[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第178回】ソフトフォーム系イヤーピースに期待の新星「Crystal Tips」登場!各社ソフピと徹底比較
■そもそもソフトフォームの特徴は?
まずはソフトフォームイヤーピース全般の特徴を復習しておこう。
ユニバーサルタイプのカナル型イヤホンのイヤーピースは、素材の面からの分類では、厳密には各社各モデルでそれぞれ微妙には異なるが、ざっくりと「シリコン」「ソフトフォーム」と呼ばれる二つが主流だ。
「シリコン」はいわゆるゴム的な感触の素材で、形状がしっかりとしている。「ソフトフォーム」は、ゴムとスポンジの中間くらいのイメージというか、文房具店やコンビニで販売されている耳栓を想像してもらえばそれに近い。
音質面においての両者の特徴としては、一般論としては「ソフトフォーム素材は音がこもりがち」と言われがち。逆に「いやシリコンの方が音こもるよ」という意見は、特定の製品や特定の組み合わせでの事例は別として、一般論としては見聞きしたことがない気がする。特徴を利用してチューニングすることもできるので常に欠点というわけではないが、あまり好まれるものではない。
一方で装着感と遮音性においては、ソフトフォームに有利さを感じるユーザーが多いだろう。ソフトフォームは柔らかな素材が適度な弾力で耳の中に内側から広がるようにして優しくフィットする。また、大きな面積でフィットするので装着の負担が少なく、遮音性も高いというわけだ。
しかしソフトフォームがシリコンに対して決定的に不利なのは耐久性だ。シリコンは「なくさなければ使い続けられる」くらいの感覚でいけるが、ソフトフォームは「基本消耗品」だ。弾力、形状復元力の低下や表面のひび割れなど、ヘタってくる。すると当然、音質も装着感も遮音性もベストではなくなってくる。使用頻度にもよるが、数ヶ月単位での交換を見込んでおくのが妥当だろう。
今回の主役側であるソフトフォームの立場からまとめると、特徴は以下のとおりだ。
●強みは装着感と遮音性
●弱みは音のこもりやすさと耐久性の低さ
そのため、「装着感と遮音性という強みを維持さらには向上させつつ、音のこもりやすさと耐久性の低さという弱みを低減する」ことがソフトフォームイヤーピース開発のポイントであり、実際に各社が改良を重ねてきている部分となる。
■今回の主役、Crystal Tipsをチェック
「装着感と遮音性という強みを維持、さらには向上させつつ、音のこもりやすさと耐久性の低さという弱みを低減することがソフトフォームイヤーピースの課題」と、ソフトフォームタイプ全般のポイントを確認した上で、今回の主役である新製品「Crystal Tips」をチェックしてみよう。まずは技術面から見ていく。
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