【特別企画】シリーズを超えた組み合わせテストも
オーディオテクニカの新VMカートリッジ、「針交換」できる魅力とその活用法を徹底解説
■500ボディに最上位「VMN60SLC」(無垢特殊ラインコンタクト針)を組み合わせる
次は最高峰の無垢特殊ラインコンタクト針「VMN60SLC」を500シリーズのボディへ装着した。シバタ針では「やっぱり結構な差があるなぁ」と感じざるを得なかったのだが、この組み合わせではクラシックの最初の1音で目を見開いた。確かに音は若干は緩くなるし、あの天空から大地を見晴るかすような広大さを同じように再現するとはいかないのだが、しかしまるでシバタ針を聴くような厚みをこの無垢特殊ラインコンタクト針が身にまとったではないか。好みは分かれるだろうが、「これはこれで好きだ」という人も少なからずおられよう。
もし手元にVM760SLCと500番台のボディがあったら、私も時々はこの世界観を楽しむことであろう。ジャズも同じく、少しだけ加わる緩さが絶妙のスパイスとなり、ビッグバンドの大迫力と、リスナーへ緊張を強いることのないサウンド的な余裕を獲得したように感じさせる。
もちろん、峻厳な解像度や楽器1本ずつの立ち上がりの鋭さなどは700ボディの方が1枚も2枚も上手だが、それでも腹へストンと落ちる説得力をこのサウンドが有しているのは間違いない。ポップスも巧まざる落ち着きがリスニングルームにリラックスした空気を漂わせ、長く聴いていたくなる表現が耳に快い。500番台で時に聴かれた伴奏にボーカルが埋没しがちなところは、もうこうなると完全に払拭されてしまっている。このたっぷりした溜めの深さは、何度でも聴きたくなる性質のものだ。
■レギュラーモデルにも欲しい! 700ボディ+「VMN30EN」(無垢楕円針)
こうなると、次は700番台のボディに500番台の交換針を装着したらどんな表現になるかががぜん気になる。というわけで、今度は無垢楕円針の「VMN30EN」から取り付けてみた。クラシックはもともとパチパチ音の多い盤なのだが、それでもやや耳へ届く成分が多めかなと思う。しかし、VM530ENで聴けた音の質感とは明らかに違うガシッと締まったサウンドに、これがアルミダイカストの剛性からもたらされていることを雄弁に物語る。
レンジが広く帯域バランスも良く、これはレギュラーで存在していてもかなり人気を集めるモデルになるのではないかと思う。ジャズは適度に華やかで、パワフルかつハイスピードで、これも決して悪くない。無垢マイクロリニア針の少しモニター調に振ったサウンドと比べると、こちらの方がより音楽を楽しく聴かせる傾向とも言えるだろう。わずかに線が細く感じることがあるが、これは先にシバタ針などを聴いてしまっているからだ。
ポップスは、楕円針特有の“強い主張”の少なさが良い方向に向かっている。かなり突っ込んだハイファイを聴かせながら、耳への当たりがよく、音楽をストレートに楽しめる印象だ。一方で純正のVM530ENよりも音がグッと締まった分、オーソドックスなハイファイへ近づいたようにも感じる。繰り返しになるが、やはりこれはレギュラーで存在していても決しておかしくない組み合わせだ。
■700ボディ+「VMN20EB」(接合楕円針)
お次は接合楕円針「VMN20EB」を装着してみた。クラシックはやはり音場が少し見晴らしを減じるが、それでも500ボディで聴いていた時のややハイ上がりなところなどは十分に抑えられ、非常にバランス良く大スケールの音楽を聴くことができる。無垢針と比べればいくらか表現力は後退するが、交換針だけで7,000円も価格がちがうのだから、ある意味当然といってよい。
しかし、これは決して「廉価な接合針カートリッジ」の音ではない。試してみる価値は大いにあるといえよう。ジャズはわずかだが音に野趣が加わり、これが非常に好ましいサウンド傾向と聴けた。過剰なくらいに艶がつき、しかしそれがホーンセクション中心のビッグバンドを実に輝かしく鳴らす。ホーン・ジャズ用として1本そろえておいてもよいのではないかと思わせるサウンドである。ポップスはささやくようなボーカルが大迫力の伴奏へ埋もれがちになるが、でもこの迫力と声の質感は、決して廉価なカートリッジを思わせるものではない。「予算の都合で接合針にしよう」という消極的なセレクションではなく、積極的に接合針を選ぶだけの価値がある組み合わせだと感じた。
次は最高峰の無垢特殊ラインコンタクト針「VMN60SLC」を500シリーズのボディへ装着した。シバタ針では「やっぱり結構な差があるなぁ」と感じざるを得なかったのだが、この組み合わせではクラシックの最初の1音で目を見開いた。確かに音は若干は緩くなるし、あの天空から大地を見晴るかすような広大さを同じように再現するとはいかないのだが、しかしまるでシバタ針を聴くような厚みをこの無垢特殊ラインコンタクト針が身にまとったではないか。好みは分かれるだろうが、「これはこれで好きだ」という人も少なからずおられよう。
もし手元にVM760SLCと500番台のボディがあったら、私も時々はこの世界観を楽しむことであろう。ジャズも同じく、少しだけ加わる緩さが絶妙のスパイスとなり、ビッグバンドの大迫力と、リスナーへ緊張を強いることのないサウンド的な余裕を獲得したように感じさせる。
もちろん、峻厳な解像度や楽器1本ずつの立ち上がりの鋭さなどは700ボディの方が1枚も2枚も上手だが、それでも腹へストンと落ちる説得力をこのサウンドが有しているのは間違いない。ポップスも巧まざる落ち着きがリスニングルームにリラックスした空気を漂わせ、長く聴いていたくなる表現が耳に快い。500番台で時に聴かれた伴奏にボーカルが埋没しがちなところは、もうこうなると完全に払拭されてしまっている。このたっぷりした溜めの深さは、何度でも聴きたくなる性質のものだ。
■レギュラーモデルにも欲しい! 700ボディ+「VMN30EN」(無垢楕円針)
こうなると、次は700番台のボディに500番台の交換針を装着したらどんな表現になるかががぜん気になる。というわけで、今度は無垢楕円針の「VMN30EN」から取り付けてみた。クラシックはもともとパチパチ音の多い盤なのだが、それでもやや耳へ届く成分が多めかなと思う。しかし、VM530ENで聴けた音の質感とは明らかに違うガシッと締まったサウンドに、これがアルミダイカストの剛性からもたらされていることを雄弁に物語る。
レンジが広く帯域バランスも良く、これはレギュラーで存在していてもかなり人気を集めるモデルになるのではないかと思う。ジャズは適度に華やかで、パワフルかつハイスピードで、これも決して悪くない。無垢マイクロリニア針の少しモニター調に振ったサウンドと比べると、こちらの方がより音楽を楽しく聴かせる傾向とも言えるだろう。わずかに線が細く感じることがあるが、これは先にシバタ針などを聴いてしまっているからだ。
ポップスは、楕円針特有の“強い主張”の少なさが良い方向に向かっている。かなり突っ込んだハイファイを聴かせながら、耳への当たりがよく、音楽をストレートに楽しめる印象だ。一方で純正のVM530ENよりも音がグッと締まった分、オーソドックスなハイファイへ近づいたようにも感じる。繰り返しになるが、やはりこれはレギュラーで存在していても決しておかしくない組み合わせだ。
■700ボディ+「VMN20EB」(接合楕円針)
お次は接合楕円針「VMN20EB」を装着してみた。クラシックはやはり音場が少し見晴らしを減じるが、それでも500ボディで聴いていた時のややハイ上がりなところなどは十分に抑えられ、非常にバランス良く大スケールの音楽を聴くことができる。無垢針と比べればいくらか表現力は後退するが、交換針だけで7,000円も価格がちがうのだから、ある意味当然といってよい。
しかし、これは決して「廉価な接合針カートリッジ」の音ではない。試してみる価値は大いにあるといえよう。ジャズはわずかだが音に野趣が加わり、これが非常に好ましいサウンド傾向と聴けた。過剰なくらいに艶がつき、しかしそれがホーンセクション中心のビッグバンドを実に輝かしく鳴らす。ホーン・ジャズ用として1本そろえておいてもよいのではないかと思わせるサウンドである。ポップスはささやくようなボーカルが大迫力の伴奏へ埋もれがちになるが、でもこの迫力と声の質感は、決して廉価なカートリッジを思わせるものではない。「予算の都合で接合針にしよう」という消極的なセレクションではなく、積極的に接合針を選ぶだけの価値がある組み合わせだと感じた。