【特別企画】ヘッドホンアンプも検証
プロ機譲りの高忠実サウンドが10万円台前半から − MYTEKのUSB-DAC 3機種の音質をチェック
また、Brooklyn DAC+は標準でMM/MC対応フォノイコライザーを内蔵するが、Manhattan DAC IIはオプションボードの追加で同機能を実現するという違いもある。オプションは他にRoon Ready仕様のネットワークボード(PCM192kHz/24bit、DSD2.8MHz)も用意されるので、D/Aコンバーター、ネットワークプレーヤー、アナログプリアンプの機能をManhattan DAC II、一台にまとめることも可能だ。
■高いコストパフォーマンスを誇る「Liberty DAC」
エントリーの「Liberty DAC」から順に再生音を紹介していこう。ソースはMac Book ProのAudirvana Plusで再生したハイレゾ音源を中心に、エソテリック「K-01X」で再生したCDとMQA-CDの同軸デジタル出力なども加えてデジタル入力の性能を検証した。
Liberty DACは、上位機種と比較しても本体が非常に小さい。Brooklynはハーフサイズ、Libertyは1/3サイズとのことだが、特にスペースに限りのあるデスクトップではこのサイズがもたらすアドバンテージは非常に大きいと思う。音量や入力フォーマットをLEDで表示するのみで詳細な数値はわからないが、音楽を聴くうえでさほど不便に感じることはなさそうだ。入力もシンプルでBrooklyn DAC+のように万能ではないが、MYTEKのD/Aコンバーターを10万円台前半で入手できるのは画期的なことだ。
Liberty DACが志向するサウンドは後述する上位2機種と方向性が揃っていて、コンセプトの一貫性を聴き取ることができる。ダイナミックレンジと低音から中低音にかけての厚みやスケール感は価格相応という印象を受けるが、音の粒立ちの良さやMQA音源を再生したときのにじみの少ない音像再現など、音源の特徴を素直に引き出す良さは上級機譲りだ。その点ではこのクラスのD/Aコンバーターのなかで一歩踏み込んだ性能を獲得しているのではないだろう。
Liberty DACを聴きながら特に感心したのはヘッドホン再生時の鮮度の高さとレスポンスの良さである。本機のヘッドホンアンプは他の2機種よりも設計の世代が新しく、より低インピーダンスな出力を可能としている。駆動力もさらに改善されているという。AKGの「K812」を使ってその音を確認したが、瞬発力の高いピアノのサウンドからその成果を聴き取ることができた。
■情報量や応答性の高さでは上位機に迫る「Brooklyn DAC+」
続いて紹介するBrooklyn DAC+は、外装の仕上げにManhattanと共通点があるものの、ディスプレイの設計に違いがあるため、動作時の外見から受ける印象はフラグシップ機と異なる。文字やレベルメーターのドットが細かく精細感が高いので、デスクトップでパソコンと組み合わせた場合でも違和感なく使いこなせそうだ。
設定変更はディスプレイ左右に並んだ計4個のスイッチとダイヤルを組み合わせて操作する仕組みで、最初は若干ハードルが高いものの、ある程度使い込めば短時間で目的の機能にたどり着ける良さがある。
前作のBrooklyn DACも優れた製品だが、DACを格上げしてアナログ回路を見直した本機の再生音には着実な進化を聴き取ることができる。オーケストラはステージ上の楽器配置など立体感が精密で、パースペクティブの大きさはManhattan DAC IIに迫るものがある。同時に進行する複数の旋律を描き分ける分解能の高さ、アクセントがなまらない応答の良さもManhattan DAC IIに比べて遜色がなく、情報量で聴き劣りすることはないはずだ。
次ページニュートラルな音調と高度な音楽表現を兼ね備えた「Manhattan DAC II」