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K3003/N30/N40」とのサウンドの違いは?

AKG「N5005」を従来モデルと比較、新フラグシップが切り開いた新境地

公開日 2018/03/29 10:00 鴻池賢三
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「N5005」自体のサウンドチューニングで好みを追求できる

本機N5005は、4種のサウンドチューニングフィルターとアンバランス接続用ケーブルも付属しているのが特徴。「REFERENCE」については前述を参照いただくとして、ここでは、残る3種の違いを詳しくレポートする。

チューニングノズルによる音の違いを確認する

BASS BOOST
高域がマイルドになり、低域の質感がややルーズで量感が増す印象。根本としてキレの良いサウンドなので、低域の緊張感がほぐれることで、リラックスして楽しめる音調に変化する。電車やバスの中など、周囲が低音騒音に満ちた環境では、こちらの方が適する可能性は高く、モバイルリスニングなら常用しても良いだろう。中高域、特にボーカルとの一体感を求める上でも、BASS BOOSTは試してみる価値がある。

MID-HIGH BOOST
ベースの質感を司る成分が聞こえ易くなり、弾力感や躍動感が高まる。ボーカルの伸びやかさも引き立ち、特に今回の楽曲とは好相性に感じた。爽やかで弾むような音調が、曲の意味、Susanの歌唱スタイル、編曲と恐ろしくマッチし、いつまでも聞いていたくなる美音の世界。土台のしっかりしたモデルだからこそ、こうしたサウンドチューニングにも耐えられるのだろう。

HIGH BOOST
フィルターを確認すると、音を遮るモノが無く、ホコリ除けネット一枚的な構造。つまり、高域をストレートに出す、言い換えると、本機の「ありのまま」の状態と言える。音量が同じ状態では、高域が薄く硬く感じるが、高域の聞こえ方が適正になるように音量を小さく設定すると、相対的にLow カットになる。低域が控え目になることで、中高域が自由を得たかのように歌い出すのは面白い。構造上、音を最も遮らないのでは、音質面で有利な部分もあるはずで、ボーカルなど中高域の鮮度感を楽しむなら、試す価値のあるノズルだ。

φ3.5mmステレオミニvsφ2.5mmバランスケーブル
フィルターは「REFERENCE」で、アンバランスとバランスの違いを確認した。これらは両者の音質差は、プレーヤーのアンプ回路に依存する部分が多いので、あくまでも一例とお考えいただきたい。

φ3.5mmステレオミニとφ2.5mmバランスケーブルを比較試聴

今回は、バランス接続で別世界とも言える大きな違いを体感できた。軽やかな空気に包まれ、空間が大きく広がるのだ。プレーヤーの特性か、高域がやや派手目に出るので、音量を整えて比較した。

バランス接続では、S/Nがアップして粒立ちやテクスチャが現れてくるが、本機N5005のように基本設計がしっかりしていれば、それらの情報で溢れてしまうことなく、ゴージャスなハーモニーとして楽しめる。パワフルなアンプを備えたプレーヤーやヘッドホンアンプとの組み合わせなら、また違った一面を見えてくるだろう。いろいろな組み合わせてみたくなる潜在能力の高さを感じた。

◇ ◇ ◇


Nシリーズのリスナーに寄り添う柔軟な発想と、K3003で体現した「リファレンス」を融合し、AKGの集大成とも言えるのがN5005と言って良いだろう。基本の音質の高さ、チューニングの妙味、豊富な付属品を考えると、ハイエンドイヤホンとしてコスパフォーマンスは非常に高く感じる。

日本向け正式発売モデルでは、N30/N40にも利用できるAKGの純正リケーブル「CN120-3.5」が同梱されるため、既存のN30/N40ユーザーがチューンアップを試みるのも面白いだろう。かねてからのAKGファンにも、これからハイエンドイヤホンの世界に足を踏み入れるユーザーにも、「基準」となり得る、大いに期待すべき新モデルの登場だ。

(鴻池賢三)

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