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スタジオとホームを融合させる注目AD/DAコンバーター

忠実再現と音楽表現が融合 ― RME「ADI-2 Pro」の絶妙なチューニングを聴く

公開日 2017/08/02 10:00 山之内 正
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■768kHz PCM/11.2MHz DSDへの対応はADコンバーターとしても貴重

もう一点、RME製品のユーザーのひとりとして大いに興味を引かれるのがDSDを新たにサポートしたことである。しかも録音と再生どちらも11.2MHzまで対応する最先端の仕様を満たしていることに注目すべきで、特にADコンバーターがそこまでサポートした例はプロ機器でも数えるほどしか存在しない。

フロントパネルに用意されたディスプレイによって、スタンドアローンでさまざまな設定が可能。視認性も高い

さらに、最大768kHz/32bitのPCMを含め、ハイレゾ仕様での録音・再生ができるアプリケーション「Sound it! for ADI-2Pro」をバンドルし、特別な準備をしなくてもDSDを含む高解像度のレコーディングとプレイバック環境が手に入ることも見逃せない。なお、そのハイスペックを実現するために本機はADコンバーターにAK5574をデュアルモノで使用し、DAコンバーターはAK4490をチャンネルごとに1基という贅沢な構成で用いている。

単独で大半の機能を使いこなせると紹介したが、その優れた使い勝手を実現するうえで重要な役割を果たすのが、フロントパネル右側に配置された高解像度の液晶ディスプレイである。このディスプレイは複数の機能を瞬時に切り換えられることに加え、表示の精細度が高く視野角が広いので、ステータスの確認画面やレベルメーターはもちろんのこと、30バンドのスペクトラムアナライザを表示しても各バンドの動きを詳細に確認することができる。サイズから想像するよりもはるかに高機能かつ高精度で実用性は申し分なく、使い勝手も良い。レスポンスが高速なのはDSPの処理能力に余裕があるからだろう。

録音を中心にしたプロフェッショナル用途で威力を発揮することはもちろんだが、ADI-2 Proはホームオーディオでもさまざまな用途に活用できる。例えば、デスクトップオーディオでUSBオーディオインターフェース、プリアンプとして活用することに加え、本機をヘッドホンアンプとして利用するのもお薦めの使い方のひとつだ。最大出力2.2W、S/N比120dBという高性能ヘッドホンアンプを内蔵しており、2つの出力で別々のソースを再生したり、バランス接続にも対応するなど、機能面でもアドバンテージが豊富だ。

パソコンと組み合わせて本機を手近に置き、精細度の高いディスプレイで音楽信号を確認しながら再生する。他のRME製品ではパソコンにインストールしたTotalMix FXで同様なことができるのだが、本機は単独でそれができてしまう。また、必要とあれば5バンドのパラメトリックイコライザーを使って周波数バランスをコントロールできるので、設置条件に制約のあるデスクトップオーディオの再生音を自然なバランスに追い込むなど、一歩踏み込んだ活用も面白い。

ADI-2 ProにはパラメトリックEQ機能も内蔵。リスニング環境に合わせた設定ができる点も魅力のひとつ

最近、標準仕様のADI-2 Proに加え、ブラック仕上げのAnniversary Editionが加わり、選択肢が広がったことが話題を集めている。引き締まったパネルフェイスに加え、シースルー化されたトップパネル越しに見える基板の精緻なレイアウトが目を楽しませてくれる。変更点は仕上げだけでなく、クローム製フットの導入やシールドの強化など、音質改善につながるブラッシュアップが行われている点も見逃せない。ハイファイ機器として作り込むアプローチはRMEとしては珍しいが、見た目だけでなく実質的な効果を狙うことに同社のこだわりが感じられる。

ブラックパネルをまとったRME20周年の記念モデル「ADI-2 Pro Anniversary Edition」(¥OPEN・予想実売価格¥220,000前後)も注目

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