<山本敦のAV進化論 第85回>
新ロスレス技術『MQA』がいよいよ始動。非MQAハイレゾ音源と聴き比べ!
44.1kHz/24bitのMQA音源と、CD品質の音源を比べて聴くと、音の明瞭度や印象が明らかに違う。
弦楽器の響きがふくよかさを増し、特にチェロの低域が深く沈み込む。音の輪郭は一段と彫りが深くなってアンサンブルの距離感が鮮明に見えるようになる。奥行き方向の見晴らしがとてもクリアだ。バイオリンの高域は生き生きとして艶めきだし、長音にはふっくらとした柔らかさが加わった。
同じ楽曲を今度はリニアPCM 96kHz/24bit(ステレオ)の音源と比べて聴いてみても、セパレーションの良さや弦のしなやかな表現力は、MQA音源の方が上であるように感じられる。
音の立ち上がりと立ち下がりのスピード感が俊敏で、描き出される音楽のリアリティが自然と腑に落ちた。まさにスタジオの録音風景が目の前に浮かんでくるような体験だ。
トロンハイム・ソロイスツ楽団とニーダロス大聖堂少女合唱団による「MAGNIFICAT/Et misericordia」(キム・アンドレ・アルネセン作曲)でも、MQAとCD音質の音源を聴き比べてみる。
女性ソプラノの声の生々しさであったり、情報の密度に大きな差が生まれる。声の質感のきめ細かさは96kHz/24bit(ステレオ)音源のそれに引けを取らない。パイプオルガンは倍音成分が豊かで余韻も分厚く広がる。
MQA音源の再生中は、「Prime Headphone Amp」のフロントパネルにある一番右側のLEDランプがブルーやグリーンに点灯する。ブルーに光ると「MQA STUDIO」、グリーンに光ると通常の「MQA」音楽ファイルを再生していることを示している。
「MQA STUDIO」と「MQA」のファイルにどんな差があるのか、実はその点についてはまだ詳しいことがよく分かっていない。
ただ、昨年にボブ・スチュアート氏にインタビューした時点では、「MQA STUDIO」が上位に位置づけられ、録音スタジオやアーティストから、製作段階の全プロセスにおいて「Authenticated」されたよりシビアなMQA作品に与えられるものであるという説明を受けた。新録のMQA作品を中心に「MQA STUDIO」のタイトルが増えていくのではないだろうか。
一方でMQAのエンコードプロセスで製作されたファイルであれば、いずれも通常の「MQA」対応の音源として認められることになる。例えば既存の録音作品をMQA化したものなどがこれに当たるものになると思われる。
■今年は対応ハード&ソフトが一気に増える期待も
メリディアン・オーディオの「Prime Headphone Amp」は販売価格が20万円を超える、なかなかに高価な製品だが、MQA体験の入門機にはスティックタイプのヘッドホンアンプ「Explorer 2」もある。
またパイオニアやオンキヨーのDAPも、発表時にファームウェア更新によるMQA対応を宣言しているので、それぞれポータブル環境でもMQAによるハイレゾ再生が楽しめるプレーヤーとして今後の動向に注目したい。
またメリディアン以外のオーディオメーカーからMQA対応のUSB-DACなどコンポーネントが国内に導入される可能性も見えてきた。音源については日本国内の音楽配信サイトもプラットフォームの準備を着々と進めているようだ。
MQAの再生環境を整えるなら、そろそろ準備を始めてもいい頃かもしれない。