【特別企画】ヘッドホンアンプも検証
プロ機譲りの高忠実サウンドが10万円台前半から − MYTEKのUSB-DAC 3機種の音質をチェック
パーカッションとギターは音の立ち上がりとアタックのエネルギーの強さが抜きん出ていて、ミックスしたばかりの音をスタジオのモニターで聴いているような鮮度の高さが伝わる。CDではここまで空気のプレッシャーの強さを実感するのは難しいが、ハイレゾ音源には本来のエネルギーと音圧感が確実に記録されているということをあらためて気付かせてくれる音だ。
底板には何の変哲もないゴム足が取り付けられているが、アタックの瞬発力を引き出すうえで付属のスパイクと受け皿は大きな効果を発揮するので、ラックの高さに余裕があるなら装着することをお薦めする。
本機においても、MQA-CDを「K-01X」で再生して同軸デジタルから入力して、その音を聴いた。C.デイヴィス指揮ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団のベルリオーズ《幻想交響曲》(44.1kHz/16bit、MQA:352.8KHz/24bit)をCDクオリティで再生すると44年前の録音とは思えないほど弦楽器が柔らかい音色をたたえていることに気付く半面、音場は現代の録音ほど広くはない。
ところがMQAデコードをオンにすると当時の録音としては珍しいほど奥行き豊かな音場が展開し、木管と弦、金管と打楽器の位置関係や微妙な強弱の変化による遠近感の違いをていねいに描き出していることに気付く。最弱音とフォルテシモの対比もハイレゾで聴いた方が鮮やかさを増し、ダイナミックレンジに余裕が生まれた。MQAのフルデコードができるD/Aコンバーターはまだ少数派だが、ファイル再生やディスク再生でMQAの音を聴いてみたいなら本機が有力な候補になりそうだ。
AKGのK812でヘッドホン出力の音も確認したが、基本的な音調とレスポンスの良さはスピーカー再生時の印象と共通点が多く、フォルテシモの音圧感は期待を大きく上回るものだった。鳴らしにくいヘッドホンとの組み合わせも含め、本機をヘッドホンアンプとして常用するのは大いにありだと思う。
MYTEKのD/Aコンバーターを一気に3機種聴くと、一貫した設計思想の存在とともに、製品ごとのターゲットや位置付けの違いも確認できる。Manhattan DAC IIはコンシューマー機の頂点を目指した作り込みに加えて、豊富な入出力をそなえる用途の広さがポイントだ。一方、D/Aコンバーターの基本性能を重視しつつコストパフォーマンスにもこだわりたい人にはBrooklyn DAC+がお薦めできる。そして、手軽さを優先し、ヘッドホンアンプとしても積極的に活用したいならLiberty DACを選ぶのが正解だ。
(山之内 正)
特別企画 協力:エミライ