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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第206回】凄いデスクトップオーディオが現れた。Astell&Kern「ACRO」は “覇権獲り” 級

公開日 2018/04/23 08:00 高橋 敦
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端子もヘッドホン向けの6.35mmの他に、3.5mmシングルエンドと2.5mmバランス、そして背面にはXLRバランスまで用意されている。4.4mmを相手にする以外は、変換アダプタが必要になる場面もほとんど無い。

左から6.35シングル、3.5シングル、2.5バランス端子。右端はDACのフィルター切替ボタン

ボリュームノブの周囲にはLEDを配置。現在の音量の目安を目視でさっと確認できる。イヤホンとヘッドホン、そしてスピーカーでは適当な音量が異なるので、「再生開始したらいきなり爆音!」の事故を防ぐ意味でも、現在の音量設定を常に意識できるこのLEDは実用的。イヤホン端子、ヘッドホン端子、スピーカー端子それぞれの音量設定を記憶して自動で切り替えてくれるとさらに嬉しいが、ユーザー側で注意しておけば避けられる問題だ。

実用的な意味でのデザイン面で気になるのは、強いて言えば、主要イヤホン/ヘッドホン端子が正面ではなく、左側に配置されていること。左側にスペースを空けるように設置しないと使いにくいので、置き場所が少し制限される。とはいえ、そもそも本体がコンパクトなのでさほどの問題ではないだろう。

ヘッドホンアンプとしては……当然の実力!

まずは、スピーカーも鳴らせるとはいえウエイトとしてはこちらがメインと思われ、またユーザー側もこちら重視で検討する方が多いであろう、ヘッドホンアンプとしてのクオリティからチェック。

3.5mmシングルエンド駆動端子にShure「SE846」を接続。大前提として、前述のように密閉性が高く感度も高いイヤーモニタータイプのイヤホンとの組み合わせでも、十分に低い音量レンジで十分に細かい音量調整が可能で、バックグランドノイズが目立つこともない。これは地味ながらも大きなポイントだ。

音調としては……特記するべき癖というものはほとんど感じられない。すっと自然に広がる空間性、ベースの素直でいて深い沈み込みなど、SE846側の持ち味をさらっと引き出してくれる。

アンプ側の力が発揮されているところとしては、その深く沈む低域の制御のしっかり感だろうか。エレクトロサウンドのディープなシンセベースも、アコースティックサウンドの深みのあるウッドベースも、縦軸ではぐっと沈めると同時に、フォーカスをぴたっと決めて横には膨らまさせずブレさせず、クリアな音像だ。

背面にはXLRバランス駆動端子、スピーカー出力のオンオフスイッチ、スピーカー端子、USB-DAC入力、ACアダプタ電源入力

底面。滑りにくく十分な厚みもあるラバー系素材

次に、ケーブルを変えて2.5mmバランス駆動を試す。シングルエンド駆動の時点でフォーカスが明瞭であったからか、クリアさや空間表現が極端に変化したり、向上する感じではない。シングルエンド駆動側にも手抜きがなく、シングルとバランスで意図的にチューニングを変えてもいないということだろう。

その上でバランス駆動時ならではのところとして、音に込められる力感の増大を挙げたい。分かりやすいのはやはりベースで、シングルエンドと同じかそれ以上にしっかりとフォーカスされているところにより大きなエネルギーが注ぎ込まれているイメージで、音に内包されるエネルギーの密度が高いように感じられる。

また、バランス駆動一般では左右のセパレーションが高まることで、音場のセンターに配置されるボーカルが薄味になることもあるが、込められたエネルギー感のおかげかこのモデルにはそういう様子もない。

最後に6.35mmシングルエンドをヘッドホンShure「SRH1840」でチェック。やはり同じく、聴き慣れたこのヘッドホンの「らしさ」を存分に引き出してくれる。今時の超ハイエンドのようなワイドレンジさや広大さではないのだが、声やシンバル、ギターの質感、太鼓類の自然な抜けなど、音楽の要所の表現が素直でいて豊か。そういう繊細さやニュアンスというところをアンプ側もしっかり送り出し、そしてしっかり駆動してくれている印象だ。

なお側面の「FILTER」ボタンは、ニュートラル/バスブースト/ハイゲインの切り替えとのことだが、各モードの名称ほど派手な効果は備えていない。デフォルトの「ニュートラル」を基本に、微調整の手段として他のモードの存在も心に留めておく程度で良いのではないだろうか。

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