HOME > レビュー > DSDに対応したLINN「KLIMAX DS」を聴く。登場10年を経て進化を続けるネットワークプレーヤー

最新DACアーキテクチャー搭載機で実現

DSDに対応したLINN「KLIMAX DS」を聴く。登場10年を経て進化を続けるネットワークプレーヤー

公開日 2017/12/20 11:03 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

欧州では一部の録音エンジニアと音響技術者を除いてDSDへの関心は低く、リスナーの支持も少ない。SACDをリリースするレーベルも少しずつ少なくなり、DSD配信もPENTATONEなど一部のレーベルに絞られてきた。日本のレコード会社がクラシックやジャズの名盤をSACDで復刻し、e-onkyoやmoraのような大規模な配信サイトがDSD音源を販売しているのは、かなり特殊なケースと言っていいだろう。

そんななか、少数の声に応えてDSDのサポートを行うという今回の判断にもリンならではの企業姿勢をうかがうことができる。ハイレゾ音源の配信やネットワークプレーヤーの開発に率先して取り組んだことから明らかなように、リンはもともとクオリティ志向が非常に強く、しかもDRMなど音質と使い勝手を阻害する要素を排してオープンな環境を作ることにこだわってきた。

KLIMAX DS/3は最新世代DACアーキテクチャー「KATALYST」を採用。このKATALYSTはDSD対応も前提として開発されたのだという

今回のDSD対応の背景にそうした同社の基本的な思想を読み取ることもできるだろう。あと1〜2年早ければばもっと嬉しかったというのが筆者の率直な感想だが、いずれにしてもリスナーの立場から言えば大いに歓迎すべき進化であることは間違いない。ファイル形式の違いを意識しないで自由に曲選びができることがDSを選んだ大きな理由だったのに、DSD音源だけがその例外になってしまったのはいかにも残念だった。その不満が今回のアップグレードで解消されるのは素直に嬉しい。

シームレスな使い勝手でDSDを再生できる

アップデートの手順はいつも通りで操作に難しさはない。設定ソフトのKONFIGを起動するとDSD対応の最新ファームが表示されるので(12月20日現在の最新バージョンは4.35.88)、画面の指示通りにアップデートの操作を行えば良い。

アップデート完了後、操作ソフトのKAZOOに表示されるアルバム一覧からDSD音源を選べばそのままプレイリストに登録され、FLACやWAVなど他のPCM音源と同様に再生が行える。再生できるのはDSFとDFFの2.8MHzと5.6MHz音源で、再生中はKAZOOでファイル形式の詳細を確認できるほか、本体のディスプレイにもサンプリング周波数/ビット数やビットレート/ファイル形式が表示され、DSDのネイティブ再生が行われていることがわかる。

設定ソフト「Konfig」の画面。DSDに対応したファームウェアは現時点でβ版だが、問題なく利用することができる

最近のネットワークプレーヤーとしては当然のことだが、ファイル形式が異なる曲をランダムに並べてもノイズが発生することはないし、もちろんギャップレス再生はDSD音源でも普通にクリアしている。

DSDを再生するとKLIMAX DSの長所がいっそう際立つ

最初にギャップレス再生の動作確認も兼ねてゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団のショスタコーヴィチ交響曲第1番と第15番を聴いた(DSD2.8MHz)。第1番は第3楽章と第4楽章をattaccaで途切れなく演奏する指定で、この録音でもどこで楽章が変わったのか気付かないほど自然につながり、まったく違和感はない。ギャップレス再生の動作に問題はなさそうだ。

次ページ音色の豊かさからもDSD再生の長所が伝わる

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク