[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第178回】ソフトフォーム系イヤーピースに期待の新星「Crystal Tips」登場!各社ソフピと徹底比較
一口に「ソフトフォーム素材」と言ってもその素材自体にも違いがある。コーティングなどの仕上げがされていないと思われる、裏(というか下というか)の面から見ると、その素材の違いがわかりやすい。
素材の成分などもそもそも違うのだろうが、見てわかるところとしては、フォーム素材=発泡素材としてのその発泡の度合が異なっている。発泡少なめなWestoneとShureは、フォーム系の中ではしっかりとした強めの手応えだ。
■サウンド&フィットの確認
それでは実際に、Westone「W80」とShure「SE846」に装着してサウンドとフィット感をチェックしてみよう。
なお同じ「細軸」でも、Westoneは均一に細くShureは中間に凸があり、その凸の部分の他はWestone方がやや細い。そのためWestoneにも対応する一般的な細軸イヤーピースはきつめに作られており、両社に対応するが、Shure純正イヤーピースはWestoneに装着するとやや緩い場合もある。
イヤピのサイズが違うと緩くなかったり、シリコンだと緩くなかったりもするのだが、今回試したフォームタイプの大サイズではその緩さが気になったため、両社イヤーピースの入れ替えという組み合わせはテストから除外しておいた。
ただし、イヤーピースは結局ユーザーの耳との相性の良し悪しの問題がほとんどなので、どうしても「参考までに」という話になってしまう。くどくど詳細に違いを述べても「個人差の範疇」に埋もれてしまうだから、実寸サイズと同じくこちらも、一覧性重視の表でさっぱりとお届けしよう。
●サウンド
●フィット(一般)
●フィット(筆者個人)
●遮音性
の4項目にコメントを付けているが、特に留意してほしいのはグレーアウトしてある「フィット(筆者個人)」だ。
当然だが、僕の耳との相性が良いイヤーピースは、音も装着感も遮音性も僕自身としては好印象になる。逆に僕の耳との相性は良くないイヤーピースは、僕の印象としては宜しくない。かといって「このイヤピは僕の耳との相性はいまいちだけれど、合う人にはもっとこういう風に聴こえて高い評価になる“はずだ”」という推測で評価を改変するわけにもいかない。
なので「フィット(筆者個人)」という項目を設けた。こちらの項目を参照し、「このイヤピは筆者の耳との相性が良いから他の項目も高めの評価になっているのかな?」とか「こっちのイヤピはこいつの耳にはあまりフィットしないみたいだけど、フィットする人が試したらもっといい評価になるんじゃないかな?」とか想像しながら他の項目の評価を読んでもらえればと思う。
で、その表への付記というか総評としては……
●Crystal Tips(SL)
ソフトフォームらしいソフトな装着感と、ソフトフォームらしからぬスッキリとした音!
●Comply T100
装着感も音もソフト!BGM的に長時間聴く用途に合いそう!
●Comply TS-100
T100同様のソフトさもありつつ、より普通のバランスにチューニングされていて、普通に使いやすい!
●Westone TRUE-FIT(Black)(Orange)
形とサイズが合うものを選べば、基本的にナチュラルでリファレンス的なバランス!
●Shure Black Foam(L)
バランス良好!加えて声高に主張せず、自然な深みを備える低域が好印象!
今回の主役である「Crystal Tips」は、「ソフトフォームタイプのイヤーピースの中ではかなりスッキリとした音」という印象だ。なので「これまでに試したソフトフォームは音がスッキリしなくて物足りなかった…」と感じていた方も、改めて試してみる価値があると思う。
自分の耳に合うものを見つけられればソフトフォームタイプのイヤーピースは、カスタムイヤーモニターには及ばないものの相当な遮音性と、カスタムイヤーモニターよりもそれこそソフトで疲れにくい装着感を得られる。
見つけるまでに苦労するかもしれないし、見つけられたとしても消耗品。しかしユニバーサルイヤホンユーザーにとって、それでも探し、試す価値のあるアイテムだ。「Crystal Tips」の登場でその選択肢が増え、各自にフィットするものを見つけられる可能性が高まったことは喜ばしい。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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