな空間表現も得ている。
今回は据え置きでヘッドホンアンプはBURSON AUDIO「Soloist SL」(こちらの「MK2」も日本導入が決まったそうだ)という環境をメインにチェック。クールでシャープ、それでいて確実な制動力を備えるといった印象のアンプだ。
このヘッドホンとアンプの組み合わせは、互いの良さを引き出す。現代的なピアノトリオ、上原ひろみさんの「ALIVE」を聴くと、シンバルは薄刃で鋭利で透明感があり、シュパッ!という斬れっぷりが素晴らしい。ピアノもアタックのカチッとしたところがよい具合に立って、複雑で細かなフレーズの見えやすさからこちらも音色の透明感まで、楽しみたいところを的確に届けてくれる。ドラムスもスパンッと抜けるし音の収まりも速い。
以前に旧モデルのレビューで岩井喬氏がクラシック音源での印象として「ティンパニは皮のアタック感中心でローエンドを控えめに表現」と記していたが、ロック系のドラム(この曲は便宜上の区分としてはジャズだがドラムスのサイモン・フィリップス氏はかなりロックのフィーリングで叩いていると感じる)でもそういった印象を感じられる。読んでいてすでにお気付きかもしれないが「パ」とか「ッ」を使う擬音を多用したくなるような、そういうキレっぷりだ。
反面、Robert Glasper Experiment「I Stand Alone」では、この曲に対してはもっとローが膨らんでくれた方がよいとは感じさせられた。しかし高域側はヒップホップ系の荒いローファイの質感の出し方がよい感じに強めで気持ちよい。
なお、今回の組み合わせだと女性ボーカルでシャープな傾向の声質や歌い方、あるいはスネアドラムのザシュッとしたスナッピーの成分が目立つ場面では、その刺さり具合や硬さが好みではない方もいるかもしれない。しかしそこは、他の環境ではさほど気にならないのではないかと思う。例えばiPhone 6直結で聴いてみたときは全体的に音が少し緩んで硬さは弱まった。
とにもかくにも好評モデルの“実質上の継続”と言えるだろう。既存ユーザーは「やっぱりこれいいよね!」と納得し、買い損ねていたユーザーも「よかったこれからも買える!」と安堵してほしい。