オーディオ銘機賞2018で製品特別大賞を受賞
エソテリックの一体型プレーヤー/プリメイン最高峰。「Grandioso K1/F1」を聴く
■高精度ルビジウム発振器を採用した「Grandioso G1」
G1は、エソテリックにおいて第4世代のマスタークロックジェネレーター。心臓部には10MHzの正弦波のクロック出力を4系統装備する。出力段には高周波帯域の特性の良い高速トランジスターを使ってディスクリート回路を組んでいる。また、バッファーアンプ部が4系統に対して、電源部も4つに独立させている。
今回、クロック出力の基準としての電位、グラウンド0Vを保つモードを新設したのも大きい。グラウンド電圧の変動によるノイズ(ランダム・ジッター)防止に対応しているという。ただしその最大の特徴は、G1を接続した時の再生音にある。たとえば音場空間のフォーカスの精度だけでなく、音楽としてのゆらぎ、生きた音楽性を目指して音を詰めていったという。
■バランス接続では太い低音で各音像がリアルに見えてくる
試聴はエソテリックの試聴室にて行った。スピーカーはTANNOYの「Kingdom Royal Carbon Black(キングダムロイヤル・カーボンブラック)」を使用した。
まずはK1+F1を通常のバランス接続で聴く。太い低音が印象的でありつつ、中高域をマスキングすることなく各音像がリアルに見えてくる。質感として、いい意味で若干ウェットな感じを持っている。音の色彩感はやや濃いめで、シックなニュアンス。オペラの一場面を聴いた時のソプラノの艶やかさや、合唱隊のフォルテがきれいに立ち上がってくるのも、なかなか聴けない領域の音だ。
続いて接続をES‐LINK Analogに変更する。クリアネスが増して全体的に音が鮮烈になる。質感の湿り気がアキュレートな方向にスライドし、よりリアルで発色の良いハイビジョンを見ているかのようだ。K1とF1を単体で聴いたこともあるが、K1由来と思える音の色彩感が特別に良い。また、スピーカーを十全にハンドリングしているF1の駆動力の高さにも瞠目させられる。
■G1の接続では色彩感が躍動し、良く音楽が鳴る感覚が横溢する
最後にG1の出力をK1に接続してみる。色彩感がよりヴィヴィッドになり、しなやかで低音の揺蕩う感じも印象的である。キーボードのグミのような透明で色合いの良いソフトな質感も快感。音というよりも触感であり、肌に当たる空気感を楽しめる感覚がある。音場空間の見通しの良さや音像の実在感はさらに高まるが、音楽としての情緒、録音した現場で感じていたと思われる居心地の良さ、良く音楽が鳴っている感覚が横溢している。クロックの有無は今までも色々と体験してきているが、これほど大きい変化は初めてかもしれない。
(鈴木 裕)
本記事はオーディオアクセサリー164号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。