海外モデルをテスト
アップル「HomePod」レビュー。最初はがっかりな音質、使っているうちに大きく変化
■音質レビュー。最初はがっかり
さて、いよいよHomePodの音を聴いてみよう。
まず、ハイレゾ音源をAirPlay経由で聴いてみる。再生したのは宇多田ヒカルのハイレゾ音源「花束を君に」。スピーカーでもイヤホン・ヘッドホンでも聴き慣れている定番曲だ。
一聴して、「何これ?」と思わず独りごちた。
ボーカルがくぐもっていて、張りがない。低音もモコモコしている。ざっくり言うと、2万円前後のBluetoothスピーカーに毛が生えた程度にしか聞こえない。
続いて聴いたのが、同じくオスカー・ピーターソン・トリオのハイレゾ音源「You Look Good to Me」。これも全然ダメ。ウッドベースがほぼ聞こえないほど弱々しい。
ほかにも何曲か聴いたが、どれもこれも、お世辞にも素晴らしいサウンドとは言えない。低音が強すぎたり、逆に弱すぎたり。ボーカルが引っ込んだり、押し出しが強すぎたり。なにしろバランスが悪いし、解像感もさほど高くない。
これは「逆バイアス」がかかっているかもしれないと思った。様々な海外レビューの、強めの褒め言葉を読みすぎて、期待値が上がりすぎていたのではないか。冷静になって聴かないといけない。
それに、今回使った試聴音源は、何百万円もするハイファイオーディオシステムや、何十万円もするヘッドホンシステムで聴いた音が耳にこびりついている。それと比べ「あれが足りない、これが足りない」というのはかんたんだが、そもそも値段が一桁、二桁違うのだ。
日本円で4万円程度ということを考えたら、決して悪いわけではない。それにしても、この音を絶賛している方々はよほど耳が悪いのではと、はじめは本気で疑った。
■しばらく聞きこむうちに、印象がガラリと変わった
ところが、である。その後もApple Musicなどを使って断続的に音楽を聞きこんでいるうちに、だんだん印象が変わってきた。「あれ、結構良い音だな」と感じるシーンが増えてきたのだ。置いている場所はテーブルの上で、ほとんど位置を変えていないのだが、しばらく経ったら「これはかなり良い」と思える音になっていた。
たとえば、ボブ・ディランの「I Shall be released」を聴くと、ハーモニカが、まるで本当に近くで演奏されているかのような実在感をもって鳴り響き、思わず聞き惚れてしまった。
低域の出方には少し癖があるようで、ハマる曲とそうでない曲がある。だが、たとえばホワイトストライプス「Seven nations army」を聴くと、バスドラムがズーンと深くまで沈み込み、質感も伴っている。ペダルを踏む足の音まで見えるような臨場感だ。ピタッとハマった曲では、ちょっと驚くほどリッチな鳴り方をする。
ここで、最初に聴いてガッカリした「花束を君に」を、もう一度再生してみる。すると、最初の印象とは全く違う。ボーカルの実在感が高まり、宇多田ヒカル特有の、少しゆらぎのあるボーカルが克明に描写される。モコモコしていたはずの低音はクリアになり、なおかつ重く沈み込む。音質が明らかに向上し、まるで別のスピーカーを聴いているようだ。