同社アンプとの組み合わせ試聴も
ラックスマンの旗艦ケーブル「15000シリーズ」レビュー。無色ゆえにソースの色彩を引き出せる
室内楽は立ち上がりの響きが大変瑞々しく、汚れっぽさのない新鮮な感触に富んでいる。アンサンブルの分離が良く、ハーモニーが濁らずに滔々と流れている印象がある。中低域から下のエネルギーが豊かに伝わっているため、音楽の起伏が圧縮されることなく息づいている。それが生き生きした表現につながっているようだ。
オーケストラもダイナミズムの幅が広く、エネルギーがたっぷりと乗って表現が豊かだ。ホルンやトランペットなどは豪快といえるほど力強いが、それが決して荒っぽくならないのは音数が多いからだろう。緻密なのである。弱音部の細かな表情と色彩感の豊富さも、その表れと言うべきだ。
ジャズは楽々とした出方で、余裕に溢れて悠々としたところがある。トロンボーンの自由自在な表現力など、まさしくそうした特質の表れと言えるし、ピアノもタッチが生き生きとして弾みよく動く。ドラムにもベースにも曖昧さやにじみがなく、どこも明快で闊達である。
スピーカー・ケーブルも加えると、いっそう鮮度の高い音調が得られる。ピアノのタッチもさらにクリアで、特に高域の響きが潤いに富んでいる。よほど信号の通りが良いのかと思うが、どこにも屈託がなく伸びやかそのものの鳴り方をする。
室内楽もやはり瑞々しさに溢れているが、またディテールの解像度がひと回り向上している。細部の音数が増えたように感じるのと、遠近がもっとはっきりする。楽器一つ一つの位置感が明瞭で、そこにいるという実在感が高いのである。
オーケストラも空間の実体感が明確だ。ホルンやトランペットの金管とフルートやクラリネットなどの木管が、ちょうどあるべき場所にきちんと感じられる。弦楽器は厚手の響きが柔らかな当たりでしなるように広がり、どこも埃を払い落したように新鮮な光に満ちている。ほとんど色を感じさせないケーブルだが、逆にソース自体の色彩は豊富なのである。
ジャズも全てがほぐれて動きがいい。弾みと活気が違うのである。ソースが生きる再現と言うべきであろう。
最後に、せっかくなのでリファレンス・システムだけでなく、ラックスマンのアンプでも聴いてみることにしたい。そこでプリメイン・タイプの最高峰「L-509X」を用意した。
ストレートな再現性がいっそう増幅される印象で、本来の情報量やピントがごく自然に発揮されており、室内楽の瑞々しさなど特筆したいところだし、オーケストラの焦点の良さと爆発力も厳しさと豊かさに富んでいる。アンプの音質を縦横無尽に引き出したようにさえ感じる。自社製品だからというわけではないが、アンプとケーブルの設計思想や方向性がぴったり合っているのがよく分かる再現である。
(井上千岳)