10Wスピーカーも内蔵
人気プロジェクターが今年も進化、エプソン「EH-TW5650」の画質はどれだけ向上したか
続いて、照明を落とした状態で『ラ・ラ・ランド』を鑑賞。映像モードを切り替えてみて感心したのは、試聴室の照明を付けた状態での「ブライトシネマ」と、照明を落とした状態の「シネマ」設定で、見た目上の色彩がほぼ整えられていること。「シネマ」も含めてリッチな色彩ではあるが派手すぎるトーンでもないし、中間階調の表現も巧み。フルHDの入門クラスモデルにも、エプソンの画質チューニングがしっかり息づいていることを実感する。
なお、照明を落とした状態で試した「ナチュラル」設定は画面全体の色彩が浅くなるが、全体の質感の表現力と見通しも良くなるほか、UltraHD Blu-ray版での鑑賞にも近いトーンで観ることができる。特に暗室で視聴する人で、BDに収録されたBT.709の信号をベースに視聴したい人、フィルムのような雰囲気で視聴したい人には、作品毎に「シネマ」と「ナチュラル」と作品毎に好みで選んだ方が良さそうだ。
●『君の名は。』の画質は「EH-TW5650」でも十分に発揮された
続いてBD版の『君の名は。』も鑑賞。本作はBD版、UHD BD版、そして薄型テレビ、有機ELなどデバイスを変えて特に何度も視聴したが、EH-TW5650の大画面で観る体験は格別だ。
チャプター12の、入れ替わりの日々をフラッシュのように描くシーンだが、前半にある新宿のビル街の映像のクールな描写も、田舎の町並み、陽光の刺す都市といったアニメーションのビビッドな色のトーンも、明るい部屋では「ブライトシネマ」、暗室では「シネマ」設定で余すことなく再現してくれる。
なお、BDでも画面全体の精細感はしっかり感じられるので、『君の名は。』を自宅スクリーンで鑑賞するプロジェクターとしても推薦したい。
最後に、EH-TW5650の隠れたオススメポイントとして気づいたのが内蔵スピーカーのサウンド。出力が10Wとなったことで、本格的なホームシアターとまでは言わないまでも、一人や数人で映画を鑑賞するなら十分に台詞や音楽もクリアに聞き取れる水準となった。映画的な体験を追求するならBluetoothのワイヤレススピーカー接続、または別途ホームシアターシステムを用意する事もできるので、本格的な用途ではそちらを試して欲しい。
エプソン“dreamio”シリーズのフルHDモデルで、エントリーから数えて2機種目になるEH-TW5650だが、ホームシアター用プロジェクターとしては、予想以上の実力機。フルHDプロジェクターの最安値モデルがEH-TW650となったことで、EH-TW5650は改めてフルHDでも高画質のホームシアターを体験するモデルに位置づけられた成果を実感する。リビングシアター入門の決定版だ。
(折原一也)