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【特別企画】評論家が特長や画質傾向を徹底解説

東芝“レグザ”10年目に誕生したIPS採用4Kテレビ「Z700X」の魅力を大橋伸太郎が徹底チェック

公開日 2016/06/07 11:00 大橋伸太郎
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具体的には原作にない色彩と階調、立体性を与えられチャーリー・ブラウンの顔はより丸く、スヌーピーには濃やかな毛並が与えられたが、液晶テレビにとってこれが難物。描画に細心の注意を注ぎ、ことにキャラクターの顔にビットを振り当てリアルな丸みを出しているが、グラデーションが階調段差になりやすいのだ。


また膨大な色数でモノクロ線画→カラーの違和感を消し去っているが、色彩の多様さが仇になり液晶方式で表現しきれない場合がある。細部で映像が破綻したら本作の着想は失敗である。

東芝技術陣は本作の難度に注目しZ700Xのチューニングに役立てた。階調段差が現れやすい低彩部(チャーリー・ブラウンの顔)で妨害信号発生が抑えられなめらかな立体感が生まれている。本機の色域はDCI P3をほぼフルカバーするので本作本来の色彩設計がそっくり再現されている。これはマスモニとの比較で確認することが出来る。長年のピーナッツファンでも納得するだろう。

次に4K UHD BDの定番「エクソダス:神と王」。Z20Xで見た本作はコントラストとピーク輝度1000nitの伸びを活かし、ラムセスの甲冑の金のむなしい輝きやエジプトの過酷な自然描写に感銘を受けたが、Z700Xで見る本作はむしろ映像の緻密さと画面に貼り付いたが如き映像の安定感に目を奪われる。4Kソースの入力検証が進み「4KレグザエンジンHDR PRO」のS/Nが向上したことが分かる。

本作のCG が描いた首都テーベはあくまでイマジネーションの産物だ。しかしCG描画の再現精度が高まった結果、誇大妄想的建築物が虚しく立ち並ぶ首都の奥行きが増し、幻想の都市のはずが実景、そう記録映画で見たナチス独裁時代のベルリンと数十世紀の時空を超えオーバーラップし、二十世紀に繰り返される迫害と抑圧という本作の現代的メッセージが浮かび上がる。


2K BDはHDMIを分配してZ20Xと同時比較視聴した。筆者が最近視聴に使う日本映画「海街diary」。是枝裕和監督こだわりのコダック35mmフィルムシューティング、4Kデジタルスキャンだ。

銀塩フィルムの長所の一つは暗部の凋密な情報量(階調、色彩)だ。フィルムのラチチュード(露出寛容度)の特性を逆手に取った映像表現、例えば終盤、広瀬すずが四姉妹の暮す古民家の縁側で夕涼みするシーンが見られて興味深い。

Z20Xで見ると、輝度パワーとコントラストのダイナミックレンジでZ700Xを上回ることが一目瞭然。落ち着いたナロウなコントラスト感を狙った本作で力を持て余していることがありありと分かる。一方のZ700Xは黒を過度に引き込まずデイライトの明るい光線描写にまぶしさでなく穏やかな温もりがある心地よいバランス。フィルムシューティングした映画のナイーブな撮影の狙いにぴたりと寄り添っているのはZ700Xだ。

いまシーズンたけなわのプロ野球に喩えるなら4K UHD BD開幕投手を務める二つのレグザ。パネルの差異があるが映像エンジンの最適チューニングが二つの魅力的なテレビを生んだ。大胆果敢な剛球派Z20Xに対し冷静沈着なコントロールのZ700Xと見事な対照を成す。

映像の密度感、ノイズや曇りのない端正で清澄な映像という点で個人的にはZ700Xのほうによりレグザらしさを感じる。レグザvsレグザの競演に興味が尽きない。

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