男性も身につけやすいブラックモデル登場
【レビュー】上質な黒を纏うイヤホン、ゼンハイザー「MOMENTUM In-Ear Black Chrome」
MOMENTUM In-Ear Black Chromeの実物を前にすると、単に「赤から黒一色になった」の一言では片付けられない筐体の美しさに目を奪われる。
滑らかな曲線を描く筐体はクローム仕上げで、光の当たる角度に応じて美しい光沢を放つ。そのため名称上は“ブラッククローム”だが黒に見える箇所はなく、鈍い輝きを放つグレー・メタリックのような色あいになっている。また、同心円型のヘアライン仕上げが施されたボトムプレートには、光沢を帯びたゼンハイザーの「S」ロゴが刻印され、存在感を発揮している。
ケーブルは、ブラックモデルではレッドとブラックと2色使いのデザインだったが、ブラック・クロームモデルではブラックで統一。ケーブルの途中には3ボタン式のリモコンを搭載し、音楽再生と音量のコントロールもできる仕様になっている。
イヤホンの内部構造にはダイナミック型ドライバー1基に独自のトランスデューサーを採用。内部にステンレス製のアコースティックパイプを配しているのが構造上の特徴だ。周波数特性は15Hz〜22kHzまでカバーしている。
■新規の“ハイレゾ”音源を中心に様々な楽曲で音質をチェック
さて、MOMENTUM In-Earの音質についてはブラックモデルで一度レビューしているので、今回はプレイヤーを「AK Jr」に変更し、ハイレゾ楽曲を中心に聴いていく。
まず、三代目 J Soul Brothersの『RYUSEI』(48kHz/24bit)を聴くと、こみ上げてくるような重低音の締まりある肉厚なビートの刻みと、それに埋もれることのない男性ボーカルの描き分けが見事。音数が多く現代的な楽曲の爽快な“ノリ”を迫力で誤魔化すことなく、すべて空間中にレイアウトされた音情報として真正面から鳴らし切る。その再生能力はイヤホンというより、大口径ヘッドホンに近いものがある。
クラシカルな楽曲はどうか。日本フィルハーモニー交響楽団の『ハイレゾ・ダイナミックシネマ』(192kHz/24bit)より、『スター・ウォーズ メイン・タイトル』を聴いても、冒頭の音が密集している中から、トランペットとトロンボーンの勇壮な響きがしなやかに伸びる様から余裕が伝わる。コントラバスが刻むリズム音もステージの上で存在感を放つ。ヴァイオリンのメロディは押し出しの明瞭さと演奏のハーモニーとで姿を変え、楽曲の意図を表現できていたのには感心する。
同じく『スター・ウォーズ 帝国の逆襲 帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ』でも、重低音によって奏でられる弦の重なりのボリューム巻と共に、ドラムの刻む音がステージ奥から存在感を放つ。フルートが奏でるメロディの立ち上がりもタイトだ。
いずれの楽曲もハイレゾ音質とCD音質を聴き比べてみたが、その音の表情とステージ上の空間の作りの違いを見事に引き出していた。
最新のハイレゾ楽曲『ガールズ&パンツァー 劇場版 オリジナルサウンドトラック』(96kHz/24bit)の『劇場版・戦車道行進曲!パンツァーフォー!』を聞いても、劇場で流れる大編成BGMのスケール感が実によく栄える。勇壮な行進曲の曲調の中でも、特にドラムの音の刻みのシャープさが際立つ。編成に加わったストリングスの音が埋もれず、曲調に応じて低音の量的なボリュームも再現できているのは、現代的な楽曲にも対処可能な本機ならではだ。
◇
最近のハイレゾ音源で聴き込んだMOMENTUM In-Ear Black Chromeは、オーバーヘッド型のMOMENTUMにも通じるパワフルな低音を備えた現代的な音楽向きのイヤホンだ。しかしポテンシャルにはそれ以上のものがあり、クラシック、映画劇伴のようなオーケストラの編成ではヘッドホンを彷彿とさせるスケール感を発揮する。
iPhoneなどのスマートフォンと組み合わせることが多いであろうMOMENTUM In-Ear Black Chromeだが、実は“ハイレゾ”でも相当な実力を引き出せるイヤホンだ。そのデザインによるファッション性のみならず、通勤・通学の電車のなかでハイレゾ対応のオーディオ・プレーヤーと組み合わせても、想像以上の実力を発揮してくれることだろう。
(折原一也)
滑らかな曲線を描く筐体はクローム仕上げで、光の当たる角度に応じて美しい光沢を放つ。そのため名称上は“ブラッククローム”だが黒に見える箇所はなく、鈍い輝きを放つグレー・メタリックのような色あいになっている。また、同心円型のヘアライン仕上げが施されたボトムプレートには、光沢を帯びたゼンハイザーの「S」ロゴが刻印され、存在感を発揮している。
ケーブルは、ブラックモデルではレッドとブラックと2色使いのデザインだったが、ブラック・クロームモデルではブラックで統一。ケーブルの途中には3ボタン式のリモコンを搭載し、音楽再生と音量のコントロールもできる仕様になっている。
イヤホンの内部構造にはダイナミック型ドライバー1基に独自のトランスデューサーを採用。内部にステンレス製のアコースティックパイプを配しているのが構造上の特徴だ。周波数特性は15Hz〜22kHzまでカバーしている。
■新規の“ハイレゾ”音源を中心に様々な楽曲で音質をチェック
さて、MOMENTUM In-Earの音質についてはブラックモデルで一度レビューしているので、今回はプレイヤーを「AK Jr」に変更し、ハイレゾ楽曲を中心に聴いていく。
まず、三代目 J Soul Brothersの『RYUSEI』(48kHz/24bit)を聴くと、こみ上げてくるような重低音の締まりある肉厚なビートの刻みと、それに埋もれることのない男性ボーカルの描き分けが見事。音数が多く現代的な楽曲の爽快な“ノリ”を迫力で誤魔化すことなく、すべて空間中にレイアウトされた音情報として真正面から鳴らし切る。その再生能力はイヤホンというより、大口径ヘッドホンに近いものがある。
クラシカルな楽曲はどうか。日本フィルハーモニー交響楽団の『ハイレゾ・ダイナミックシネマ』(192kHz/24bit)より、『スター・ウォーズ メイン・タイトル』を聴いても、冒頭の音が密集している中から、トランペットとトロンボーンの勇壮な響きがしなやかに伸びる様から余裕が伝わる。コントラバスが刻むリズム音もステージの上で存在感を放つ。ヴァイオリンのメロディは押し出しの明瞭さと演奏のハーモニーとで姿を変え、楽曲の意図を表現できていたのには感心する。
同じく『スター・ウォーズ 帝国の逆襲 帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ』でも、重低音によって奏でられる弦の重なりのボリューム巻と共に、ドラムの刻む音がステージ奥から存在感を放つ。フルートが奏でるメロディの立ち上がりもタイトだ。
いずれの楽曲もハイレゾ音質とCD音質を聴き比べてみたが、その音の表情とステージ上の空間の作りの違いを見事に引き出していた。
最新のハイレゾ楽曲『ガールズ&パンツァー 劇場版 オリジナルサウンドトラック』(96kHz/24bit)の『劇場版・戦車道行進曲!パンツァーフォー!』を聞いても、劇場で流れる大編成BGMのスケール感が実によく栄える。勇壮な行進曲の曲調の中でも、特にドラムの音の刻みのシャープさが際立つ。編成に加わったストリングスの音が埋もれず、曲調に応じて低音の量的なボリュームも再現できているのは、現代的な楽曲にも対処可能な本機ならではだ。
最近のハイレゾ音源で聴き込んだMOMENTUM In-Ear Black Chromeは、オーバーヘッド型のMOMENTUMにも通じるパワフルな低音を備えた現代的な音楽向きのイヤホンだ。しかしポテンシャルにはそれ以上のものがあり、クラシック、映画劇伴のようなオーケストラの編成ではヘッドホンを彷彿とさせるスケール感を発揮する。
iPhoneなどのスマートフォンと組み合わせることが多いであろうMOMENTUM In-Ear Black Chromeだが、実は“ハイレゾ”でも相当な実力を引き出せるイヤホンだ。そのデザインによるファッション性のみならず、通勤・通学の電車のなかでハイレゾ対応のオーディオ・プレーヤーと組み合わせても、想像以上の実力を発揮してくれることだろう。
(折原一也)