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部屋の明るさを自動で感知して調整

リビングに相性抜群のフルHDプロジェクター、エプソン「EH-TW6700W」をレビュー

公開日 2018/03/30 10:00 折原一也
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フルHDとは思えない描写性能、「オート」の映像モードが汎用性抜群

実際に「EH-TW6700W」で映像視聴を始めると、改めて本機がリビング設置に相性抜群のモデルと気づく。

まずは手始めに照明を付けた状態でビデオ系ソフトの『彩(IRODORI)にっぽん 4K HDR 紀行 Vol.1』を観る。映像モードは「オート」「ダイナミック」「ブライトシネマ」「ナチュラル」「シネマ」と3D観賞用に「3Dダイナミック」「3Dシネマ」が用意されており、特に標準の感覚で見始めた「ナチュラル」でも画面全体のフォーカス感と色の深度を確保。沖縄の首里城を撮影した映像を見ても画面のフォーカス感の鋭さ、ブルーの透き通るヌケの良い解像感が伝わる。4K投写ではないがレンズ性能と色階調を入念に作り込めばフルHDでもクオリティを確保できる好例だ。

カラーモードは5種類(+3D用の2種類)が用意される

「ブライトシネマ」はより色の鮮やかさと輪郭の先鋭感を引き上げるトーンながら、明るい部屋で鑑賞できるバランス志向の描写として秀逸。もう一つ語っておきたいのが本体内蔵の輝度センサーを用いた「オート」の設定で、照明下の明るさに適応した上で「ナチュラル」に近い映像トーンを選択した。

明るい部屋での視聴も問題なく楽しめる。なお、ワイヤレス接続なのでプロジェクター本体には電源ケーブルしか接続していない

映画『ラ・ラ・ランド』でも、この「オート」の色のトーンは「ナチュラル」よりもわずかに彩りを添えたニュアンスでベストに近いバランス。もう一つ、今回は特にUltraHD Blu-ray版の『ラ・ラ・ランド』をHD画質にダウンコンバートしたものを視聴して気づいたが、「ブライトシネマ」の設定が広色域で制作されたUHD BDのタイトルに相性が良い。

チャプター2の室内のダンスのシーンでは、女性たちの服装の艶やかトーンが目まぐるく変わる階調とともに誇張なく色彩美を引き出す。画面全体をキリリと占めるコントラストを効かせたシャープも現代的で、最新タイトルを明るい照明下で見るにはベストマッチだ。なお、「シネマ」モードはよりフィルムライクに色温度を落とし、シャドウの描写へと振り切ったトーンを出す。明るいリビングより暗室で名画を雰囲気良く出すニュアンスを求める場合に選択すべきモードだ。

もっとも作品によってはトーンのマッチングがあり、映画『ダンケルク』のチャプター1では、画面全体に吸い込まれるような圧倒的な立体感のある高画質のため、「ブライトシネマ」の輪郭を描写するタイプの表示よりも一段落ち着いたモードを選びたい。EH-TW6700Wでは「シネマ」の描写よりむしろ、「ナチュラル」の設定でわずかに色彩を増して戦場にリアリティを添えたほうが作品の雰囲気を引き出す。

なお、「オート」を選択しておけば部屋の照度に応じて自動で合わせてくれる。沈む輸送船から脱出するチャプター4後半の海の暗闇と炎のシーンも、HDRでこそないがHDRライクな映像のコントラスト感を発揮。持ち前の明るい映像表現の驚きより、闇のなかの暗い波のディテールを安定的に表現する事の方が、このクラスのプロジェクターのクオリティとしては驚きだった。

カラーモード「オート」を選択すると、天面にある照度計で部屋の明るさに合わせたカラーモードが自動で選択される。細かく設定する場合は「オート」以外のモードを選択して調整を行う

最後に『君の名は。』の映像を観ると、アニメーション映画ともマッチングは見事。何度も視聴したチャプター13の御神体のシーンを見ても、屋内のシーンの色の深みとバランスの良さ、木漏れ日の透き通るような光の表現も素晴らしい。映像モードは「ブライトシネマ」では上質な制作がなされたアニメーションには誇張感があるので、落ち着いたトーンなら「ナチュラル」、あるいは明るい環境下では「オート」のまま観ても十分。

なお、EH-TW6700Wには映像モードの切り替えだけでなく、モードからさらに踏み込んで色相・彩度・明度の6軸調整、肌の色も独立して調整できる。より画質を追い込みたい場合には、エントリー機にはないこの画質調整を使い込んでみても良いだろう。

HDMI端子をプロジェクター本体に2系統、「WirelessHDトランスミッター」に4系統備えており、そのどちらにもChromecastやFire TVなどのデバイスを接続可能。いま利用者が急上昇しているNetflixやAmazonプライムビデオといった動画配信サービスも高画質・大画面で楽しめる。こうした家族みんなが好きな作品を観やすい環境が構築されれば、リビングシアターはより活躍することになるだろう。

ChromecastやFire TVなどを接続した配信サービスの利用も便利

改めてEH-TW6700Wを視聴した感想は、フルHDとして想像以上のクオリティ、そしてプロジェクターとしてあまりに贅沢な作り込みだ。輝度スペックが高く明るいリビング視聴もこなせるし、色バランスの巧みさも成熟した “dreamio” の技が生きる。エプソンのフルHDプロジェクターとしてはEH-TW5650が手頃で高画質だが、数万円の差額でワンランク上の映像体験を見せてくれるEH-TW6700Wは、真のお買い得モデルと呼びたい。

(折原一也)

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