岩井喬がレポート
SHURE「KSE1500」レビュー:ダイナミックでもBAでも味わえない音を実現した“究極のイヤホン”
耐久性向上に注力しポータブルでの使用を実現
コンデンサー型のメリットは、振動膜の軽さが導く立ち上がり/立下がりの素早い反応の高さに加え、微細な信号まで追随できること。さらにひとつの発音ユニットだけで低域から高域まで広帯域をカバーし、位相干渉もない原音に忠実で正確なサウンド再生を実現できることにある。
KSE1500ではこうしたコンデンサー型ならでは良さを実現するべく、構造的な弱点であった湿度やホコリへの対策も万全を期した。加えてアンプユニットとの接続は堅牢性、耐久性の高いLEMO製6ピンコネクターを用いるほか、ケーブルそのものもケブラーを用いて強化を施し、導体間の距離を均一かつ適度に離す独自の丸型構造を取り入れ、低静電容量・高絶縁性を追求。高いバイアス電圧に対する安全性も考慮し、ハウジング側ではケーブル着脱ができないようになっている。
アンプはアナログバイパスモードでの活用がオススメ
ここからは実際にKSE1500を手にしてみた感想について触れていこう。
アンプユニットの操作は、電源ボタンと押し込むことでスイッチとしても機能するコントロールノブだけで行うシンプルな構造だ。慣れるまでは幾分時間を要すかもしれないが、プロ機にも通じる簡便で即応性の高いインターフェースに仕上がっており、使い勝手は悪くない。
試聴はPCをソースとしたUSB入力のサウンドと、Astell&Kern「AK380」やソニー「PCM-D100」をアナログ接続し、96kHz/24bit以上のハイレゾ音源のチェックも行うことにした。このアナログ接続時に便利な機能が、ポータブル機器では見かけない“PAD(パッド)”だ。いわゆる入力レベルの減衰用スイッチであるが、ラインレベルクラスの出力を持つ製品の中には0dBでは歪むことがある。AK380やPCM-D100のライン出力では-10dBがちょうど良い感触であった。
リスナーによっては、デジタル入力が96kHzまでしか対応していないことが気になるかも知れない。ハイレゾ配信のメインとなるレゾリューション=音楽制作現場での標準的かつ実用的なレゾリューションが96kHz/24bitであるため、目くじらを立てるほど“対応レートが低すぎる”とは感じないが、物足りなさは否めないところだ。またEQなどの処理を生かすにはアナログ入力も96kHz/24bitにA/D変換されるため、ハイレゾ音源のストレートさを生かせなくなる点も気になるところではある。
とはいえ、技術進歩の速いデジタルの世界で、対応レゾリューションが日進月歩していることも事実であり、常に“高いレート”を追い求めてもソフトウェアで刷新できるものでない以上、いずれは“低いレート”の認識になってしまう。デジタル入力は携帯端末用として捉え、手軽にデジタルの純度の良さを味わうために用いるのが良いのかもしれない。
それよりも本機の場合は、ハイレゾ対応DAPの強力なアナログ出力を繋いだアナログバイパスモードでの活用を推奨したい。AKシリーズのようにデュアルDAC仕様のDAPも増えているので、その強力なD/A変換能力を生かすことで、よりコンデンサー型の持つフラットでレスポンスの良い広帯域サウンドを存分に堪能できることだろう。