【特別企画】期待を越える完成度
オーディオラックに新星現る。高純度アルミ+高度な加工技術が融合「ALVENTO」レビュー
■ALVENTO®の音質 ― エネルギーが非常に強く音楽全体が生命感に富む
アルミ合金だけのラックと聞くと、単一素材による振動モードの拡大、つまり共振を心配する向きも多いのではないだろうか。少し詳しいひとだと、余計そうした気を回すことになりそうだ。
たしかに棚板自体は、叩けば軽くコンコンという音がする。金属だから当然だが、一旦アンプなどの機材を乗せてしまえば響きはなくなる。だから心配は無用である。
では実際どんな音になるのか、CDプレーヤーからプリアンプ、パワーアンプを全て1台のラックに収めて聴いてみることにした。
ラックに限らずインシュレーターでもボードでも、セッティング関係の製品は鳴らし始めてからなじむまで多少時間がかかる。このラックも最初は「力感はあるなぁ」とぼんやり感じていた程度だが、10分ほどするとすっかり様子が変わってきた。力感があるどころではない。エネルギーが非常に強く、それが隅々にまで行き渡っている。音楽全体が大変生命力に富んだものとなっているのである。
ピアノでは低音部の響きがいい。タッチが厚く出てくるが音色に何かが付け加わることはなく、肉質感がどの帯域でもたっぷり乗っている。それが決してぼってりとふやけたものではなく、シャープに透き通っていながらなおかつ厚いのである。むしろ強いと言うべきなのかもしれない。肉質感の強さ。それが全体に満ちている。
室内楽も低域がよく出ている。量感が多いのではない。よく伸びているのである。また弦楽器のハーモニーの質感も、厚手で感触がいい。弾力的なのである。刺や歪みがなく、きめ細かな余韻に彩られているのが目覚ましい。立ち上がりのスピードや切れも、それが身上と言えるほど鮮烈である。
そしてオーケストラの出方が素晴らしい。トゥッティの盛り上がりがダイナミックで、瞬発力と量感の双方を十分に生かし切っている。また遠近の感覚も深く、音場の空間がとても立体的だ。
それにしてもこの低音の鳴り方は、どうやら普段聴いているよりも一回り低くなっているようだ。それも減衰しながらようやく聴こえているのではない。ぐんと低いところまで、ずっしりとして手応え豊かな低音弦やティンパニーが下がり切っている。このエネルギーはめったに見られないものだ。
ジャズの充実感も同じだ。低域が沈んで明瞭。このラックの特質がこれではっきりした。レスポンスが上下に広く伸びて、そこに豊かなエネルギーが乗っている。スピードも速く、出てくる音はどこも力強く明瞭だ。そこに加工精度の高さが、色濃く反映されているのは言うまでもない。期待どおり、いやそれ以上の完成度である。
(井上 千岳)
【Specification】
■AR-3 オーディオラック ¥590,000(3段/税抜)
●素材:アルミニウム合金(アルマイト仕上げ)の無垢の切削、フレームとボードはステンレス製SUS304のボルト接合 ●保証期間:1年 ●棚板サイズ:500W×500Dmm ●質量:26kg ●棚板可動間隔:50mm ●耐荷重:各棚板100kgまで ●棚板付属枚数:AR-Bord×2、底板×1
本記事は季刊・オーディオアクセサリー169号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。