【特別企画】USB-DACも搭載、幅広いソースに対応
もはやHi-Fiオーディオの域? エレコムのハイレゾ対応BTスピーカー“Mezzoforte”を聴く
信号の入力からアンプによる増幅まで、フルデジタル処理というのも興味深い。USB入力信号はもちろん、Bluetooth経由の入力信号はQualcomm社の「CSR8675」で受け取り、LDACの24bit信号も劣化なくLR用とサブウーファー用のデジタルアンプへ送られる。D/AおよびA/D変換処理を経る一般的なD級と呼ばれるデジタルアンプに対し、「フルデジタルアンプ」はより高純度で鮮度の高い音質が期待できるのだ。
スピーカーは2.1chを基本に、パッシブラジエーターを加えた構成。L/Rを担うスピーカードライバーはフルレンジで、軽量なCCAWコイルやカプトン・ボビンを採用するなど、ワイドレンジでHi-Res対応の高解像度を達成している。
ウーファードライバーは限られたスペースで高い磁束密度を得るため、マグネットを角形にすることで大型化を実現。背面に備えられたパッシブラジエーターはデュアルで、無理なく豊かな低域の再現を目指したものだ。
■USB/Bluetooth接続をそれぞれ視聴。「ワイド」なサウンドに驚き
まずは本機の特徴であるUSB接続を、ユーザー数の多いであろうiPhoneを接続して試聴した。接続には別売のカメラアダプター(Lightning端子をUSB TypeAに変換)が必要だが、その先は本機に付属しているUSB TypeA→Micro-Bケーブルで接続でき、機器同士の認識から音出しまで難なく行えた。ちなみにハイレゾ音源の再生には、エレコムが無償で提供する「ELECOM Hi-Res Music Player」も利用でき、追加コストが必要ないのも嬉しい。
肝心の音質は、コンパクトなボディーに似合わず、なにかと「ワイド」で驚かされる。筆者がハイレゾ試聴でリファレンスとしているSusan Wongの『Have You Ever Seen The Rain(96kHz/24bit)』では、空気感をもたらす繊細で小さな音もしっかり拾い上げて再現し、音場の広がりがワイドだ。左右のスピーカーが気持ち外振りに固定されているのも功を奏しているようだ。
彼女の可憐でありつつもボディーを感じさせるヴォーカルも、粒立ち良くテクスチャー感豊かに楽しめる。フルレンジドライバーを搭載し、ソプラノに相当する300Hz〜1kHzの帯域で位相の乱れを感じさせないスムーズな表現が、特に女性ヴォーカルと相性が良いようだ。
また、低域の再現力もかなり低い帯域まで鳴りが良く、深みや厚みを感じるとともにセットトータルの周波数レンジをワイドにしているのもポイント。Billy Joelの『Travelin’ Prayer(96kHz/24bit)』は、小気味良いスネアドラムのソロで静かに始まってベースが加わり、曲の進行に伴って楽器が増えて賑やかになって行く様子が聴きどころ。小音量ではベースがやや控え目だが、適度にボリュームを上げるとバランスが整って弾むようなリズムが躍動感を生む。
低域も高解像度で音程と音色の変化を的確に掴め、きちんとコントロールされている感覚。量感重視の海外ブランド製品とは異なる傾向で、日本の音楽ファンに支持されそうだ。独立したデジタルアンプと小型ながら高磁束のドライバーで生み出されるサブウーファーのパワー感、デュアル構成で余裕のあるパッシブラジエーターのコンビネーションも上手く働いているようだ。