アナログ入力とは別方向の最高峰サウンド
シュアのコンデンサー型イヤホン「KSE1500」のデジタル入力を、「AK380」で試す
■KSE1500のデジタル入力の概要
今回の記事ではKSE1500とAKシリーズの旗艦機「AK380」を組み合わせた音質をチェックしつつ、4バンドパラメトリックEQの活用方法も紹介したい。だがその前に、KSE1500のデジタル入力について簡単に確認しておく。
本機はDACチップにシーラス・ロジック製「CS4272」を採用する。対応スペックは96kHz/24bitまでと昨今のハイレゾ対応製品の中では控えめだが、192kHz/24bitなどの音源はプレーヤーでコンバートすれば再生できる。同梱のMicro B-LightningケーブルやMicro B-OTGケーブルを用いて、iOSやAndroid端末と直接のデジタル接続を行うことも可能だ。
■Astell&Kern「AK380」と組み合わせてデジタル入力の音を検証
USBデジタル入力のサウンドを確認する前に、まずはAK380とのアナログ接続でのサウンドを予め確認してみた。基本的にドライかつソリッドな描写性を軸とした、クリアで付帯感のない音質である。コンデンサー型ならではの振動膜の軽さゆえに実現する、微細なレベルの信号に至るまで音の立ち上がり/立下りの早い、音離れの良いすっきりとしたサウンドだ。あえて1つの発音ユニットにこだわり、低域から高域までの広帯域をカバーすることで位相干渉をなくし、アキュレートに元信号を再現してくれる、ニュートラルさを機軸としたプロ機由来のパフォーマンスを実現している。
これをUSBデジタル接続に切り替えると、アナログ接続時ほどドライな感触がなく、倍音の艶を適度に備えたバランス重視のサウンドになる。しかしながら、色づけ感は抑えられ、本機らしいナチュラル指向のトーンがあくまでベースにあるので安心できる。
デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング)では、芯の太いエレキギターのリフを歯切れよく描きつつ、リズム隊の低域も高密度かつ滑らかに表現。ボーカルは口元の張りが滑らかで、音像の重心を的確に捉えて安定感がある。
オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー』(CDリッピング)のピアノは、厚みも備えた滑らかなハーモニクスを響かせる。アタックのキレも良く、余韻もすっきり収束する。トライアングルの響きも澄みきっており、ウッドベースは弦の艶やかなたわみと胴鳴りを自然に表現する。アナログ接続と比べると、より有機的な響きに満ちたジャズトリオを味わうことができた。
飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)は、管弦楽器の艶や張りの良さがより分かりやすくなる。余韻の響きも深く、階調も細やかだ。各楽器の芯は太く滑らか。ローエンドの響きはリッチだが、解像感高くコントロールされる。緻密で繊細なコンデンサー型ならではメリットが、USBデジタル接続でも良い方向に働いている。
あえて変換再生となる192kHz/24bitの音源も聴いた。まずKIX『Blow My Fuse』〜Don’t Close Your Eyesでは、シンセサイザーの高域方向の音抜けが良く、ベース部の締まった押し出し感と好対照。バラードならではの静けさと熱量のこもったボーカルは、きつさのないスムーズな描写となる。エレキギターは重心の低い響きや、クリアなリヴァーブの余韻が美しい。
同じく80年代のハイレゾ化音源からThe Cars『Heartbeat City』〜You Might Think(192kHz/24bit)も聴いてみたが、ボーカルの明瞭さと、クリーントーンギターの煌びやかな旋律が、S/Nの優れた音場へ展開。リズム隊のアタックも密度が伴ってバランスが良い。ディストーションギターのザクザクとしたリフも、軽やかで耳馴染み良い。
こうしてKSE1500のUSBデジタル入力のサウンドを聴いてみると、アナログ入力とは異なる魅力に気付かされる。以前の記事ではアナログバイパスモードでの活用を推奨したいと書いたが、AK380のような優れたプレーヤーをデジタルトランスポートとして用いることができるようになれば事情は異なってくると言える。
■デジタル入力で4バンドパラメトリックEQを活用する
最後に4バンドパラメトリックEQでの音質カスタマイズも試してみた。パラメトリックEQはどの周波数を調整するか(周波数指定)、その調整の変化量(ゲイン)、メインターゲットの周波数前後のどの程度の範囲まで調整するか(Q値)という3つの要素をコントロールする、より専門性の高いトーンイコライザーだ。