[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第161回】高橋敦の“超”個人的ベスト5で「ポタフェス2016夏inアキバ」を振り返る
【第3位】逆に遮音しない?イヤモニ「AM PRO」シリーズ
Westoneのブースでは、「アンビエント型」モニターイヤホンを名乗る「AM PRO」シリーズに注目。
というのも、実は取材直前にイベントステージでWestoneプレゼンツTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND frat.幸田夢波さんのライブが行われており、そこでこのシリーズを着用していた幸田さんが「周りの会話もお客さんの声も普通に聞こえてくる!」と驚いていたことが印象に残っていたのだ。
周りの音も聞こえるイヤホンを作るというだけなら簡単な話だ。とにかく遮音性を下げればよい。
しかしステージで使うイヤーモニターとなると、ただ遮音性を下げただけでは楽器の音が周りの音に埋もれてしまい、モニターとして役に立たなくなる。またライブ中に外れてしまったりしないようにと考えると、遮音性は別としても結局カナル型でケーブルを耳にかけるスタイルにはせざるを得ない。イヤモニとしての機能を確保しつつ遮音性を下げるというのは、なかなかの難題なのだ。
そこでWestoneが開発したのが「SLEDテクノロジー」と「TRUオーディオフィルター」。公開されている情報から察するに、外部から取り込む音をアコースティックな音響フィルターに通し、楽器の邪魔になる帯域は減衰させつつ、聞こえてきてほしい声などはできるだけ通過させる。そういった技術のようだ。
何にせよ、楽器の音をしっかり届けるモニターとしての役割を堅持しつつ、そしてイヤモニスタイルの形のまま、外の音もミュージシャンの耳に届けることを実現した。そういうわけだ。
実際に幸田さんはテクノボーイズの複雑な曲を初披露で何の支障も感じさせずに歌っていた。モニターとしての音の届き方に問題がないことの証だ。また幸田さんは客席の声に応えていたりもしたので、外部の音で聴きたい音、ファンの声などはちゃんと透過されていることもわかった。筆者がブースで試聴した印象も同じく、カナル型とは思えないレベルの透過性を実感でき、周りの会話が普通に聞こえてきていた。
会場がアリーナクラスとかにまで大きくなると、ステージ上と客席で音のタイミングに時差が生まれるので、そうなるとこのシリーズでも厳しいだろう。しかしミュージシャンの大半はそんな巨大会場の複雑なシステムでライブをするわけではない。ステージとファンとの距離を縮めたいミュージシャンの方は要注目だ。
音楽リスナーにも「遮音性はいらないというか、外の音が混じってくる方が気分がよい」という方もいらっしゃるだろうから、そういう方も要注目だ。
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