Bulk Petの技術背景も解説
新たなUSBオーディオ伝送技術「Bulk Pet」で音は良くなる? 対応USB-DAC 3機種でテスト
PCオーディオにおいて昨年、インターフェイス社が提唱する「Bulk Pet(バルク ペット)転送方式」の登場が話題となった。本稿ではBulk Pet方式がどういうもので、ユーザーにとってどういうメリットや制限があるかということを解説していく。また、Bulk Pet転送方式に対応したUSB-DAC 3機種も実際に試聴し、従来の方式との音の違いについてもレポートする。
■バルク転送を用いた独自のUSB音声伝送技術「Bulk Pet」
Bulk Pet転送方式はその名の通り、バルク(Bulk)転送を用いた同社独自の音声伝送技術である。まずはじめに書いておくと、バルク転送方式それ自体は特別なものではない。もとからUSBに備えられている転送モードの一つだ。
USBとは「Universal Serial Bus」の略で、文字通りユニバーサル、つまり汎用性が高い転送方式である。ユーザーはUSBでハードディスクからプリンター、USB-DACに至るまで、用途や特性の違うデバイスを、その違いを気にせず接続することができる。
しかしUSBの内部においては、接続する機器の特性の違いによって、いくつかの転送モードが使い分けられている。たとえばハードディスクが相手ならばアプリやテキストファイル、画像など大量のデータをなるべく早く転送することが求められる。このときに使われるのがバルク転送モードである。
一方でUSB-DACにおいては、音楽再生を行うためクロックに同期して正しい時間間隔でデータを転送することが求められる。このとき使われるのはアイソクロナス(Isochronous:等時性)転送モードだ。このためUSB-DACは、ふつうはアイソクロナス転送モードが使われる。
アイソクロナス転送モードはさらにホストとデバイス(DAC)のどちらのクロックに合わせるかで、アシンクロナス(Asynchronous:非同期)転送とアダプティブ(Adaptive:同期)転送に分けられる。
ちなみにUSB-DACのアシンクロナス転送方式はよく耳にするだろうが、アイソクロナス転送とアシンクロナス転送とはまったく別のものだ。日本語の語感的に間違いやすいので注意してほしい(アシンクロナス転送については今回のテーマとは関係ないので詳細は割愛するが、ごく簡単に説明すると、再生時にパソコン側ではなくUSB-DAC側=デバイス側のクロックを使用して再生する方式のことを指す)。
■アイソクロナス転送モードが主流になった経緯
問題は、ハイレゾオーディオの黎明期において、アイソクロナス転送モードでは最大96kHzまでという制約があったことだ。これを「オーディオクラス1の制約」という。約10年ほど前のことだ。
DAC自体は192kHzに早くから対応していたので、このときに192kHzの楽曲データを送るために使われたのが、大量のデータを送ることができるバルク転送モードであった。初期にはMusilandなどのUSB-DACがこの方式を使っていたことを覚えている方も多いかもしれない。
ただし、本来はハードディスクに使われる方式で音楽データを送るので、これは非正規的な転送となる。そのためカスタムドライバーと呼ばれる独自ドライバーを追加でインストールする必要がある。一方でアイソクロナス転送モードは、OSにもともと入っているドライバーを使うことができる。これを標準ドライバー(またはクラスドライバー)という。
やがてオーディオクラス2が普及し、標準ドライバーで192kHzが達成できるようになると、だんだんと標準ドライバーを使うアイソクロナス転送モードが主流になってきたという経緯がある。
■インターフェース社はアイソクロナス転送の限界を見据え、バルク転送に着目
一方でアイソクロナス転送モードの限界に気づいていたのが、国産のUSB-DACの基礎を築いてきたインターフェイス社だ。インターフェイス社では2014年頃から、プロオーディオのために極限まで転送データサイズを小さくし、レイテンシー(遅延)を可能な限り縮めるという試みを行っていた。
しかしアイソクロナス転送モードでは限界があり、なかなか目標数値に到達できなかったため、バルク転送モードに着目した。そこで好成績を収めることができたため、次にコンシューマーのHi-Fiオーディオ分野にこの技術を応用した。これが「Bulk Pet」(バルクペット)転送である。
Bulk Pet方式自体は標準化団体が制定した規格ではなく、インターフェイス社の商標である。Bulk Petの「Pet」とは「Pure Enhanced Technology」の略だが、バルク転送をペットのようにかわいがってほしいという意味も込められていると言う。先に書いたようにバルク転送自体は、USBにもともとある転送モードだが、それに付加価値を付けて独自のものとしたのが、インターフェイス社の提唱するBulk Pet転送ということができる。
提唱すると書いたのは、Bulk Pet転送を実現するためにはホスト(PC)側のドライバーと、デバイス(DAC)側のファームウェアの両方に修正が必要だからである。このため、カスタムドライバーをインストールする必要があるとともに、ファームウエアの書き換えが必要となり、USB-DACメーカーの協力が必要となる。また。このためにXMOSによるファームウェアを採用しているUSB-DACでは使用することができない。あくまで、インターフェイス社がUSB-DACの基本ソフトを書いているメーカーに限られる。
しかし、そうしたメーカーのDACでは、ハードの追加なしでさらなる音質向上の可能性が開かれたわけだ。
■バルク転送を用いた独自のUSB音声伝送技術「Bulk Pet」
Bulk Pet転送方式はその名の通り、バルク(Bulk)転送を用いた同社独自の音声伝送技術である。まずはじめに書いておくと、バルク転送方式それ自体は特別なものではない。もとからUSBに備えられている転送モードの一つだ。
USBとは「Universal Serial Bus」の略で、文字通りユニバーサル、つまり汎用性が高い転送方式である。ユーザーはUSBでハードディスクからプリンター、USB-DACに至るまで、用途や特性の違うデバイスを、その違いを気にせず接続することができる。
しかしUSBの内部においては、接続する機器の特性の違いによって、いくつかの転送モードが使い分けられている。たとえばハードディスクが相手ならばアプリやテキストファイル、画像など大量のデータをなるべく早く転送することが求められる。このときに使われるのがバルク転送モードである。
一方でUSB-DACにおいては、音楽再生を行うためクロックに同期して正しい時間間隔でデータを転送することが求められる。このとき使われるのはアイソクロナス(Isochronous:等時性)転送モードだ。このためUSB-DACは、ふつうはアイソクロナス転送モードが使われる。
アイソクロナス転送モードはさらにホストとデバイス(DAC)のどちらのクロックに合わせるかで、アシンクロナス(Asynchronous:非同期)転送とアダプティブ(Adaptive:同期)転送に分けられる。
ちなみにUSB-DACのアシンクロナス転送方式はよく耳にするだろうが、アイソクロナス転送とアシンクロナス転送とはまったく別のものだ。日本語の語感的に間違いやすいので注意してほしい(アシンクロナス転送については今回のテーマとは関係ないので詳細は割愛するが、ごく簡単に説明すると、再生時にパソコン側ではなくUSB-DAC側=デバイス側のクロックを使用して再生する方式のことを指す)。
■アイソクロナス転送モードが主流になった経緯
問題は、ハイレゾオーディオの黎明期において、アイソクロナス転送モードでは最大96kHzまでという制約があったことだ。これを「オーディオクラス1の制約」という。約10年ほど前のことだ。
DAC自体は192kHzに早くから対応していたので、このときに192kHzの楽曲データを送るために使われたのが、大量のデータを送ることができるバルク転送モードであった。初期にはMusilandなどのUSB-DACがこの方式を使っていたことを覚えている方も多いかもしれない。
ただし、本来はハードディスクに使われる方式で音楽データを送るので、これは非正規的な転送となる。そのためカスタムドライバーと呼ばれる独自ドライバーを追加でインストールする必要がある。一方でアイソクロナス転送モードは、OSにもともと入っているドライバーを使うことができる。これを標準ドライバー(またはクラスドライバー)という。
やがてオーディオクラス2が普及し、標準ドライバーで192kHzが達成できるようになると、だんだんと標準ドライバーを使うアイソクロナス転送モードが主流になってきたという経緯がある。
■インターフェース社はアイソクロナス転送の限界を見据え、バルク転送に着目
一方でアイソクロナス転送モードの限界に気づいていたのが、国産のUSB-DACの基礎を築いてきたインターフェイス社だ。インターフェイス社では2014年頃から、プロオーディオのために極限まで転送データサイズを小さくし、レイテンシー(遅延)を可能な限り縮めるという試みを行っていた。
しかしアイソクロナス転送モードでは限界があり、なかなか目標数値に到達できなかったため、バルク転送モードに着目した。そこで好成績を収めることができたため、次にコンシューマーのHi-Fiオーディオ分野にこの技術を応用した。これが「Bulk Pet」(バルクペット)転送である。
Bulk Pet方式自体は標準化団体が制定した規格ではなく、インターフェイス社の商標である。Bulk Petの「Pet」とは「Pure Enhanced Technology」の略だが、バルク転送をペットのようにかわいがってほしいという意味も込められていると言う。先に書いたようにバルク転送自体は、USBにもともとある転送モードだが、それに付加価値を付けて独自のものとしたのが、インターフェイス社の提唱するBulk Pet転送ということができる。
提唱すると書いたのは、Bulk Pet転送を実現するためにはホスト(PC)側のドライバーと、デバイス(DAC)側のファームウェアの両方に修正が必要だからである。このため、カスタムドライバーをインストールする必要があるとともに、ファームウエアの書き換えが必要となり、USB-DACメーカーの協力が必要となる。また。このためにXMOSによるファームウェアを採用しているUSB-DACでは使用することができない。あくまで、インターフェイス社がUSB-DACの基本ソフトを書いているメーカーに限られる。
しかし、そうしたメーカーのDACでは、ハードの追加なしでさらなる音質向上の可能性が開かれたわけだ。