<山本敦のAV進化論 第114回>
対決!「Xperia XZ」V.S.「iPhone 7」カメラ&オーディオ機能の実力は?
iPhoneはよりアタックのインパクトが力強く、沈み込みも深い。特に中低域の量感はXperia XZを凌いでおり、音圧ではiPhone 7に軍配があがる。エッジの効いたメリハリのあるサウンドだ。
ロック系の楽曲では、Xperia XZが見晴らしの良いサウンドステージを広げる。アレンジの詳細が良く見えるので、アレンジに凝ったJ-ROCKやJ-POPが分析的に楽しめた。ボーカリストの声に浸りたい楽曲にもよくマッチしそう。
iPhone 7のスピード感と力強さもロックと相性が良いが、Xperia XZとはまた違った世界観を描いてくるので面白い。高域のニュアンスがもうちょっと引き出せると全体のバランスが良くなりそうだが、密度の濃いサウンドがiPhoneシリーズならではの持ち味。アメリカのヒットチューンをガツンと伝えてくる勘所をしっかりと押さえている。楽しいサウンドだ。
Xperia XZは32GBの内蔵ストレージのほかに、microSDカードを外部記憶媒体として使える。ハイレゾ音源は1ファイルあたりのサイズが大きいので有り難い仕様なのだが、Xperia Z4からSDカードスロットとSIMカードスロットのトレイが一体化されてしまった。筆者のようにハイレゾ音源を入れたSDカードを頻繁に出し入れする場合、これが意外に使いづらい。
カードを差し替えるたびに本体の再起動が必要になるのは仕方がないとしても、出し入れを繰り返していたためかSIMカードにキズが付いてしまい、Xperia Z5 Premiumは使い続けて1年間の間に2度SIMカードにスクラッチ傷が付いたため通信ができなくなり、カード交換を余儀なくされた。
他社のスマホも一体型スロットを採用するものが増えてきてしまったので、もはや流れに逆らうことは難しいのかもしれないが、本体内蔵ストレージの容量を大きくすることも検討してもらいたい。
■ストリーミング系音楽配信をよりいい音で楽しむ有力な選択肢
今回はXperia XZとiPhone 7と並べながらエンターテインメント機能の周辺を重点的にチェックしてみた。Xperiaシリーズのカメラ機能は情報を集めると、かえってマニアックなものに感じてしまうかもしれないが、実は基本的にはユーザー本位につくられている。きれいな写真と動画を簡単に撮れるスマホと捉えるべきだし、実際にそこが人気を獲得している理由でもある。
マニュアルモードはユーザーの個性を味付けできるだけでなく、今回のモデルから加わったマニュアルフォーカス機能のように、スマホで撮れる写真の自由度を広げてくれるオプション的な機能としてぜひ活用してみてほしい。使い方も簡単だ。動画の5軸手ブレ補正については言うまでもなく、ユーザーにとって圧倒的なメリットがある。
静止画・動画の画づくりは日本人のテイストに合わせた透明感のあるナチュラルな色彩感が特長だ。ハンドリングの面でもオートフォーカスの精度・スピードをともに徹底して磨き上げている。
一点、暗い場所でも明るい写真や動画が撮れるのは魅力的なのだが、時おり画面が明るくなりすぎることもある。自動露出補正(AE)の安定感と精度をよりいっそう高めていくことが次のチューニングの方向性ではないだろうか。
音楽再生では、USBオーディオについてはAndroid OSの仕様による制約を多少受けるものの、イヤホンリスニングでは過去のXperia Zシリーズと比べても着実なステップアップを感じさせる充実の出来映えだ。
同時期に発売されるハイレゾスマホの中には、LGエレクトロニクスのグローバルモデル「V20」をベースにしたドコモ版「V20 PRO」、au版「isai Beat」も並ぶ。本機はESS TechnologyのDACチップ「ES9218」を搭載して、より精度の高いノイズ低減技術を搭載したことも話題を呼んでいる。ソニーには独自のハイレゾ対応フルデジタルアンプ「S-Master HX」のアセットがあるので、ぜひこれをXperiaシリーズにも展開して、音の良いスマホ同士で切磋琢磨してほしい。
XperiaシリーズはプリインストールされているミュージックアプリからSpotifyに素速く飛べるメニューを設けている。またウォークマンにも搭載する、音楽ソースをハイレゾ相当の音質にアップコンバートする「DSEE HX」がXperia XZにも採用されている。
機能のオン・オフを切り替えながら比べてみると、ボーカルや生楽器の艶、輪郭のシャープネスが引き立って奥行き方向の見晴らしが一段と明快になった。音楽ストリーミング系のソースもよりいい音で楽しむならXperia XZが有力な選択肢になると言うこともできそうだ。