【特別企画】XL-1/SP-10を試聴
気品を備えた、リファレンスサウンドの到達点 ー サエクの旗艦ケーブル「STRATOSPHERE」を聴く
外周部に位置する細めの導体には、SP-10は同様にPC-Triple Cを用いているのだが、XR-1についてはそこにPC-Triple C/EXを採用している。言葉の上では「EX」が付いただけだが、PC-Triple Cとの違いは相当に大きい。中心にPC-Triple Cがあり、その外周部に5N 銀という二層構造を取っている。
その製造工程を平明に説明すると、まず5N銀のパイプを太めに造り、その中にPC-Triple C銅を挿入。その後に細くしていくという。金太郎飴の作り方、というとわかりやすいかもしれない。
今までも銀メッキ(コートとから、クラッドとかいろいろな言い方があるが、要するにメッキだ)した銅はあった。あったが銀の層の厚さが違った。そもそも音のためと言うよりは銅の絶縁体としてフッ素材等を使うと、その工程で高温になって銅が変色するのを嫌って用いるという、そういう理由からの側面さえあるほどだ。
メッキによる銀の厚さは1〜2μmm程度であり、銅の表面の凹凸に銀が入ってしまうために表面が平滑にならない。あるいは、一部では銅が表面に顔を出してしまい、表皮を流れる高周波成分は銀と銅を交互に伝わっていくために、「安定した信号伝送とはならない」(PC-Triple C/EXを開発したFCM社による説明)という。この話を訊いて、思い当たる音のニュアンスを体験している方も少なくないと思う。
■SP-10を投入すると低域再現が改善。空間表現や立ち上がりも向上
テストは音元出版の試聴室で行った。リファレンスの機材はアキュフェーズのエレクトロニクス、SACDプレーヤー「DP-720」、プリアンプ「C-3850」、モノ・パワーアンプ「M-6200」。そしてスピーカーがTADの「TAD-E1」だ。
まずスピーカーケーブルをいつも使っているリファレンス(基準)のものから「SP-10」に変更した。これだけでも音の変化率は大きいし、その要素は多岐に渡っている。試聴ソフトはよく聴き慣れたCDの3タイトル。竹内まりや「シングル・アゲイン」では、まずそのS/N感の良い、透明な空間の中にまとまった音像が見えてくる。特に低域は、何か茫洋とした広がりだった音像がいきなりきちんとしたものになり、エネルギー感自体も上がっている。最低域の、肌に訴えるような低音成分がきちんと出てくるのだ。
クラプトンの『アンプラグド』を聴くと、前段系のリファレンスのケーブルがネックになっているのか情報量自体はそれなりだが、ミュージシャン一人一人の実在感は向上。トリフォノフがピアノソロ、ネゼ=セガン/フィラデルフィア響によるラフマニノフの「パガニーニ狂詩曲」では、ホールの空間表現力が高まり、各楽器のパートの間に空間が出てくる。また、音の立ち上がりの反応の良さとすっと音の減衰がしゃがむ感じも素晴らしい。
■分解能やエネルギー感に加えて気品も備えるXR-1
続いて、スピーカーケーブルの「SP-10」はそのままに、CDプレーヤーとプリアンプの間に「XR-1」を投入した。竹内まりやではさらに全体のS/N感が上がり、イントロのキーボードの透明なゼリーのような特有の音色感や質感を見事に表現。サウンドステージはやや手前に展開しつつ、前後の奥行き自体も深くなるし、左右と天井方向も伸びやかだ。ストリングスの高域、中域、低域に分かれた声部の重なり方が重層的に見えてくるのも美しい。