<山本敦のAV進化論 第132回>
HTCのフラグシップスマホ「HTC U11」速攻サウンドレポート。USB直結デジタルイヤホンを聴く
■リスニング感を最適化できる「パーソナライズド・オーディオ」機能とは
HTC U11が搭載する「パーソナライズド・オーディオ」機能は、ユーザーの耳内の環境を測定して、それぞれに最適なリスニング感に整えるというものだ。前機種のHTC 10にも採用され好評を得たことから、新製品ではデジタル接続のUSBイヤホンに合わせながら機能をブラッシュアップした。筆者もデモ機でこれを体験してみた。
スマホにイヤホンを装着し、設定メニューから「HTC USonic with Active Noise Cancellation」のトグルボタンをオンにする。設定名称からもわかるように、今回のモデルからアクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)機能が追加されており、音の聴こえ方だけでなくノイズキャンセリングのバランスも同時に整えられるようだ。
画面の解説を読んで「スキャニング・スタート」をタップすると、ホワイトノイズのようなビープ音が鳴って、わずか2〜3秒で測定が終了する。可聴帯域外の音声信号を耳の中に飛ばして、跳ね返ってきた信号をイヤホンのノズル内部に搭載するマイクで拾って測定する仕組みだ。
プロセッシングが終わるとデモ音源が流れはじめて、メニュー画面からUSonicの効果をオン・オフして違いも比較できる。その後、できあがったプロファイルを保存すれば最適化は終了。その手間は全体で約10秒前後とクイックだ。
計測・作成したプロファイルは1端末に複数個保存できるので、納得がいくまで測定をやり直したり、あるいは端末を家族とシェアしながら音楽を聴く時などに有効だ。プロファイル設定が終了したあとで機能のオン・オフを切り替える場合は、端末の設定アプリか、あるいは通知トレイを引き出すと現れるプルダウンリストからでも選択できる。
ANC機能はイヤホンのハウジング外側にマイクを搭載するフィードフォワード方式に対応した。音楽を聴きながら消音効果を試してみるとやや控えめに感じられるが、アウトドアを中心に、時には歩きながら音楽を聴くことを想定するとこれぐらいの効果がちょうどよいのかもしれない。
USonicのパーソナライズド・オーディオの効果を活かしながら、NC機能だけをオフにすることは不可だ。同じく音楽を再生しないとNC機能がオンにならない。飛行機など乗り物の騒音をキャンセルして、機内で読み物に集中したり、眠りたい時に音楽もかけなければならないので、NCのみ個別にオフにできる機能も欲しかった。
ユーザーがマニュアルで値を調節できるEQ機能は設けていない。その理由を同社のエンジニアは「簡単に使えて効果が感じられるUSonicの特徴によりハイライトしたかったから」であると説いている。
■HTC U11のサウンドを聴いてみた
新製品発表会に展示されたHTC 11の実機による音質のインプレッションも報告しよう。なお展示機で試聴できたのはGoogle Playミュージックのソースだったことをあらかじめお断りしておく。
マドンナのアルバム『Rebel Heart』から「Living For Love」を聴いてみると、全体に音のつながりはよく、特に中高域は明るく伸びやかに感じる。ただ、この曲を聴く限りでは低域にややバランスの比重が寄っているようにも感じられた。どちらかと言えばロック、ポップス、EDM系の楽曲にハマるテイストだ。
あらかじめパーソナライズしたUSonicの設定をオンに切り替えてみると、定位の鮮明度が上がり、音場に一段と広がりが生まれる。中低域のインパクトも強くなり、全体の力強さもグンと向上した。オフの状態に比べると変化の幅が大きいようにも思うが、リスニングの快適さを考えれば“常時オン”で楽しみたい。
先述した通り、ノイズキャンセリングの消音効果は自然で控えめだ。通勤電車の中など騒音に囲まれる場所ではもう少し効果が強くなってもいいように感じるが、同社の開発スタッフによれば周囲の騒音環境に応じて、消音効果の増減を自動で調節する機能が付いているそうなので、その実力を測るためには様々な環境で実験してみる必要もありそうだ。
なおHTC 10の開発時にはSnapdragonのSoCをベースに、アナログアンプによる音声信号の増幅段やDA変換処理回路をブラッシュアップしながら独自に高音質化を図っていた。本機も「Snapdragon 835」に最適化しつつ、同じ開発思想でオーディオ段の強化を図ったという。HTC 10と比べながらチューニングの差をチェックしてみても面白そうだ。