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アナログ入力とは別方向の最高峰サウンド

シュアのコンデンサー型イヤホン「KSE1500」のデジタル入力を、「AK380」で試す

公開日 2016/11/29 10:40 岩井 喬
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KS1500では、その調整できるポイントが低域から高域まで4か所(=4バンド)設けられている。調整する際には「EQ」内の「USER DEFINED 1」に好みのカーブを保存しておくのだが、この時、「USER DEFINED 2」に全く調整していないバイパス状態のもの(デフォルトでバイパスと同じ状態になっている)を振り分けておく。こうすれば、「USER DEFINED 1」で色々と音質を調整して、瞬時に「USER DEFINED 2」へ切り替えてその変化度合いを確認する、といった使い方が可能だ。

これは自身でカスタマイズしたEQやプリセットを含め、瞬時にバイパスして確かめる機能がないための策である。可能であれば今後のアップデートで、調整値とデフォルトの比較ができるようにするなど使い勝手の部分を改善すれば、この高機能なEQがさらに活きるはずだ。

さて肝心の「USER DEFINED 1」に保存した筆者のEQだが、4バンド各々を以下のように設定してみた。

・ポイント1:100Hz/+1dB → キックドラムやベースのアタック感を強調
・ポイント2:200Hz/+3dB/帯域幅:ミディアム(中)→ エレキギターのリッチ感向上
・ポイント3:1.6kHz/+2dB/帯域幅:ワイド(広)→ ボーカル帯域のボトムを強化
・ポイント4:10kHz/+3dB → ピアノや弦楽器、シンバルなどの輝き感を強調


なお、曲調によっては、ポイント1のゲインを+2dBに増やすとよりアグレッシブさが出てくる。基本的にロックやポップスに最適なメリハリの利いたゴージャスサウンドを目指してみた。このEQでKIX『Blow My Fuse』〜Don’t Close Your Eyesを聴いてみるとシンセのエッジ感がよりブライトになり、スネアのアタックもキレ味良く明瞭に抜けてくる。ディストーションギターやベースのどっしりとした逞しさも感じられ、重厚なロックバンドらしさが出てきた。

The Cars『Heartbeat City』〜You Might Thinkではギターのリフのエッジ感やベースの押し出しが増してくる。ボーカルも太さがあり、軽快なだけではない全体のパワフルさに結びつく変化を得られた。

ちなみにクラシックやジャズ音源でも試してみたところ、楽器の艶感や音像の密度が増す。KSE1500は元々ニュートラルバランスな音作りが特長となっているだけに、こうしたカスタムEQを積極的に取り入れて自分好みのバランスにチューニングすることができるのだ。

音に作為的なところがない、リアリティの高さが本来のKSE1500の持ち味ではあるが、EQを含めた機能面をサポートできるデジタル接続によってさらなる密閉型コンデンサーシステムの奥深さ、楽しさを実感できることだろう。



繰り返しになるが、接続できるプレーヤーの選択肢が増えたことで、アナログ入力に比べるとこれまでやや存在感の薄かったKSE1500のUSBデジタル入力の音に、改めてスポットライトが当たることになるはずだ。また、デジタル接続なら優れたEQ機能をより変換の過程を少なくして使うことができる。コンデンサーイヤホンとして圧倒的なポテンシャルを秘めたKSE1500をいかに鳴らすのか、デジタル出力はその幅をさらに広げてくれるはずだ。


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