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制作者の意図を忠実に引き出す

DLPプロジェクターとして初の4K 830万画素を実現。THX認証取得モデル「HT8050」をレビュー

公開日 2017/03/27 13:48 鴻池賢三
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精密なピント調整でシャープな映像を獲得

まずは設置。BenQのフルHD製品に比べるとボディーは大柄だが、一般的な4K製品に比べると同等の印象。軽量とは言い難いが、重量は約14.8kgと1人でも充分に扱える範囲に収まっている。今回は120インチ画面で投写距離は約5mとテレ端に近い設定。レンズシフトは、上下と左右用の独立した2個のダイヤルで行う。手動だが精密感が高く、映像を狙った位置にフィーリング良くピタッと静止させることができた。

上下左右のレンズシフトは、本体天面のダイヤル式レバーで調整する

映像の拡大縮小とピント合わせは、レンズ周りのリングを手動で回転させる仕組み。余談だが、厳密にはピントを保ったまま拡大縮小できる「ズーム」ではない。とは言え、本機のような高画質モデルは、天吊り設置するケースがほとんどと思われるので、設置後にレンズ周りの操作を頻繁に行う可能性は少なく、実用充分と言えるだろう。

ピントはレンズ周りのレバーを回転させて行うため、デジタル式に比べ、より微細な調整が可能

ピント合わせを済ませて驚いたのは、スクリーンに現れた映像のシャープさ。OSDメニューを表示すると、白い文字にかすかなにじみも見あたらないのだ。本機は1つのDMDデバイスを用い、時間分割でRGBのモノカラー映像を重畳してフルカラーに見せているので、原理的に色のズレが生じない。アライメント調整の必要も無いというわけだ。さらに、レンズの色収差に起因するにじみも見あたらず、光学系も謳い文句通り優秀なようだ。

メニューの文字がクッキリと表示される

約415万個のミラーを持つDMDデバイスによって4K解像度を実現しているため、描写が難しいテストパターンでもにじみがない

ほか、リモコンのデザインはBenQのエントリーレベルと全く異なり、黒を基調としたシックな仕上がりで、ハイエンドシアターにもふさわしい仕上がりだ。アンバー色のバックライトは輝度ムラが少なく視認性が良いのも好感が持てる。OSDはBenQの定番スタイルを踏襲し、シンプルで扱いやすい。

付属のリモコン。「THX」や「CINEMA MASTER」といった主要なメニューは予めボタンが用意されている」

作品が意図する表現を的確に再現

まずは筆者がリファレンスとしている『4K夜景』で確認。RGBのにじみが皆無なので、映像が非常にシャープ。シャープと言っても硬いわけではなく、ディスクに収められた情報を歪み無くストレートに引き出すと言う意味で、奥行きのある構図もすっきりと見通しが良い。

シャープで滲みのない、極めて精細な描写

4K解像度の映像装置はたくさん登場しているが、液晶テレビに比べるとサブピクセル構造が無く、液晶プロジェクターに比べるとにじみが皆無な点で、本機はDLPプロジェクターの利点を活かし、4K 830万画素の解像度による描写の精細度で別次元のアドバンテージを感じる。摩耶山山頂からの夕暮れの眺めは、靄が靄と分かり、遠景ほど霞む様子に空気の存在を感じるほどだ。

電線などの細かな部分でも、はっきりとした描写が行える

もう一点、DLPならではと思えるのが、コントラストの高さ。同一画面内、隣り合う画素同士のコントラストが高く保たれているので、色は強調せずとも自然と豊かに乗ってくる印象。飽和による嫌みがなく、すっと目に飛び込んでくる色彩美が心地よい。

設定の調整により、映像表現を追い込むことができる

暗部の階調表現は、微かなグラデーションも実に明瞭。例えば夕暮れ、車のライトで照らし出させるアスファルトの表面も、状態や質感が手に取るように把握できる。また、DMDの「ミラー」効果か、画素ズレの無さからか、ピークの煌めきが際立つ。遠景で極小の窓明かりも、隣の画素に影響されずキラリと光る様は特筆に値し、肉眼で夜景を眺めるかのような錯覚と感動が得られる。

本機はHDR非対応だが、DMDならではの高コントラストにより、SDR信号でもダイナミックな映像美が楽しめるのが面白い。その後のシーンでも、神戸の港は漆黒の海面に照らされる灯りが力強く、また、ラストシーン、完全に日が落ちた神戸の街並みを山頂からの眺める「100万ドルの夜景」は、本物と見まがうばかりにリアルかつ感動的で、時間の経つのを忘れてしまった。

グラデーションが明瞭で、コントラストの高い映像表現が楽しめる

映画は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で確認。砂漠を舞台にした作品で土色が支配的だが、本機で見ると、意外なほどに色彩の美を感じることができる。土の色には陰影による表情が、空には青よりもシアンに近い深みが印象的。強調して得た濃さではなく、ストレートに引き出され、ピュアで透明感をたたえる深みが、感性にまで染みこんでくる。また、こうした深みのある色同士が同一画面内でけんかせず、調和による美しさ、言いかえるとバランスの美を感じることができるのも興味深い。

元来ユーザーは、制作者の意図した映像を知る術が無いが、本機のTHXモードなら制作基準に厳密に沿い、カラーリストの設計した色彩美を再現してくれる。理屈抜きにしても、こうした整ったカラーバランスの美しい映像に触れると、制作者の意図や、本機の忠実な色再現性能を疑う余地は無い。

「4Kピクセル・エンハンサー」がオフの状態(左)に対し、オンの状態(右)では、木々の葉や奥側の山肌が、潰れず細やかに描写されることが分かる

ほか、CG作品の確認として「LEGOムービー」を観賞。原色の鮮やかさが特徴の作品だが、THXモードでも見応え充分。実写作品と同様に、バランスの良いカラー表現で、的確なグラデーションの再現から立体感も湧き出してくる。カラーブレーキングが知覚できる場面もあるが、感じ方は個人差が大きい。何より、RGBアライメントのズレによるにじみが無いのは大きな魅力なので、シャープな表示能力と天秤にかけて判断すると良いだろう。




本機は画素ズラしで4K 830万画素を達成しているが、単板式DMDという構造でにじみが無い点で、一般的なネイティブ4Kモデルに引けを取らない高精細映像を達成している。コントラストの高さやピュアな発色もDLP方式ならではと思えるもので、実に見所の多い製品である。また、THXおよびISF認証を取得し、世界で通じる画質への基本的な考え方や精度の高さも頼もしい。

国際規格を取得していることが、HT8050の描写が製作者の意図した表現であることの証拠となる

モニターライクに制作者の意図した映像美を忠実に引き出すなら、本機は有望な選択肢として浮かび上がってくるだろう。プロユースにもお薦めできる好モデルだ。

(鴻池賢三)

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