【特別企画】「画質を大きく左右するのは映像エンジンの完成度」
東芝初の4K有機ELテレビ「レグザ X910」高画質化の理由 − 評論家・山之内正が徹底解説
3次元処理の参照フレーム数を従来の3フレームから5フレーム(現フレーム+前後2フレーム)に増やした点はZ20Xと同様だが、今回は新たに、通常のTV番組(60フレーム)、映画(24フレーム)、CM(30フレーム)など映像信号の種類を判別してそれぞれ最適な参照フレームを選び、適切なノイズリダクションと複数フレーム超解像処理を行っている。
ノイズが一掃され、動きに伴う不自然な挙動もほとんど気にならない。特に65型の大画面でライヴ番組など、地デジ番組ではこれまで体験したことのなかった臨場感に浸ることができる。
たとえ4K有機ELテレビでも、実際に見る時間が一番長いのは地デジ放送というケースも多いと思うが、そんな用途でも確実に画質の良さを実感できる意味は大きい。
BD再生時など、映画の24p信号を入力した場合は、「熟成超解像」が適用される。「熟成」と呼ぶのは、通常は1回だけ適用する超解像及びノイズリダクション処理を24p信号に限って2回行うことに理由がある。
1回目の超解像処理では、おもに4Kへのアップコンバート処理を行い、2回目の処理ではその4K信号に対して超解像とNRの処理をもう一度適用することによって、ノイズ抑制効果をさらに高め、精細度を向上させる効果が期待できる。特にBDが映像ソースの中心を占めるという映画ファンにとっては、この熟成超解像がもたらす恩恵はきわめて大きい。
有機ELパネルは優れた応答性に長所がある半面、その応答の良さのために液晶では埋もれていたノイズ成分が浮かび上がってくるという課題があり、特に暗部ではランダムなノイズとなってディテール情報をマスクする場合がある。
熟成超解像やアダプティブフレーム超解像は、そうした有機EL特有のノイズを低減する効果が大きく、コンテンツに含まれる微細情報、階調情報を忠実に引き出す効果が期待できるのだ。
■漆黒を忠実に再現することでレベルの高いリアルな描写に
SDR作品の画質向上には「AI機械学習HDR復元」が威力を発揮する。市販のUHD BDと同一作品のBDの画像を比較してHDRとSDRの差を抽出する機械学習でHDR復元テーブルを作り、その復元テーブルを使ってSDR映像をHDR映像に近付けるという技術だ。
すでに市販されているUHD BDの大半は解析済みだというが、解析対象の作品数を増やした最新の復元テーブルはファームウェアのアップデート時にレグザ本体に反映されるため、復元精度は時間とともに向上するとされる。
X910の有機ELパネルは、白のピークで800nitの輝度を確保しているが、UHD BDのHDRコンテンツでは1,000nit相当の信号が入ってくるため、800nitを超える領域の階調情報をいかに再現するかが課題となる。そこで効果を発揮するのが「ローカルコントラスト復元」である。