初めてのホームシアターPJにも
4K/HDRプロジェクターは使いやすさも重要! BenQ「HT2550」はシンプルさと高画質を両立
■静音性が高く、明るい環境でもしっかり楽しめる
今回筆者は音元出版の視聴室を借りてHT2550の視聴を行った。本機の4K映像の再現力を中心にチェックするため、リファレンスのプレーヤーにはパナソニックのUHD BDプレーヤー「DMP-UB900」を組み合わせた。プロジェクターに2基搭載されているHDMI端子のうち、片方がHDMI 2.0/HDCP 2.2対応になる。UHD BDプレーヤーなど4K/HDRコンテンツを視聴する際にはこちらの端子にHDMIケーブルをつなごう。
色域についてはプロジェクターの映像設定メニューから「自動/BT.709/BT.2020/DCI-P3」が選択できる。別途設けられているHDRの設定メニューは「自動/HDR/SDR」の3種類。どちらも自動を選んでおけば問題ないだろう。なおHDRの技術規格については、UHD BDの必須規格で、Netlfix、Amazonプライム・ビデオなども採用する「HDR10」をサポートしている。
なおプロジェクターを使う際にファンノイズが気になる方は多いだろうが、HT2550は元々ファンノイズを低く抑えるように設計されている。さらに、一段とファンノイズを低く抑えられる「サイレントモード」も搭載する。夜など静かな時間に使う場合も効果的だ。本機能をオンにすると映像の画質が4KからフルHDに制限されることも覚えておきたい。
UHD BDタイトルは『キングコング:髑髏島の巨神』から視聴した。HT2550の映像モードは「Bright/Vivid TV/Cinema/Sport」の4種類のプリセットのほか、ユーザーがカスタマイズした2件の設定値を保存しておける。昼下がりから夕方ぐらいの “暗めなリビングルーム” で使うイメージを想定し、視聴室の灯りは少し残している。
映像モードはVivid TVが、元気で濃厚な色あいにチューニングされている。チャプター3でキングコングが初めて登場するシーンでは炎のオレンジ色が濃厚に、かつ力強く描かれる。Cinemaを選ぶと、全体に色調が落ち着いてくる。ピークの明るさもギラつくことなく自然なバランスに整うが、少し肌色のトーンが鈍く感じられることがあるかもしれない。その際は映像メニューにある「CinemaMaster Video+」から肌色のバランスを細かく調節すると、役者の顔の血色が良くなって艶っぽさも乗る。
どちらのモードで視聴してみても、輝度差の大きな映像でもカラーブレーキングが目立たないのがうれしい。4K入門機と侮るのは間違いだ。なお、色あいをキープしたまま、部屋の明るさなど視聴環境に映像のバランスを合わせ込みたい場合は、「詳細設定」から±2段階の範囲でさらに「HDR輝度」をアレンジすると効果が得られた。かゆいところにも手が届く、自由度の高いカスタマイズ機能を備えている。
もう一つのUHD BDタイトルはアニメ『君の名は。』。街の遠景を捉えたカットからは、四季折々に移り変わる空気の匂いまでもが伝わってくるようだった。物語の終盤、都心のビル街に降る雪の淡い瞬きを眺めていたら、いつの間にか物語の舞台に引き込まれていた。4Kらしいシャープな解像感と優しい光の包容力が絶妙なバランスで整っている画づくりが本機の真骨頂だ。作品やシーンにぴたりとはまったときには、心に染み入るようなエモーションを伝えてくる。
なお、HT2550は4Kだけでなく、3Dコンテンツも1台で楽しめる手ごろな価格のホームプロジェクターとしても貴重な選択肢だ。本機に対応するアクセサリーとしてベンキューが発売するアクティブシャッター方式の3Dメガネ「DGD5」を装着して見た『キングコング』では、自然な没入感が楽しめた。
もちろんHT2550が特徴とする色再現や切れ味に富む映像は、フルHD解像度のBDタイトルやテレビの放送を視聴してみた時にもアドバンテージとして伝わってくる。これから初めてのホームプロジェクターを選ぶ方にもおすすめしたい新製品だ。
(山本 敦)