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【特別企画】Silver 500/200/50を聴く

驚異の進化で旗艦機に肉薄 ー モニターオーディオ「Silverシリーズ」のステレオ再生能力を探る

公開日 2017/10/13 19:27 井上千岳
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専用設計で壁際設置でもサウンドの崩れを防ぐ「Silver 200/50」

さて、「Silver 200」と「Silver 50」の2つだ。実はこの2機種は、ウーファーを13cmとしている。旧シリーズは15cmだったから、一回りほどの縮小である。それに伴って幅も2cmずつ狭まった。ぎりぎりのスリム・プロフィールと言っていい。

これまではユニットを共用して一回り大きなウーファーに統一されていたが、2チャンネル用としては小口径の方がある意味で正統的と言える。今回あえてこの2機を選んだのは、そういう理由からである。

「Silver 200」。コンパクトなだけでなく設置性に配慮した音質設計を行っており、生活空間への導入も用意にしている

それとこの2機にはもうひとつ、面白いフィーチャーがある。リアバスレフの場合普通は壁から30cmほど離して設置するものだが、この2機種は壁に近接して設置してもサウンドプロポーションが大きく崩れることないように設計されている。ポートの構造で背圧の影響を受けないように新しい設計が施されているそうだが、小空間での使用を前提に考えられた装備と言っていい。小口径ウーファーとともに、日本の家屋では特に好適であるように思う。

「Silver 200」試聴 ー 素早い立ち上がりで鮮度感に富んだ表現

そのSilver 200は、ウーファー2基とスタガーで駆動する2.5ウェイである。700Hzでクロスさせる構成で、このタイプはシリーズ中で本機とセンター用のC150だけである。理屈はともかく、本機の音は上級機と比べても目覚ましい。立ち上がりが速いのだ。速いだけでなく、エッジが極めてシャープに利いている。おそらく速いだけでなく立ち上がり方が強いのだろう。アンプで言うとスルーレートが高いのと同じである。

Silver 200の試聴風景

この速さ・高さに肉質感が乗ってくる。だからそのエネルギー感は異常に強力で、ピアノでは芯の強い骨太のタッチが縦横に跳ね回る印象がある。低音部は深々と沈んで静寂感に富み、高域は少しの無理もなく伸びて表情が大変細かい。

室内楽はハーモニーがことのほか新鮮で曇りがなく、高低両端に楽々と伸びて解像度に富む。和音の出方が実に瑞々しく、また立体感に満ちていることにも注意したい。

Silver 500とSilver 200。並べてみるとSilver 200のスリムさが際立つ

オーケストラは強靭で奥行が深く、トゥッティの鮮烈さが圧倒的だ。ダイナミズムの幅が広いのだろうが、それと瞬発力の強さが重なって稀に見るような切れのよさを示す。ジャズでも強烈さは変わらず、エネルギーの乗り方が大きい。キックドラムとハイハットが同じような峻烈さで出てくるのにもびっくりするが、ウッドベースの軽さと明快さも感動的と言いたいほどだ。結局鮮度がものを言うのである。

「Silver 50」試聴 ー ハイスピードとナチュラルバランスを両立

Silver 50は、最もコンパクトなブックシェルフ型である。Silver 200をぐっと凝縮したようなイメージだが、意外なことに音調はSilver 500や300に近い。鳴らしこんでいるため熟度が増したということかもしれないが、落ち着いた充実感も感じさせる鳴り方である。

Silver 50

バランスが取れているのはもちろんだが、どの帯域にも突出したところがなく円満なまとまりがある。だからと言って丸まった音調なのではなく、ハイスピードで鮮烈なのは他のモデルと同様である。

ピアノは低音部の深さと明瞭感が上級機と瓜二つだ。よく伸びて芯も厚く、響きが澄んで滑らかに流れている。室内楽も豊かな鳴り方で、古楽器らしい弦の弾力と粘りが柔らかく引き出されている。無理や歪みが生じないのも、自然さを高めているようだ。

Silver 50(写真右)と旧Silverシリーズで本機に該当する「Silver 1」(写真左)。サイズのちがいがよくわかるだろう

オーケストラはブックシェルフの限界を明らかに越えていて、コントラバスの唸るような深さを聴くとそれが納得できるはずだ。ジャズでもそうだが、誤解を恐れずに言えば、この低音の出方は「Silver 500」や「Silver 300」とほとんど同等である。

トゥッティの大音量でも崩れないのは当然と言ってもよく、ジャズではそれが躍動感となって表れる。ユニットどうしのつながりがよく、その点でウーファーを小口径化したのは正しい選択であったことがわかる。



以上新しいSilverシリーズを3機種聴いてきた。一言で言えば、旧シリーズからの驚異的な進化である。Platinum IIに肉薄し、新しさという点ではGoldシリーズを追い抜いている。中堅機という位置付けで中庸なイメージの強かったSilverだが、このシリーズではものの見事に飛躍を遂げた。いま最も輝いているスピーカーのひとつとして、惜しみない称賛を送りたい。

(井上千岳)


特別企画 協力:ナスペック

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